2024年10月04日( 金 )

勢いづく福岡の東部臨海エリア(5)

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福間と津屋崎で温度差 エリア格差大きい福津市

 2005年1月に宗像郡の福間町と津屋崎町が合併して発足した福津市は、福岡市と北九州市という2つの政令指定都市のほぼ中間に位置する一方で、福岡都市圏の最北端的な立ち位置となっている。52.76㎢の市域は、北側が宗像市、南側が古賀市、東側が宮若市と接しており、国道3号や国道495号、県道30号飯塚福間線、県道97号福間宗像玄海線などの幹線道路が通るほか、JR福間駅とJR東福間駅の2つの鉄道駅を有している。なお、かつては西鉄宮地岳線(現・西鉄貝塚線)が通っていたが、07年4月に福津市内の全区間が廃線となったことで、津屋崎エリアは鉄道空白地となってしまっており、人口もJR沿線の福間エリアに集中している感がある。

 一方で、市内のとくに津屋崎エリアには、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産である新原・奴山古墳群のほか、“光の道”で知られる「宮地嶽神社」、近年“かがみの海”として人気の遠浅の海岸「福間海岸」「宮地浜」「津屋崎海岸」、江戸期からの歴史のある街並み「津屋崎千軒」など観光資源も豊富で、(株)グラノ24Kの「グランピング福岡~海風と波の音~」や日乃出食品(株)(KOGAグループ)の「グランドーム福岡ふくつ」などのグランピング施設も複数存在する。方角は違えど、福岡市の中心部からほぼ同距離にある糸島市とは、地域特性や土地利用など似通った部分はある。

 古賀市や新宮町とは違い、福津市内には大規模な工業団地は存在しない。そのため、これまで主に住宅地を中心とした開発が進められてきており、ベッドタウンとしての発展を遂げてきた。その福津市のなかでも、JR福間駅の周辺は近年とくに居住地としての人気が高いエリアだ。もともと駅周辺では、駅北側から県道97号(福間宗像玄海線)にかけてのエリアで商業地と住宅地が混在するほか、JR線路沿いの光陽台などで住宅地の開発が進行。かつては、どちらかといえば駅西口のほうが賑わっていた。

 ところが、福間駅から南東方向約1.2kmに位置する国道3号沿いに12年4月に「イオンモール福津」が開業したことに加え、04年度から進められてきた福間駅東土地区画整理事業が14年5月に完了して新たな住宅地「日蒔野(ひまきの)」が誕生。快速利用で博多駅まで約25分という交通アクセスの良さに加え、生活利便施設の充実や適度な自然に囲まれた生活環境の良さなどから人気を博し、隣接する既存の住宅地も含めたエリアで、新たな住居や商業店舗の開発が相次いでいる。また、鉄道駅からはやや離れているが、旧・福岡厚生年金スポーツセンター(ウェルサンピア福岡)跡地では、ハウスメーカー16社によって開発された分譲住宅地「シーサイドパーク海岸通り」(507区画、18年6月に第2工区造成完了)が誕生。海に至近のロケーションの良さもあって、こちらも人気のエリアのようだ。

 その福津市では現在、22年10月改訂の第2次都市計画マスタープランにおいて、「津屋崎地区」「東福間駅周辺地区」「福間駅周辺地区」の市内3拠点の整備を進めている。

 まず「津屋崎地区」では、前述の津屋崎千軒の街並みを中心としたエリア一帯を、観光資源として活性化していくため、上質な街並みを保全するとともに、エリア内の建物、施設の全体的・面的な活用計画を策定。民間企業の取り組みと足並みをそろえながら、「着地型観光」の充実を図っていこうとしている。

 2つ目の東福間団地や若木台団地を含めた「東福間駅周辺地区」では、整った都市基盤や住環境をさらに有効に活用するために、両団地を高架歩道橋で結び、高齢者だけでなく子育て世代も含めた幅広い世代の方々が暮らしやすいように生活利便性を高めていくなど、民間事業者の参画も得ながら環境整備を進行。

 3つ目の「福間駅周辺地区」では、県道飯塚福間線の福間駅~福間郵便局の区間が市に移管されることを契機に、歩行者空間の確保に向けた取り組みを検討。マルシェの開催や官民連携による空き店舗のリノベーションなど、賑わい創出のための新たな取り組みを検討することで、駅のみやじ口(西口)周辺の賑わい創出を目指していこうとしている。ただし、こうした3拠点の整備が進められようとはしているものの、現在は市内で大規模な開発計画は進行しておらず、古賀市や新宮町と比べると、やや開発の勢いが一服した感がある。

(左)アメイズ福津中央レジデンス
(右)ユニ-エクセランふくつテラス

 そんな福津市内での近年の分譲マンションの開発は、JR福間駅まで徒歩12分の距離にある中央1丁目で、(株)シフトライフによる「アメイズ福津中央レジデンス」(70戸、24年6月竣工)の1件のみだ。一方で、西福間1丁目で第一ホーム(株)による全19区画の住宅地「ユニ エクセランふくつテラス」の開発が進んでいるほか、(株)OZ工務店による2棟の戸建住宅の開発が進行。福津市内では、依然マンションよりも戸建住宅志向が強い傾向にあるようだ。

リアン西福間Ⅱ
リアン西福間Ⅱ

    建売住宅や注文住宅などの開発を手がけるOZ工務店が現在、福津市内で自社ブランドの建売住宅「リアン」2棟の開発を進めている。「リアン西福間Ⅱ」は、福間駅まで徒歩15分の西福間2丁目で開発を進めており、空間を生かした4LDKに駐車スペースは2台を確保。もう1つの「リアン津屋崎」は、福間駅まで車で9分の津屋崎5丁目で、空間を生かした4LDKに駐車スペースは3台を確保している。

 「福津市は、福岡と北九州のどちらにも通勤可能な住みやすいエリアであり、福岡市に比べて敷地を広く取れ、ゆったりと過ごせる住宅の開発に適しています。駅近エリアでもまだ開発余地がある一方で、津屋崎エリアも農地開発を含めてさらなる発展の余地があると考えています」(OZ工務店・栗川主任)。

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 冒頭、福岡都市圏でも東側に向かって拡大するフェーズに入ってきたというような話に触れたが、東区香椎・和白、新宮町、古賀市、福津市それぞれのエリアで、旺盛な開発が進められている様子が確認できた。

 今回は触れていないが、同じく福岡都市圏東部に位置する糟屋郡の粕屋町や篠栗町などでも大規模な開発が進行しており、とくに粕屋町では9月17日に国土交通省が発表した「令和6年都道府県地価調査」において、工業地で「粕屋町大字仲原字釜屋2729-4」が全国7位(変動率25.0%)の上昇率となるなど、需要が高騰傾向にある。

 今後、勢いに乗る福岡都市圏における宅地・工業団地・商業の旺盛な需要を背景に、東部エリアのさらなる飛躍を期待したい。

(了)

【坂田憲治】

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