2024年10月02日( 水 )

勢いづく福岡の東部臨海エリア(3)

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新たな区画整理にスマートIC 勢いに乗る新宮町

 糟屋郡に属する新宮町は、南側が福岡市、北側が古賀市、東側が久山町と隣接し、福岡都市圏の一角を構成する町である。18.93㎢の町域の東部には立花山を始めとした山地が広がるほか、北西部は玄界灘に面しており、沖には近年“猫の島”として一躍脚光を浴びている「相島」が浮かぶなど、豊かな自然が多く残されている。一方で、町の西部エリアには平地が広がり、国道3号と国道495号、JR鹿児島本線、西鉄貝塚線といった交通インフラの大動脈が南北に走ることで交通利便性に優れ、新宮町役場を始めとした公共施設や、工場、住宅、商業施設などが集積。このエリアでの市街化が進んでおり、実質的な町の中心部となっている。

 町内からは福岡市への通勤者が多く、いわゆるベッドタウンとしての発展を遂げてきた。ただし、新宮町の人口は1990年代までは長らく1万人台で推移しており、2000年代に入っても2万人弱と、福岡都市圏のなかで比較的緩やかな人口推移をたどっていた。劇的な変化が訪れたのは、2010年代に入ってからだ。

 10年3月に町内初のJR駅であるJR新宮中央駅が開業すると、それに合わせて駅前の区画整理や開発が急激に進行。とくにJR新駅の開業にともなう駅前の中心市街地整備では、駅前に広大なセントラルパークとなる「沖田中央公園」と、その地下に埋設した下水処理場を一体整備することで、まちづくりの“核”を設定。その周囲に大型マンションや商業施設を効果的に配置することで、町としての“骨格”を形成していった。その結果、12年2月に竣工した「MJR新宮中央駅前」(総戸数81戸)を始めとした大型マンションが次々と開発されたほか、IKEA(12年4月開業)を皮切りに、カインズ(16年3月開業)、東京インテリア家具(18年4月開業)など、九州初進出の大型商業施設を次々と開業していった。近年では、23年8月に九州2号店として「ロピア 福岡新宮店」が開業するなど、中央大手が九州での試金石的に新宮町に出店する傾向はいまだ残っている模様だ。

(左)IKEA 福岡新宮 (右)スマートICが検討されている新宮町立花口付近
(左)IKEA 福岡新宮
(右)スマートICが検討されている新宮町立花口付近

 その新宮町では現在、新たに2つの地区での土地区画整理事業が進行している。

 まず1つ目の「三代土地区画整理事業」は、防災活動拠点(新宮東中学校および新宮ふれあいの丘公園)に隣接したエリアにおいて、防災活動拠点を支援するまちづくりを目指して事業に着手したもので、それとともに広域交通が交錯する場所において、産業・住宅・商業・交流などの機能がコンパクトに集積した機能複合型のまちづくりを進めるとしている。施行区域面積は35.2haで、主な土地利用は商業施設や物流・工業施設のほか、住宅を予定。また、現在は国道3号の大森交差点で止まっている県道540号山田新宮線を延伸させ、エリア内を東西に貫く都市計画道路三代・的野線として整備するほか、南北に縦断する幹線道路県道町川原線および生活道路となる区画道路、公園を整備していくとしている。現在、すでに造成工事などに着手しており、事業期間は21年3月から29年3月までを予定。総事業費は約108億円を見込んでいる。

(左)三代土地区画整理事業 (右)新宮町下府造成工事
(左)三代土地区画整理事業 (右)新宮町下府造成工事

 もう1つの「下府土地区画整理事業」は、町の東西の生活圏構成軸に位置付けられた都市計画道路湊・三代線沿道の下府地区において、生活利便施設と住宅を中心とした市街地整備を進めていくもの。地区内に敷地の緑化や建物の形態・デザインなどを統一した良好なまちなみが形成された住宅地や幹線道路沿線(県道湊下府線)に商業施設のほか、医療・福祉施設などの生活利便施設を誘致する計画となっている。施行区域面積は約9.1haで、主な土地利用は住宅と商業施設を予定。こちらもすでに造成工事に着手し、事業期間は22年12月から27年7月まで、総事業費は約30億円を見込んでいる。

 さらに、新宮町の開発に関する話題がもう1つある。国土交通省は9月6日、新たにスマートインターチェンジ(IC)4カ所の準備段階調査に着手したと発表したが、そのうちの1つが「新宮スマートIC(仮称)」である。新宮スマートICは、九州自動車道と筑紫野古賀線が並走する町東部の立花口地区において検討が進められてきたもので、周辺は物流企業などが集積しているエリアとなっている。新宮町では以前より同地区における新たな土地利用を検討しており、かねてより町としてスマートIC設置の要望を行っていた。周辺では民間開発による大規模流通業務施設整備計画も検討されているといい、今後、準備段階調査を経てスマートICの整備計画が実現していくことで、新宮町の東部エリアでは流通関連の産業集積が進んでいく可能性がある。

 そんな新宮町での主な分譲マンション開発を挙げると、JR福工大前駅まで徒歩約7分の美咲2丁目で開発が進む作州商事(株)による「エイルマンション新宮」(73戸、25年9月末竣工予定)や、JR新宮中央駅まで徒歩6分の上府北1丁目で開発が進む西武ハウス(株)による「モントーレ新宮セントラルステーション ル・ブリーズ」(42戸、24年11月上旬竣工予定)などがある。

(左)エイルマンション新宮  (右)モントーレ新宮セントラルステーション ル・ブリーズ
(左)エイルマンション新宮
(右)モントーレ新宮セントラルステーション ル・ブリーズ

(つづく)

【坂田憲治】

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