2024年10月07日( 月 )

【国交省と厚労省】連携で建設人材の確保・育成サポート(前)

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担い手確保へ、来年度の予算概算要求

 建設業技能者のうち、60歳以上の割合が約4分の1を占める一方で、29歳以下は全体の約12%と高齢化が加速している。将来の建設業を支える担い手確保が急務となっており、国土交通省と厚生労働省は連携して、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用促進など、建設業の「人材確保」「人材育成」「魅力ある職場づくり」に向けた取り組みを実施。令和6年度予算に引き続き、「令和7年度予算概算要求」においても、人材確保・育成に多角的に取り組もうとしている。

 まず、国交省では、建設産業の健全な発展を図る観点から、業界団体や企業と連携し、就労環境の整備や人材確保・育成に向けた取り組み、建設工事請負契約の適正化などを実施するとしている。6月7日には、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(通称=第三次・担い手3法)が国会で可決・成立した。同法のポイントは、①労働者の処遇改善、②資材高騰にともなう労務費へのしわ寄せ防止、③働き方改革の推進と生産性の向上の3つ。

 一方の厚労省では、建設労働者の確保や雇用の安定を図る観点を重視。建設業者団体や企業が人材確保・育成などに取り組む際の助成金の支給や、ハローワークにおける就職支援を実施するとしている。

 両省は連携して、建設業への入職や定着を促すための建設業の魅力の向上やきめ細やかな取り組みを実施する「人材確保」と、若年技能者などを育成するための環境整備による「人材育成」、技能者の処遇を改善し安心して働けるための環境整備による「魅力ある職場づくり」の3つに取り組んでいくとしている。以下、「人材確保」「人材育成」「魅力ある職場づくり」のカテゴリーごとに、国交省と厚生省それぞれの取り組みを見ていこう。

人材確保

国交省の取り組み

 「働き方改革等による建設業の魅力向上」の予算として、令和6年度当初予算額2億1,000万円から9,000万円増額した3億円を計上。具体的には、以下の取り組みを行っていくとしている。

 「適正な工期設定などによる働き方改革の推進」では、持続可能な建設業の実現に向けて、働き方改革のさらなる推進を図っていくとしている。そのために、工期設定に関する実態調査や工期の適正化のための周知・啓発に係る事業を実施する。

 「建設業の担い手確保に向けた女性・若者の入職・定着の推進」では、建設産業における将来の担い手確保のため、2024年度に建設業界における女性のさらなる活躍を目指す新行動計画を策定中。25年度においては、新行動計画に基づくコンテンツを作成し、それを踏まえて技能者を雇用する企業経営者への啓発等を実施する予定となっている。具体的には、20年に策定した計画書に基づいて進められ、20年以降は入職者に占める女性の割合が増加してきた。しかし、24年で見ると全産業平均の約50%と比べ、建設業は26.8%といまだ低い状況だ。加えて、女性の入職者に対する離職者の割合についても近年増加傾向にあるなど課題が浮き彫りになった。

 このたび、それら取り組みの結果を踏まえ、官民一体となって取り組むべき事項を整理し、(一社)日本建設業連合会など建設業5団体、(一社)住宅生産団体連合会、建設産業女性定着支援ネットワークと「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画検討会」を設置。新行動計画の策定を目的に、8月21日に第1回検討会を開催した。前述の課題に加え、建設業に従事する女性職員88万人のうち、技術者・技能者の割合は建設業全体におけるそれらの割合と比べて極めて低くとどまっていることを勘案し、新たな計画の方向性として、女性が技術者・技能者として働く姿をより具体的にPRする。同時に、現場の女性技術者・技能者がより働きやすくなる環境を整備することで、女性の活躍の場を広げ、定着を促進していくことを狙っていくとしている。

 そのほか、「地方の入札契約改善推進事業」では事業を拡充する。24年6月には、公共工事の発注体制の強化についての入契法・品確法の改正を盛り込んだ「公共工事の品質確保の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立した。これを受け、地方公共団体の発注体制の強化・入札契約適正化の一層の加速化を実施するなど、全体で7項目を推進する。

厚労省の取り組み

 建設業に特化した支援として「建設事業主などに対する助成金による支援」の予算に69億円、「『つなぐ』化事業の実施」の予算に2,900万円の2項目を掲げるほか、全業種に対する支援として「ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援」の予算に50億円、「高校生に対する地元における職業の理解の促進支援」の予算に1,900万円を計上している。

 「建設事業主などに対する助成金による支援」では、雇用管理改善や人材育成に取り組む中小企業事業主などに経費や賃金の一部を助成する。助成金は、助成目的別に人材確保等支援助成金、人材開発支援助成金およびトライアル雇用助成金と分けられる。また、25年度の新規事業として、人材確保等支援助成金において建設キャリアアップシステム等普及コースを廃止し、その代わりとなる「建設キャリアアップシステム等活用促進コース(仮称)」を創設。当該コースの雇用管理改善促進事業において、技能者の能力・経験に応じた適切な処遇を目的として中小建設事業主が実施するCCUSを活用した雇用管理改善の取り組みを支援する。ほかには、人材支援助成金(建設労働者技能実習コース)について、建設キャリアアップカード登録者については賃金助成額を1.1倍にする。これは24年度限りだったものを25年度まで延長するかたちだ。

 ほかにも、建設業だけに特化した支援ではないが、「ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援」では、25年度は体制および取り組みの拡充を行っていくとしている。具体的には、建設のほか、医療・福祉、運輸などの雇用吸収力の高い分野へのマッチング支援の強化するため、ハローワークに「人材確保対策コーナー」を設置。関係機関などと連携した人材確保支援を実施する。そのなかで、「人材確保対策コーナー」を中心にハローワーク利用者に対してCCUS制度を周知するとともに、建設業の就職を希望する求職者に対してCCUS登録済み建設事業主の求人情報を提供して応募を推奨するなど、建設業における人材確保に対して積極的な支援の取り組みを行っていくとしている。

(つづく)

【内山義之】

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