2024年12月23日( 月 )

DXと社内風土変革でさらなる発展を目指す

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(株)ニシケン

ニシケン本社 前列左から5番目が田中誠一代表
ニシケン本社 前列左から5番目が田中誠一代表

 福岡県久留米市に本社を置き、建機・福祉用具レンタルなどを手がける(株)ニシケン。2016年に建機レンタル大手(株)カナモトの連結子会社となり、カナモトアライアンスグループの一員となった。その後、九州に拠点を構える同グループの(株)九州建産、第一機械産業(株)の2社を相次いで吸収合併。建機レンタルのパイオニアとして生まれ、今なお成長を続ける同社の目指すものとは。

建機レンタルのパイオニア 「同盟」でさらに成長

 建設工事の受注には波がある。受注のない状態で建設機械や資材を自社で保有する場合、コストパフォーマンスの低下は軽視しえない。そこで、地域で建機や資材を共有する事業が考案された。1960年11月、地場の建設会社や工務店、金融機関の共同出資により設立された西日本建設資材(株)。現在のニシケンがそれである。

 同社は建設業界にレンタルの概念がいまだ登場していなかった時代に、日本における建機レンタルのパイオニアとして久留米市に誕生。資本金500万円、従業員5名で漕ぎ出した小さなレンタル事業者は、高度経済成長の追い風を受け、設立からわずか5年で売上高1億円を突破。順調に成長を遂げ、現在では、西日本有数の機器保有数と営業拠点を誇るまでになった。

機器保有量と営業拠点網は西日本有数
機器保有量と営業拠点網は西日本有数

    売上高100億円を突破した90年代後半からは福祉事業に着手。2000年の介護保険制度施行に合わせて福祉用具・介護用品のレンタルを本格始動。これまでに培ったレンタルのノウハウを生かし、九州から関東にまで営業拠点を拡大した。今や同社の福祉事業は、建機レンタルと並ぶ基幹事業の1つとなっている。

 16年、同社は建機レンタル大手(株)カナモトの連結子会社となった。財務内容も良く、地場大手の優良企業として知られていた同社のカナモトグループ入りの報は、驚きをもって迎えられた。移りゆく事業環境を厳格に、冷静に分析した末に下した決断だった。

 カナモトはグループ会社に対して、アライアンス(同盟)という姿勢を強く打ち出している。「支配ではなく同盟」の新たな事業体制によって、同社の強みを生かしながらグループの資源を活用できるようになった。販路の拡大などさまざまなシナジーを生み、19年10月期には204億22百万円の売上高を上げた。同社初の年間売上高200億円の大台突破である。

 22年に(株)九州建産、23年に第一機械産業(株)を吸収合併。カナモトアライアンスグループの九州シェア20%超を目指す「One Kyushu」プロジェクトとして、九州に拠点を構える同グループ2社との経営資源の集中と管理部門の一元化を図った。23年10月期の売上高は269億20百万円。今後の動向に期待が高まる。

DX推進に注力 社員の意欲を起爆剤に

(株)ニシケン 田中誠一代表
田中誠一代表

    「One Kyushu」プロジェクトに着手したのは20年1月に代表取締役社長に就任した田中誠一氏だ。みずほ銀行からカナモトに入り、地元である福岡に戻ってきた。田中氏は就任後、社内のDX推進にも力を注いでいる。

 同社は、サーバーのクラウド化などを皮切りに、社員が繰り返し行う業務などについて自動的に処理できるRPAを扱える人材の育成を行っている。業務の効率化・自動化が狙いだ。AIに関しても導入に積極的であり、ディープラーニングを基に需要予測・在庫管理の高度化等に活用中。今後も機能を拡充させていくという。また、生成AIの活用方法も模索している最中だ。

 同社のDX推進の旗振り役は専担者4名、兼務者6名の計10名からなるDX推進室だ。4名の専担者は各営業所を周り、RPAやBIツールなどの活用方法などを紹介しているという。本社へ担当者を集めて一括で研修を行うのに比べ、草の根的で非効率に思えるが、これには狙いがあるという。「現場の声を聞くため」だ。画一的な方法では成果は出ない、実際に現場で使うイメージが必要だと田中氏は語る。

 また、新しい技術に高い関心をもつ社員を発掘できるという利点もある。「好きこそものの上手なれ」という言葉がある通り、関心の高い者ほど習熟も早い。そういった社員を育て、各営業所での起爆剤にしようというのだ。

現場の声に耳を傾け ボトムアップの会社目指す

 「現場の声を聞く」。企業経営において、重要な命題としてしばしば口にされる言葉だ。田中氏はこの命題をある行動によって実践している。代表である田中氏が、社員1人ひとりと面談を行う「1on1雑談」だ。就任当時に始めた雑談だが、2社との合併などで社員も増え、現在進行形であるという。

 総勢750名を超える社員と1人につき最低30分以上は話すというこの雑談。ある企業経営者は、田中氏の取り組みを「修行」と称した。しかし、「私自身、情報の解像度がかなり上がりました。人材の発掘や信頼関係の構築にも有効な手段です」と当の本人は朗らかに笑う。また同社では、「教育」ではない「コーチング」に重きをおいた研修を実施しており、社内全体でコミュニケーション活性化を図っている。

 現在、同社は働き方改革施行に合わせて年間休日126日(4週8休)を実現させたほか、女性管理職比率向上などにも取り組んでいる。働きやすい環境づくりが社内コミュニケーション向上へ、そして、ボトムアップの気風へとつながっていくのだろう。

 ニシケンの「関わるみんなを笑顔にしたい!」という思いは会社の内側から発露するものなのだ。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中誠一
所在地:福岡県久留米市宮ノ陣町若松1-9
設 立:1960年11月
資本金:11億3,900万円
TEL:0942-35-5840
URL:https://www.r-nishiken.co.jp

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