2024年09月04日( 水 )

多彩な顔持つ福岡市の湾岸(4)

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 北側が博多湾に面する福岡市──。その湾岸エリアは港湾施設やレジャー拠点のみならず、公園や住宅地など多彩な表情をもつ。また、東区のアイランドシティでは新たなまちづくりが進行するなど、さらなる発展の余地も残されている。今回はそうした福岡市の湾岸エリアについて焦点を当て、これまでの開発の経緯や今後について見ていこう。

西区の注目はマリノアシティ再開発

 ここで、西区に目を向けたい。同区の湾岸エリアには東側から愛宕地区の住宅街と「マリナタウン海浜公園」、能古の島・小呂島と姪浜を結ぶフェリーの「姪浜旅客待合所」、アウトレットモール「マリノアシティ福岡」、小戸公園と続いている。このうち、小戸公園は「福岡市ヨットハーバー&ビーチ」を含め、若者からお年寄りまでさまざまな市民がバーベキューや各種スポーツなど、さまざまなアクティビティを楽しめるオアシススポットとなっている。

 マリノアシティ福岡(小戸2丁目)は2000年10月に開業。敷地面積8万5,200m2、施設の延床面積8万1,400m2と、一時期には観覧車が2機ある九州最大級ショッピングモールとして好評を得ていたが、今年8月18日をもって閉館した。今後、福岡地所(株)と三井不動産(株)が共同で建替えを計画し、「今後の消費者ニーズや社会トレンドの変化を的確に捉えた、新たな時代に相応しい商業施設の検討」を進めていくという。

 西区を明治通り沿いにさらに西進すると、元寇防塁が残る「生の松原」、長垂山を経由して「長垂海浜公園」、今宿海岸とマリンレジャーを楽しめるエリアが点在する。そしてさらに進めば、「今津運動公園」、さらには牡蠣小屋など海産物を楽しめる唐泊地区など、海と山が渾然一体となった環境となっている。

(左)閉館したマリノアシティ福岡 (右)長垂海浜公園の様子
(左)閉館したマリノアシティ福岡 (右)長垂海浜公園の様子

発展を続ける東区の「アイランドシティ」

 最後に東区に目を移すと、同区の東浜・箱崎、貝塚地区は工場や物流倉庫が連なっている。その一帯から「香椎かもめ大橋」「みなと100年公園」を経由し東進すると、人工島「福岡アイランドシティ」にたどり着く。

 福岡アイランドシティは1994年7月に埋め立て工事に着工したもので、総面積は401.3ha。東側が「まちづくりエリア」(香椎照葉地区、191.8ha)、西側が「みなとづくりエリア」(みなと香椎地区、209.5ha)となっている。

香椎側から見た福岡アイランドシティ
香椎側から見た福岡アイランドシティ

 このうち、「まちづくりエリア」は西側が戸建住宅ゾーンとなっており、東側に50階建てレベルの超高層マンションを含むマンション街が形成され、1万人以上が居住している。このエリアは福岡空港から比較的離れており、航空法に基づく高さ制限(制限表面)が都心部より緩和されていることで、福岡市内では珍しい超高層マンションを含む街並みが形成されている。昨年4月には同エリアの最終分譲区画の事業予定者が積水ハウス(株)に決定。約15haの土地で今後、開発が進められる。

 アイランドシティ中央公園をはじめとする公園が整備されているほか、市立としては初の小中一貫校である「福岡市立照葉小中学校」も設置されている。また、14年には「福岡市立こども病院」が中央区唐人町から移転。2016年には市内3カ所に分かれていた青果市場も「福岡市中央卸売市場(ベジフルスタジアム)」として移転している。さらに、福岡市民体育館と福岡市九電記念体育館の後継施設として、18年に「福岡市総合体育館」(現・照葉積水ハウスアリーナ)が竣工するなど、市の重要機能が集約化され、福岡アイランドシティは東の副都心としての役割を担っている。

 人工島東側にある「みなとづくりエリア」も開発が進行中だ。直近では今年3月に、九州最大規模となるマルチテナント型物流施設「T-LOGI福岡アイランドシティ」が竣工した。開発したのは東京建物(株)、東急不動産(株)、丸紅(株)、(株)西日本新聞社。敷地面積約1万1,890坪、延床面積4万4,880坪の6階建(6層ランプ構造)となっている。施設は各階で接車が可能な利便性の高い施設であるとともに、多様な顧客ニーズに対応できる設計となっている。また、太陽光パネルの設置やZEB認証の取得など、環境への配慮を行っている点も特徴だという。この建物に隣接するかたちで新たな物流施設が建設されており、開発はまだしばらく継続しそうだ。物流倉庫街の西側には港湾施設が広がっており、巨大なガントリーレーンと山積みされたコンテナ群が、博多港が国内有数の海上物流の拠点であることを印象づけている。

(左)照葉積水ハウスアリーナの外観  (右)アイランドシティのコンテナヤード
(左)照葉積水ハウスアリーナの外観  (右)アイランドシティのコンテナヤード

 福岡アイランドシティから「海の中道大橋」を経由して進むと、福岡市東部のスポーツ拠点「雁の巣レクリエーションセンター」や「国営海の中道海浜公園」などが立地する雁ノ巣・西戸崎地区、そして志賀島へと至る。雁の巣レクリエーションセンターは、15年まで福岡ソフトバンクホークスの2軍本拠地・練習場としていた野球場、アビスパ福岡の練習場グラウンドなどがあるほか、各種スポーツ関連施設が整い、多くの人々が運動を楽しんでいる。

 海の中道海浜公園は東西に約6km、面積約350haの広大な敷地に各種レクリエーション施設、水族館のマリンワールド、全室オーシャンビューの「ザ・ルイガンズ・ホテル&リゾート」などを備え、子どもから大人まで楽しめる公園として、市民はもちろん、県外、海外からの訪問客を集めている。22年3月15日に「憩う・学ぶ・遊ぶ」を体験する滞在型レクリエーション拠点が、「光と風の広場」にオープンしている。

 志賀島はいうまでもなく、1784年に金印(漢委奴国王印)が発掘された場所として有名だが、このあたりも福岡市のマリンレジャーのメッカの1つで、近海で採れる魚介類を含め、夏季には多くの人々で賑わっている。なお、海の中道の東側(玄界灘側)には広大な砂丘が広がっており、その野趣あふれる光景は福岡湾岸エリアの多様性を表すものとなっている。

砂丘が広がる玄界灘側
砂丘が広がる玄界灘側

良好な住環境をどう維持するかが課題

 ここまで福岡市湾岸の各エリアを見てきたが、福岡市は山間部にも近く、中心部からわずかな時間と移動距離でそれぞれの魅力を楽しむことが可能だ。このあたりが東京や大阪、名古屋、札幌、仙台などの他の大都市にはない特徴といって良いだろう。

 こうした都市と自然環境がバランス良く共存する住環境を理由の1つに、人々が集まり拡大してきた福岡市とその周辺部。今後も人口が増加し都市が拡大の継続していくものと見られているが、このバランスの取れた住環境をいかに維持していけるかが、今後、行政や市民の課題になるだろう。

(了)

【田中直輝】

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