2024年09月05日( 木 )

どうなる?小倉総合車両センター跡地(前)

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JR九州・小倉総合車両センター
JR九州・小倉総合車両センター

新技術導入でコンパクト化、移転後の面積は約半分に

 九州旅客鉄道(株)(JR九州)は7月24日、小倉総合車両センター(北九州市小倉北区金田)の移転にともなう新車両基地の建設を発表した。移転先は、日本貨物鉄道(株)(JR貨物)が保有している東小倉駅(貨物駅/北九州市小倉北区高浜)の用地で、2024年度末の用地取得を目指してJR九州とJR貨物とで協議を行っている。投資額は約480億円を想定。新たな車両基地の竣工は、31年度末頃を予定している。

 現在の小倉総合車両センターは、JR九州のすべての在来線車両の解体検査、更新および改造工事などを行う唯一の車両基地だが、1891年の開設からすでに130年以上が経過。そのため今回の移転は、施設・設備の老朽化への対応を行うとともに、持続可能な車両検査の実現を目指した環境配慮型の新たな車両基地を建設することが目的となっている。なお、現在の小倉総合車両センターの敷地面積は約15.8haだが、移転候補地である東小倉駅の敷地面積は約半分の約7.8haしかない。そのため、今回の新車両基地の基本コンセプトの1つに「コンパクト化」を掲げており、新技術の導入および効率的な検査ラインの構築によってコンパクトな車両基地を実現するとしている。ほかに、「効率的な車両検査」として検査日数の短縮および省人化による効率的な車両検査を実現するほか、「地球環境への貢献」として太陽光エネルギーの活用およびZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の実現も目指すとしている。

 なお、約15.8haもの広大な現小倉総合車両センター跡地の今後の用途については現在、検討中としており、将来的にこの場所がどのように生まれ変わっていくかは、現時点でまだ決まっていない。

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 今回の小倉総合車両センターの移転により、小倉の中心市街地にも至近の街中に、新たに約15.8haもの広大な跡地が誕生することになる。跡地の今後の用途については、当然のことながら所有者であるJR九州に決定権があるのだが、この地を生かして今後の小倉・北九州市の発展に寄与させるためには、どういった機能が必要なのか、何をつくることがふさわしいのか、少し考察してみたい。

鉄道省・国鉄・JR九州と明治期から続く車両工場

 小倉総合車両センターは1891(明治24)年4月に、九州鉄道(初代)の工場として開設されたのが始まり。九州初の鉄道路線を開通した九州鉄道(初代)だったが、1907(明治40)年7月には鉄道国有法に基づき国有化されて帝国鉄道庁所管となって解散し、このときに同工場も九州帝国鉄道管理局小倉工場となった。19(大正8)年発行の「小倉市街地図下関要塞司令部御許可」では、「鐵道院小倉工場」として現在と変わらない敷地で描かれており、開設当初から現在に至るまで、敷地の大きな変化はないようだ。

小倉総合車両センター内には歴史ある赤レンガの建物も
小倉総合車両センター内には
歴史ある赤レンガの建物も

 戦前は鉄道省の管轄下で、戦後は国鉄およびJR九州の管轄下で、各種車両検査、製造や改造などを行う車両工場として、JR九州のすべての在来線車両を受けもつ小倉総合車両センターは、大正期からの赤レンガの建物が今なお残るほか、構内にはJR貨物九州支社管轄の小倉車両所も併設されており、JR貨物の電気機関車やディーゼル機関車、貨車の全般検査なども行っている。なお、日本における鉄道開業150周年にあたる2022年には、小倉総合車両センター内に「小倉工場鉄道ランド」が開設され、構内の見学ツアーが開催されるほか、JR九州の車両デザインを手がけるドーンデザイン研究所・水戸岡鋭治氏によるデザイン案などのパネル展示やグッズ販売なども行われている。

 一方の移転先となる東小倉駅は、1904(明治37)年2月に九州鉄道(初代)の大里駅~小倉駅間で高浜信号所(後に富野信号所に改称)として開設されたのが始まり。その後、43年5月に小倉鉄道の旅客駅である東小倉駅(15年4月開設)と統合され、以降は北九州における貨物輸送の拠点としての役割を担っていた。だが、2002年3月に北九州貨物ターミナル駅の新設にともない、浜小倉駅(小倉北区西港町)とともに業務を移管。以降の営業を休止している。なお、浜小倉駅跡地では08年4月に複合型娯楽施設「小倉コロナワールド」が開業するなど再開発が進められたが、東小倉駅ではそうした再開発の動きはなく、営業休止状態を継続している。

すでに営業停止しているJR貨物の東小倉駅
すでに営業停止しているJR貨物の東小倉駅

(つづく)

【坂田憲治】

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