2024年09月09日( 月 )

福岡の龍神神社 警固神社

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警固神社
警固神社

 警固神社が福岡市・天神の現在地に移ったのは1608年。現在も残る鳥居は、1639年に福岡藩の二代藩主・黒田忠之が建立したものである。警固神社の境内はコンパクトながら、樹齢300年余りとされる見事な大楠が茂っている。その他、江戸時代の面影を残す本殿や、数百年前に奉納されたという古い灯籠、全国でも珍しい笑い顔のおきつねさまが社殿前に鎮座する今益稲荷神社など、見どころも多い。また、災害時には地域の人々に避難場所として開放することを想定し、社務所には大型発電機などの設備も整える。

 祀神は警固三神と呼ばれる、八十禍津日神(やそまがつひのかみ)、神直日神(かんなおびのかみ)、大直日神(おおなおびのかみ)である。警固神社の謂れ(いわれ)は、神功皇后が三韓征伐を行った際に、警固三神が勝利に導いたことに由来している。その功績を称え、神社が創建された。9世紀後半には、朝鮮半島から新羅海賊が九州北部に攻め入ってくる事件が起こり、この事件をきっかけに、国土を守るための防衛拠点「警固所」が福岡の地に設置された。それ以降、警固神社の神さまによる「外敵や災いから、私たちの大切なものを守る」という御神徳が信仰を集めるようになったとされる。

警固神社拝殿
警固神社拝殿

    八十禍津日神(やそまがつひのかみ)は、日本の古代神話に登場する神で、『日本書紀』と『古事記』にその誕生が記されている。黄泉の国から帰還した伊邪那岐(いざなぎ)が穢れを清めるために行った禊(みそぎ)の際、洗い流すための水から生まれたのが、住吉三神(住吉神社の祀神)、綿津見三神(志賀海神社の祀神)。そして、その体から流れ落ちた穢れから八十禍津日神が生まれたとされている。災厄を司る神として描かれているが、八十禍津日神の名前には、数の多さを表す「八十」、曲がったものや災いを意味する「禍」、そして神格を示す「日」が含まれており、これらの要素から神の性格を読み解くことができる。神話においては、八十禍津日神の誕生後、その禍を直すために神直日神と大直日神が生まれたとされている。

 八十禍津日神に関する解釈は多岐にわたり、悪神的な性格を強調する見解と、過ちを正す善神的な性格を強調する見解がある。また、禍津日神が禍いをもたらす神から罪悪を正す神へと変化したとする説や、その逆の変化をしたとする説も存在する。この禊の際に誕生したほかの神について触れておくと、顔を洗った際に生まれたのが、天照大神(櫛田神社と小戸大神宮ほかの祀神)、月詠命(飯盛神社の祀神)、素戔嗚(櫛田神社の祀神)の三貴子である。そして、この素戔嗚が産んだのが宗像三女神(宗像大社の祀神)である。このように禊の際に生まれた神を祀神としている神社は福岡市内に驚くほど多い。禊を行った場所が小戸公園(福岡市西区)内の小戸大神宮付近という説もあり、その説の信憑性を高めていると考えられる。

神社境内に天照大神を祀る祠
神社境内に天照大神を祀る祠

    伊邪那岐が禊を行った際の水関係の神を祀る神社が、龍神神社と呼ばれることが多い。龍神神社はパワースポットとされ、そこにはエネルギーが溢れるという。天神がこれだけ発展したことと警固神社に多くの参拝客が訪れ賑わっていることを考えると、警固神社も龍神神社と言っていいだろう。

 なお、あまり知られていないが、神社内には摂社として太陽神としても知られる天照大御神と学問の神さまで知られる菅原道真も祀られており、有名な神さまに一度におまいりすることができる。

【外部ライター・奥野晃市】

警固神社の建築様式

 警固神社の建築様式は三間社流造。神社建築の様式で最も一般的とされる「流造」のうち、正面の柱が4本、柱間の間口が3間あるものである。屋根は一間向拝追破風。これは屋根の形状と装飾を指す名称で、向拝は参拝者が礼拝する場所のこと。次の追破風は屋根の張り出した部分を指す。一間はその張出し長さが約1.8mであることを示しているので、一間向拝追破風は参拝者が礼拝する場所だけ余計に庇が張り出している形状を示している。

警固神社本殿
警固神社本殿

 創祀は福崎丘(現在の福岡城本丸跡)に奉祀されていたが、1608(慶長6)年、藩祖黒田長政公が福岡城築城の際、薬院の地にあった小烏神社と警固神社を、城南下警固の山上に遷し合祀した(その後、小烏神社は薬院に再移設)。現在の社殿はこのとき造営されたものである。

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