N会　著名な経営学者を招いての講話に、参加者は大いに示唆を受ける

　「N会」は2007年に立ち上げられた福岡の中小企業の異業種交流会。会では毎回、講師を招いての講話と、その後の懇親会で参加者同士の親睦を図る。参加費はリーズナブルな5,000円。毎回80名程度の参加者があり、毎月開催されている。

　10月8日には、元日銀の著名な経営学者による講話が行われた。概要を紹介したい。

　講師は、日本の「失われた30年」を総括して次のように指摘した。バブル崩壊後の日本は、経済回復のための挑戦（規制緩和やインターネット革命）ではなくコストカットに進んだ。一方で、米国は製造業からサービス業、金融業へと転換し、日本の大企業は円高や人口減少を理由に国内投資よりも海外展開を優先した。また、政府は民間投資を促進すべきだったが、増税や金融政策に依存し、日銀も低金利政策を長期にわたり続けたことが、日本の長期的な停滞を招いた。

　現在の日本は、企業の国内回帰や海外企業の日本への進出などの兆しが見られ、これを反転攻勢のチャンスにできるかが鍵になる。来る11月の米大統領選、中国経済のソフトランディングが今後の経済に影響を与える。

　日本の今後の課題としては、金融政策の正常化と、経済ダイナミズムの回復が重要であるとし、人口減少への対策として移民についての議論と正面から向き合う必要があると指摘した。

　過去の総括とともに未来に向けた重要な指摘に満ちた講話は、参加者を大いに刺激していた。

　毎回、実りある講話と参加者同士の親睦が深められるN会の役割には、ますます期待が高まっている。

【寺村朋輝】