2024年09月05日( 木 )

「9月1日防災の日」秀逸な女性用防災バッグに感銘(中)

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(株)アクロテリオン
代表取締役 下川弘

「Woman‘s Emergency Bag」の秀逸な工夫

「Woman‘s Emergency Bag」の開発者で防災士の小幡嘉代さん
「Woman‘s Emergency Bag」の開発者で
防災士の小幡嘉代さん

    筆者の友人で防災士でもある小幡嘉代さん((株)アビックス 専務取締役)が、これまでの大規模災害で被災され、避難所に避難している女性たちに、避難所での生活について、「何が足りていて、何が足りないのか。」をヒアリングし、とくに女性の立場でどういったものを防災バッグとして準備しておくと本当に女性が必要な防災グッズになるのかを試行錯誤して、2015年に「Woman‘s Emergency Bag」を開発された。

「Woman‘s Emergency Bag」のケース(防水加工)
「Woman‘s Emergency Bag」の
ケース(防水加工)

 筆者が初めて見せてもらったとき、正直そのバッグのなかに入っているそれぞれの品物は何に使うのかがわからなかった。小幡さん曰く「それが一般的な男性の感想です。だから女性たちが避難所で困っているのです」「女性は繊細なのですよ」とも言われた。その理由として、「災害時の避難所には、思春期の真っただ中にいる女子中学生や女子高生もいます。避難所生活をしていても、その子たちには、それぞれ女性の日が来ます。仮に避難所に生理用品が段ボール箱いっぱいに届いていたとしても、本人たちは直接取りに行くのを躊躇してしまいます。なぜなら、配布しているのがボランティアの男性だったりするからです。決してボランティアの男性が悪いわけではありません。周囲に女性の日であること自体を知られたくないというのが本根なのです。そこで、この「Woman‘s Emergency Bag」には生理用品だけでなく、たくさんのアイデア商品が入っていますので、そのバッグごと本人に渡すだけで、そうした多感な女性たちへの心配りができるのです。それは必ずしも女子中学生や女子高生に限ったことではありません。ご年配の女性でも同じです」と説明してくれた。

 さらに、「冬場の避難所には妊婦さんもいらっしゃるかもしれません。お腹を冷やしてはいけませんから、ベリーウォーマー(腹巻き)も入っています。これは、素材にシルクを織り込み直接肌に触れても肌触りが良く、夏は汗を吸湿、冬は寒さから大切な子宮を守ってくれるのです。伸縮性に優れていますから、使い方によってはネックウォーマーとしても使えるし、くるっと巻き込めばニット帽にもなるのです」そして「スカート姿で避難所に駆け込んだ女性もいるかもしれません。着替えがありませんから、そのまま毛布を掛けて横になるのでしょうが、毛布がめくれ上がって肌があらわになることもあるでしょう。それを見ず知らずの男性から見られたりするのは、耐えがたいことです。被災地では痴漢を目的とした輩もあちこちからやって来ることが多いのです。熊本大地震のときもそうした事件が発生しています。ですから、このバッグのなかには自衛・防犯の意味も含めて、黒色の防災用長ズボンも入っています」と話してくれた。

「Woman‘s Emergency Bag」の中身
「Woman‘s Emergency Bag」の中身

 そして、1つひとつの品物の説明を受けた後、「災害時に避難した女性たちにとって、この「Woman‘s Emergency Bag」は非常に有効で、かつ画期的なものになるだろう」と筆者は直感した。

 後日、筆者と小幡さんとでいくつかの自治体の防災担当部署を訪問する機会があった。「女性用の防災グッズについて」と前置きしてアポイントをとっているにも関わらず、防災担当者として出てこられるのは、ほとんどが男性なのである。従って、小幡さんがこの「Woman‘s Emergency Bag」の必要性と有効性を一生懸命説明しても、「はいはい」と、ほとんどが聞き流されてしまうという経験をした。筆者も最初はそうであったように、この「Woman‘s Emergency Bag」は「男性では気がつかない 繊細で秀逸な品物」がほとんどだからなのかもしれない。しかし、少なくとも、自治体の防災担当者には過去の被災地の避難所で何が起こって、何が足りなくなったのか、女性目線で理解し、対処する方も配置してもらいたいとも思った。

 だからこそ、小幡さんが開発された「Woman‘s Emergency Bag」は「女性の・女性による・女性のための防災グッズ」であり、女子中学生・女子高生は学校や自宅に、OLや主婦の方には、仕事場の机の下やロッカー、自宅の部屋に、1個以上備えておいて欲しい「防災グッズ」であることに間違いない。

 とくに女子中学・高校の生徒さんたちには、制服をつくるときに一緒に準備するようにするとか、あるいは学校側から生徒さん全員に配布するぐらいの配慮があっても良いのかもしれない。もうそういう時代になっていると考える。

(つづく)

※「Woman‘s Emergency Bag」のお問い合わせ・購入については、アクロテリオンHPまで


<プロフィール>
下川弘
(しもかわ・ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人のGM、本社土木事業本部・九州支店建築営業部・営業部長などを経て、2021年11月末に退職。(株)アクロテリオン・代表取締役、C&C21研究会・理事、久留米工業大学非常勤講師。

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