2024年10月01日( 火 )

市街地整備進む「笑顔で暮らす自然都市なかがわ」(前)

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2018年10月誕生の県内29番目の市

 2015年国勢調査で人口が5万人を突破し、福岡県内29番目の市として、18年10月1日付で単独市制を施行した那珂川市。その名前の由来は、市南部の佐賀県の県境にある脊振山を水源とする二級河川「那珂川」からで、同川が市内を南北に縦断している。

 市域の3方向を背振山から連なる山々に囲まれており、平野部は福岡市(南区)や春日市と接している市域全体の3分の1程度となっている。東西には古都・大宰府に通じる「宰府道」が、南北には歴史の道百選である「肥前・筑前街道」が貫通し、古代から交通の要衝として栄えてきた場所であり、弥生時代中期の集落跡である「安徳台遺跡」や、福岡平野で最古級の前方後円墳である「安徳大塚古墳」、日本書紀にも記されている人工の用水路「裂田溝(さくたのうなで)」、元寇の役で九州武士団の総大将として活躍した少貮景資(しょうにかげすけ)の居城である「岩門城(いわとじょう)」跡など、数々の史跡が残されている。また、仕事運のご利益があるとして崇められる「現人神社(あらひと)神社」は、全国に二千余社ある住吉三神を祀る神社のなかでも最古の神社とされており、同じ住吉三神を祭神とする「住吉神社」(福岡市博多区)や「住吉大社」(大阪市住吉区)は、現人神社から分かれたものだとされている。かように、古代から相応の歴史を積み重ねてきた地となっている。

 明治期に入ると同地では、1889(明治22)年4月の町村制の施行によって南畑村、岩戸村、安徳村の3村が誕生し、その3村が戦後の1956年4月の市町村合併促進法に基づいて合併し、筑紫郡那珂川町が誕生した。これが現在の那珂川市の前身となる。那珂川町発足当時の人口は8,948人と1万人に満たなかったが、その後、恵まれた自然環境や福岡市の都心部から至近の距離にあること、さらには大規模な土地区画整理事業やJR博多南線の開業に代表される都市基盤整備により、人口は大幅に増加。2009年ごろから、市への昇格を目指した取り組みをスタートさせた。

 だが、「平成22年国勢調査」では、市昇格要件の人口5万人にわずか220人足りず、惜しくも見送りに。その後、定住促進策を打ち出すなど、改めて町を挙げて市制施行を目指して取り組み、迎えた「平成27年国勢調査」の速報値で5万29人、確報値で5万4人と、合併ではなく単独での市昇格要件をクリア。16年4月からは市制準備室を設置してさまざまな準備を進め、那珂川町誕生から62年後の18年10月1日付で、ついに念願の市制施行を迎えることとなった。福岡県内での単独市制は、1997年の古賀市以来約20年ぶりで、県内では29番目、日本全国では792番目の市の誕生となった。

人口集中の北・市街地と豊かな自然の南・山間部

 那珂川市は福岡市の西南部に隣接して福岡都市圏の一角を担っており、とくに福岡市と接する市北部の平地部では、ベッドタウンとして都市化が進行。主要な幹線道路である国道385号沿いでは、福岡市南区と市境を跨いで市街地が連続(連坦)し、一体化している。公共交通機関としては新幹線とバスがあるが、新幹線を利用すればJR博多駅まで約9分で行くことができ、交通利便性も比較的高い。

 その新幹線駅であるJR博多南駅は、山陽新幹線の博多駅から車両基地「博多総合車両所」までの回送線を旅客線化した路線「博多南線」の駅であり、地元住民からの要望により1990年4月に開業したもの。ちなみにJR九州ではなく、JR西日本の駅である。なお、同駅は那珂川市と春日市との市境に位置しており、駅自体の所在地は春日市となっているものの、駅出入口は西側の那珂川市側にしかなく、同駅は実質的に那珂川市の玄関口という位置づけ。駅前には博多南駅前ビル「ナカイチ」をはじめ、いくつかの商業ビルはあるものの、それほど繁華街という様子ではない。だが、周辺エリアにはいくつものマンションや生活利便施設などが立ち並んでおり、このあたりが那珂川市の中心部となっている。現在も(株)アライアンスによる分譲マンション「エイリックスタイル那珂川」(36戸、24年7月竣工)の販売が進むなど、福岡都市圏におけるベッドタウンとしての人気は依然として高い模様だ。

(左)エイリックスタイル那珂川--(右)中ノ島公園
(左)エイリックスタイル那珂川 (右)中ノ島公園

 一方、佐賀県との県境でもある市南部は、豊かな自然環境が残された農村部や中山間部となっている。那珂川の上流域には、生産物直売所「かわせみの里」などを備えた河川公園「中ノ島公園」のほか、福岡都市圏の水がめである「南畑ダム」を擁し、さらに18年3月には「五ケ山ダム」が竣工(21年1月供用開始)。那珂川の洪水対策と異常渇水対策を主目的とした同ダムは、ダム規模としては県内最大級の規模をもち、湖畔には「五ケ山クロス ベース」「モンベル 五ケ山ベースキャンプ」などの観光・アウトドア拠点も新たに誕生。一方で、登山リフトや人工芝スキー場、自然体験が可能な宿泊施設「グリーンピアなかがわ」は23年3月末をもって閉園した。なお、中山間部エリアにあたる南畑地区では現在、ログハウスの「BESS(ベス)」((株)アールシーコア/東京都渋谷区)による全25区画の分譲地「那珂川 十入道 FuMoTo」の開発が進んでいる。

 このように、市北部の市街地エリアと市南部の山間部エリアでは、大きく異なる性質をもつ那珂川市。市の人口の約8割が市街地エリアに集中しているといい、それに応じた都市計画を策定しながら、より良いまちづくりを進めていこうとしているところだ。

(つづく)

【坂田憲治】

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