2024年11月23日( 土 )

型枠業界の地位向上へ、社外30名の新入社員研修も

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(株)福島工務店
代表取締役社長 森靖崇 氏

(株)福島工務店 代表取締役社長 森靖崇 氏

 福岡を中心に九州一円で活動する専門工事業の(株)福島工務店は、昨年創業50周年を迎えた。長年の実績を背景に、中堅および地場有力ゼネコンを主な受注先としてマンション新築や庁舎などの型枠工事を手がける。代表の森靖崇氏に、業界環境の現状や職人不足への対応策などを聞いた。

永年の夢 研修施設新設

 ──2023年2月に新社屋が完成。敷地内に研修施設を設けられています。

 森 研修施設「型枠組立体験コーナー」の新設は10年以上前からの念願でした。完成させることができて、本当に満足しています。この施設では、現場で行う作業と同様に型枠を組み立てることができます。今年の新入社員も実際に図面を見ながら、型枠を組み立ててはバラし、組み立ててはバラしと、「こんなにも面白いんですね」と何回も実践していました。ある程度の敷地を必要としますし、現場に出る前の実施研修としては、これほど適した施設はないと自負しております。

 また、自社の新入社員研修用としてだけでなく、取引先など社外の方にも研修施設として利用していただいております。今年4月と5月には、中堅・地場ゼネコン3社から合計約30人の新入社員が、新入社員研修のカリキュラムの1つとして協力会社の工場見学や型枠組立体験を行っていただきました。思っていた以上の参加者数で嬉しく思う一方、講師としてしっかりと教えなければいけないので、私を含め社員・職人ともに身が引き締まる思いでした。実際、研修のなかでは他社の新入社員から型枠工事やそれに付随する作業について多くの質問を受けました。私たちも本当に楽しい経験をさせていただき、その姿を見て来年、再来年と今後も続けていこうと改めて感じました。

型枠組立体験コーナー
型枠組立体験コーナー

 ──近年、採用面について力を入れていると聞いています。

 森 今年4月には、外国人技能実習生4名を含む6名の新入社員を採用しました。昨年は内勤の女性社員4名、現場担当が1名入社しており、4年前に人事部を立ち上げて以降、年々新入社員を増やすことができています。やはり若い力を入れていかないと、会社の将来、業界の将来はないと思っています。それでも、一番獲得したい人材である現場スタッフは、なかなか獲得できていないのが現状です。この状況を改善するため、近年はとくにSNS活用に力を入れており、TikTokやインスタグラムで若い世代に会社のアピールを行っています。私も積極的に表に出るようにしています。

一番の目的は「社員の幸せ」

 ──4月から働き方改革関連法の建設業への適用が始まりました。

 森 従来、建設業というのは土曜日が休みという感覚は他業種に比べて少ない業種です。しかし、いつまでもそのような古いかたちに固執していては若い人は入ってきませんし、将来も見えてきません。今年4月から内勤社員はもとより、現場で働いている職人すべて休日体系、給与体系を変更しました。年間休日も規定内に定め、建設業界には古くからある日給月給制を廃止し、全社員を月給制にしました。

 ──そうすると固定費が上がりますが、どう対策を取られるのでしょうか。

 森 休日・給与体系を変更した場合に事業主負担がどれだけ増加するか試算したところ、労務費が全体で13%、型枠工事の請負単価で換算すると約1割強上がるかたちとなります。業界全体の課題に取り組むためにも、適正な請負額としていただかなければならないという価格交渉を元請企業と始めています。しっかりとした資料を提示することもあって、元請企業にも前向きに受け止めていただいております。こんなにも信頼いただけていたのだと、改めて気付く機会となりましたし、ご理解いただけているお取引先には非常に感謝しております。

 建設業界のなかでも我々専門工事業は、一般的にいうと職人たちがどうしても押さえつけられていることが多々ある業界です。やはり働いてくれている職人たちの地位がもっと上がるように、私たち含め業界トップクラスの企業が先駆けてやらないと、業界自体の地位向上は見込めないでしょう。やはり会社を経営していく以上、一番の目的は社員の幸せです。それをしっかりと守っていけるよう、これからもより良い制度改革を進めていこうと思います。

【内山義之】


<プロフィール>
1975年3月生まれ、宮崎県延岡市出身。延岡市立西階中学校を卒業後、社会人として3年間を延岡市で過ごす。93年8月に福島工務店に入社。2005年に社長代行として経験を積み、16年6月の代表取締役社長に就任した。


<COMPANY INFORMATION>
所在地:福岡県那珂川市大字西畑1376-2
設 立:1987年1月
資本金:1,000万円
URL:https://www.isindensin-telepathy.com

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