2024年11月21日( 木 )

業界課題に「上栄会」と立ち向かう福岡トップゼネコンの挑戦

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上村建設(株)

 地場大手かつ老舗でありながら、事業規模を大きく飛躍させているのが、上村建設(株)だ。2019年10月期から始まった第1次中期経営プランでは、最終年度の23年10月期に、目標を大きく上回る単体売上高300億円、グループ売上高394億円を計上。24年10月期からは、「あなたの街を もっと住みたい街に ~Make U Happy~」をビジョンに掲げた第2次中経をスタートした。

受注幅を広げ業績拡大「賃貸だけでは淘汰される」

 地場大手ゼネコン・上村建設(株)が勢いを増している。賃貸マンションの建設を主力に手がける上村建設が中核のウエムラグループでは、設立60周年を機に第1次中期経営プランを策定。最終期となる2023年10月期は、単体売上高300億円、グループ売上高394億円を計上するなど、掲げた目標を大きく上回る結果を残し、24年10月期からは、第2次中期経営プランに取り組んでいる。

 事業規模が拡大した要因の1つは、受注の幅が広がったことだ。同社ではこれまで、賃貸マンション施工が完工高の大部分を占めていたが、この部分を強化しつつも分譲マンションやオフィスビル・商業施設をはじめとした事業用施設の施工も増やしてきた。グループで不動産事業を手がけるハッピーハウスの管理戸数増加も、事業規模拡大に大きく貢献し、グループ売上高は5年間で44%増となった。

上村英輔代表
上村英輔代表

    同社の代表取締役社長・上村英輔氏は、「福岡都市圏においても将来的な人口減は避けられないでしょう。そうなると、当然ながら需給バランスが変わっていき、『賃貸しかつくれません』という建設会社は間違いなく淘汰されてしまいます」と話す。さらに、「建設不動産グループの企業として、企画力や技術力を磨きながら、さまざまなものにチャレンジしていくことが大事」と受注幅の拡大は、次代に向けた投資でもあることを加えた。

人手不足対策は自社だけでなく上栄会も

 投資は、組織を構成する人材にも行われる。23年11月には給与のベースアップが実行されたほか、一級建築士などの資格取得支援も手厚い。一級建築士の場合、年間5名程度を選抜して、受験にかかる費用を会社が負担するほか、就業環境にも配慮し、早期の資格取得を全面支援している。もちろん、資格を取得できれば報奨金や資格手当も支給する。

 さらに特筆すべき投資が、24年に発足50周年を迎えた同社の建設協力会・上栄会との連携強化だ。「成長の礎となる盤石な施工体制の構築に向けては、上栄会と今まで以上に強固な信頼関係を築き上げていくことが必要不可欠」(上村社長)と話す背景には、深刻さを増す建設業界の人手不足がある。上栄会の会員企業にとっても頭が痛い問題で、リクルーティングに苦戦する企業も多い。そこで、同社が窓口となって上栄会のリクルーティングを行う取り組みを開始。5月には、ウェブサイト「U-buddy(ユーバディ)」を開設した。100社を超える上栄会会員企業の求人情報を業種・エリア・雇用形態から検索できるほか、上栄会の会員企業で働く職人へのインタビューや1日のスケジュールなども個別に公開している。建設業を構成する各種の工種について紹介するほか、業界の魅力についても多数のコンテンツが用意された。

 上栄会について、上村社長は次のように話した。「当社と上栄会は同じ船に乗った運命共同体というか、良いかたちでの共存共栄の関係でありたいと思っております。単なる受注と発注だけの馴れ合いの関係ではなく、お互いがチャレンジ精神をもって切磋琢磨し、共に成長していけるような関係性を目指していきます」。

数々のチャレンジ実践し28年にグループ売上高455億円

Make U Happy    第2次中経では、5年後の目指す姿を示すビジョン「あなたの街を もっと住みたい街に ~Make U Happy~」を掲げた。自己利益の実現だけではなく、当社にとってのお客さまである「オーナー・入居者の幸せ」、そして協力業者を含めた「社員の幸せ」、さらには「地域社会の幸せ」の三方良しを目指すという。

 実現していくための基本方針・戦略として、「ワンストップソリューション提供体制の強化」「賃貸マンション事業以外の強化」「新事業・サービスの模索」「人財確保強化と社員支援体制の充実化」「生産性向上による健全な職場環境づくり」「サステナビリティ対応」などが掲げられた。具体的には、前述の社員の就業環境改善や建設協力会の人手不足対策への取り組み、データに基づく質の高いサービスを提供する体制の構築、魅力ある商品・新事業の開発などを挙げている。

 生産性向上・業務効率化についても取り組んでおり、受注確度の高い案件情報については受注前に上栄会と共有することで、会員企業が工期調整や予算管理をしやすくする工夫も始められた。また、施工管理アプリやBIMの導入を本格化させることで、協力業者も含めた現場全体の業務効率化にも積極的に取り組む。

 老舗でありながら事業規模を拡大させ、かつ新しい仕組みを運用させるのは簡単ではない。トップが課題を理解し、改善に向けた号令を発するだけでなく、課題解決のため組成されたチームがスピード感をもってボトムアップで改善策を提案するというサイクルができているからこそ、成立している体制だ。28年度には、単体売上高352億円、グループ売上高455億円の達成を目指す同社が、目標を超えてどのような組織になっているのか楽しみだ。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:上村英輔
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2博多エイトビル7F
設 立:1959年2月
資本金:1億円
TEL:092-475-6551
URL:https://www.e-uemura.jp(上村建設)
    https://www.uemuragroup.jp(ウエムラグループ)

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