2024年09月27日( 金 )

地域とともに歩んだ115年 福岡県内外へ「食の幸」提供

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)山口油屋福太郎

 業務用食品卸を基幹事業に、明太子などの製造販売を手がける(株)山口油屋福太郎。創業から100有余年を数える老舗企業の始まりは食用油の製造販売業。明太子の会社として知名度を得た後、2001年に「めんべい」を開発。新感覚の「明太子×せんべい」の商品は、今や定番の博多土産となっている。個人創業の油屋から「食」の総合企業に進化を遂げ、今なお成長を続けている。

地域の人々に支えられ、祖業の油屋から事業を拡大

(株)山口油屋福太郎 本社外観    明太子や「めんべい」で知られる山口油屋福太郎。1909年、創業者である山口源一氏が旧福岡市新瓦町(現在の福岡市博多区祇園町)で社名通りの油屋、つまり食用油の製造販売業を起こしたことから同社の歴史は始まった。現在のキャナルシティ博多あたりに店舗を構え、周辺一帯の畑で収穫した菜種を絞り、油を製造。飲食店への卸売、家庭への直接販売を行っていた。太平洋戦争では福岡大空襲を経験しながらも、地域住民に支えられ、強かに事業を継続していた。

 しかし、戦後に状況は一変する。60年代から始まる高度経済成長期、大量生産・大量消費による低価格化が進んだ。小売業ではスーパーマーケットが台頭し、スケールメリットを生かした値下げを行った。食用油は格好の「客寄せ商品」として活用され頻繁に安売りが行われた。

 さらに70年代はオイルショックによって食用油の値段も乱高下する時代となった。油の大規模なマスプロダクトに踏み切るのか、新たな事業の柱を探すのか、同社は決断を迫られることになる。そこで選択したのは後者。新たな事業、業務用食料飲料卸の開始である。これまで食用油の販売で築いた飲食店や地域住民らへの販路・交流を活用し、調味料や香辛料などをニーズに合わせて卸し始めたのだ。その後も取扱品目を拡充。事業の規模を拡大していった。現在、業務用食品卸は同社の基幹事業となっている。

看板商品の誕生 「食」の総合企業へ

 70年代初頭、博多駅が山陽新幹線の終着駅になることが決まり、博多の街は大いに沸いていた。菓子メーカーなどをはじめ、多くの企業が挙って博多土産の開発を開始した。そこで、注目を集めたのが「明太子」だった。明太子を生み出した「ふくや」の川原俊夫氏は、明太子を博多の名物にしようとレシピを公開し、数多くの明太子製造業者が誕生した。

「ごはんに合う明太子」として開発された福太郎の明太子
「ごはんに合う明太子」として
開発された福太郎の明太子

    一方、同社は業務用食品卸で培ったノウハウを生かした自社開発を決断。試行錯誤の末に、調味液の配合比率や「二度漬け製法」など独自の製法を確立し、72年に販売を開始した。「味のめんたい福太郎(現商品名:好味)」は博多土産の1つとして多くの人々に知られるようになったのだ。

 「明太子の店」としての知名度を得た同社。しかし、明太子には原材料スケトウダラの好不漁による価格の変動を受けやすく、高単価なうえに日持ちがしないという課題があった。そこで、年中安定して供給可能な商品の開発が始まった。かりんとうやラーメンなどさまざまなアイデア商品を販売するなかで、一際売上を上げた商品が生まれた。その商品こそが「明太子×せんべい」の「めんべい」であった。

人気商品「めんべい」
人気商品「めんべい」

    今でこそ代表的な博多土産である「めんべい」も当初は数ある新商品の1つに過ぎなかった。安価で買える直営店のレジ前陳列商品としてスタートし、当初はスーパーの鮮魚売場で販売されることもあったという。その後、口コミやメディアで人気を集め、今日では売上高の約30%を占める大ヒット商品へと成長した。福岡の地域密着の油屋は、県内外の多くの人々から愛される「食」の総合企業へと進化を遂げたのである。

時代の潮流を見極め、今を力強く生きる姿勢を

(株)山口油屋福太郎 樋口元信代表
樋口元信代表

    駅の売店などで見かける「め」の一文字が大きく配されたボール紙の小箱。2001年、あの印象的なパッケージデザインを考案したのは現在の代表取締役社長・樋口元信氏だ。樋口氏は「めんべい」開発当時を振り返って、「ちょうど入社前後の時期でした。何度も味見をしたり、生地と明太子の配合を調整したりと試行錯誤の連続でした」と語る。「数ある新商品の1つに過ぎなかった」と言いながらも、地道な努力がうかがわれる。

 23年12月期、同社は138億円の売上高を上げ、過去最高となった。明太子等の製造販売を柱に、飲食部門や温泉施設運営など多様な業態・職種を展開し、今なお成長を続ける同社。24年12月期は売上高141億円を目指し、組織改革やDXを進めている最中だ。原材料費の高騰や運送体制の変化など今後取り組むべき課題も多いが、樋口氏は「世の趨勢は絶えず変わります。これをきちんと見極め、キャッチアップすることが理想です」と外部環境の変化に対応する柔軟性が重要だと語る。

 続けて、「しかし、『めんべい』がヒットしたこともそうですが、何度も想定外のことに助けられました。愚直に、今をしっかりと力強く生きるという姿勢が良い結果につながるのだと思います」と気を引き締めた。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:樋口元信ほか2名
所在地:福岡市南区五十川1-1-1
設 立:1955年1月
資本金:1,000万円
TEL:092-475-7777
URL:https://www.fukutaro.co.jp

関連キーワード

関連記事