2024年09月11日( 水 )

親子2代の小泉内閣誕生となるか~「菅副総裁」による麻生・岸田への逆襲

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 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)に9人の候補者が出馬を表明した。そのなかで最有力候補だとみられているのが小泉進次郎元環境大臣だ。小泉氏を応援しているのは、同じ神奈川県選出の菅義偉前首相で、菅グループや旧二階派を中心に強力な支援が行われている。

地元横浜で小泉支持を明言

 菅義偉前首相は8日、自民党総裁選に出馬を表明した小泉元環境大臣が横浜市で行った街頭演説に駆けつけ、支援を呼びかけた。

 菅氏はマイクを握り「なんとしても今回の総裁選、小泉氏に日本のかじ取りを任せたい。そんな思いで皆さんと一緒になって応援をさせていただいている」と述べ「皆さんの大きなお力を、小泉進次郎さんに与えていただきたい」と小泉氏への支援を訴えた。

 小泉氏は、「今回の総裁選は自民党が変わるか、本当に変われるかを問われています。自民党を本当に変えるなら、改革を唱えるリーダーではなく、圧倒的なスピードで改革を前に推し進めることができるリーダーを選ぶことです」と語り、公約として「聖域なき規制改革」「人生の選択肢を増やす」「政治改革」の3つの柱の政策を1年以内に行うと強調した。

 さらに「私が総理総裁になったら足りないところを私以上の力をもって支えてくれる完璧なチームをつくります。 そして『これだったら託せる。任せられる』そう思ってもらえるような総裁選の戦いを、全身全霊をもって戦っていく」と述べた。

 横浜での演説には、約7,000人の聴衆が集まり、熱気があふれていたという。横浜市議も務めた菅氏にとって横浜は、ホームグラウンドといってよい。菅氏は、自民党神奈川県連会長も務める小泉氏と近く、以前から永田町関係者の間で、菅氏は、岸田文雄首相や麻生太郎副総裁が3年にわたって、主流派として実権を握ったことを恨みに思っており、内閣支持率の低迷からいずれ倒閣に動くとみられてきた。

 菅氏は6月26日発売の保守系月刊誌『Hanada』のインタビューで、岸田首相を公然と批判、「派閥の政治資金をめぐる問題で責任を取っていない」と指摘し、「岸田総理大臣が派閥を解消したことを評価しているが、やるならすべての派閥を一気に解消すべきだった。加えて岸田総理大臣自身も各派閥と同じような処分を自身に科し責任を取るべきだった」と述べるなど、岸田首相に対する敵意をあからさまに見せていた。さらに菅氏は「自民には若い優秀な議員が少なからずいる。自ずと意欲ある若手が出てくるのではないか」との見方を示していた。これは小泉氏擁立の伏線であったとみることができる。

 当初は、国民人気の高い石破茂元幹事長を担ぐのではとみられていた。しかし、安倍政権で官房長官を務めた菅氏が、安倍元首相に批判的だった石破氏を担ぐことには、やはりためらいがあったようだ。

 当日、横浜で菅氏の演説を聞いた自民党関係者は「年齢的にみて、菅さんにとって最後の挑戦ではないか」と語った。

規制緩和のマイナス面への懸念

 横浜での熱気は、小泉氏の父・純一郎氏の「小泉劇場」を彷彿とさせる。純一郎氏は「聖域なき構造改革」を掲げ、「自民党や既得権益をぶっこわす」と訴えた。息子の進次郎氏は、父に倣い「聖域なき規制改革」を掲げ、「政治資金の透明化、自民党改革、国会改革を三位一体で進める」と訴えている。

 しかし、当然、それに対する抵抗勢力は自民党内外に根強く存在する。純一郎氏は、竹中平蔵氏を重用し、郵政民営化をはじめとする数々の民営化や規制緩和を進めたが、マイナス面も大きかった。本来、保守は改革に慎重な立場をとる。菅氏と並ぶキングメーカー・麻生氏は、財務省と手を結びながらも、規制緩和の推進には慎重な姿勢をとった。

 菅氏が公明党や日本維新の会と連携する一方で、麻生氏は、立憲民主党や国民民主党の支持団体である連合(日本労働組合総連合会)と連携している。地元福岡の県議会においても、自民党県議団と、連合系労組の支援を受ける民主県政県議団は、知事与党として共に県政を支えている。連合は、小泉氏が掲げる解雇規制緩和に断固反対の立場だ。

 自民党福岡県連の非主流派である武田良太元総務大臣や宮内秀樹元農水副大臣は、菅氏が首相時代に閣僚・副大臣に就任した経緯もあり、小泉氏を全面的に支える立場にある。そのため中央政局ばかりでなく、福岡政局も大きく動くことになる。

 麻生氏は2012年以来、長期にわたって政権の実権を掌握してきたが、小泉氏が勝利するようなことになれば一気に非主流派へと転落する。

 もし小泉氏が総裁に決定し、首相となれば、衆議院の早期解散を断行し、その勢いで、解雇規制緩和やライドシェアの全面解禁などを推し進めることが予想される。そうなると自民党内部からはもちろん、連合などの猛烈な反対が展開されることは間違いない。

 そのときの小泉氏の後ろ盾は、間違いなく菅氏になる。現在の岸田首相に対する麻生副総裁のような立場になるのではないか。早くも小泉新政権となれば、「菅氏の傀儡政権になる」と指摘する声は少なくない。

 小泉氏の応援部隊には、地元神奈川県選出の三原じゅん子参議院議員もいるが、三原氏は無派閥で菅氏に近い。前回は、野田聖子氏の推薦人を務めた。野田氏は、今回の総裁選に挑戦しようとしたが、ことごとく「菅氏にブロックされた」と恨み節を吐いていた。

 最終的に野田氏は小泉氏の推薦人になることを明らかにした。小泉純一郎首相(当時)が進めた郵政民営化に反対して自民党を離党した野田氏を小泉支持へと取り込んだことになるわけで、菅氏の強かさは侮ることができない。

【近藤将勝】

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