2024年11月22日( 金 )

立憲、福岡県の都市部中心に躍進~変化を求める国民の声

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 27日に投開票された衆院選で、福岡県内11小選挙区のうち、自民党が7議席を維持あるいは奪還したが、2、10、11区では野党系に敗れた。「政治とカネ」をめぐる問題に対する有権者の反発は強く、福岡でも政権批判票が野党に流れた。

武田氏落選の衝撃

 今回の選挙は、自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる収支報告書への不記載について、「裏金」と大きな批判が巻き起こるなか、多くの有権者が、自民党に「お灸」をすえる必要があると判断を下したものであることは間違いない。

 とくに、福岡11区では、8期目を目指した自民党重鎮の武田良太氏が、日本維新の会新人の村上智信氏に敗れ、福岡のみならず全国に激震が走った。武田氏は自民党県連元会長で、総務大臣や国家公安委員長も歴任し、旧二階派事務総長も務めたベテランである。

 今回の結果は、政治資金収支報告書の不記載で、党より役職停止1年の処分を受けた影響が大きいが、選挙区自治体の行政をめぐる問題も少なからず影響したと指摘する地元関係者の声もある。選挙戦では、田川市の村上卓哉市長が村上氏を応援し、保守系地方議員のなかにも、村上氏を支援する動きが広がるなど、武田氏の政治手法に対する批判が強いことがうかがわれた。

 維新の村上氏は、企業・団体献金の禁止などを掲げたことで、自民党の体質に不満を持つ層に支持を広げたといえる。

都市部は無党派層が鍵

 一方、都市部でも変化が顕著に表れた。福岡2区は、立憲民主党前職の稲富修二氏が、自民党前職で防衛副大臣を務める鬼木誠氏を制して、2012年の衆院選以来5回目の対決にして初めて小選挙区で議席を得た。雪辱をはたした稲富氏だが、福岡2区は県内でも無党派層が多く、なかでも中央区は毎年、住民の4割が入れ替わる地域でもある。

 双方にとって無党派層への訴求がカギであったが、政治とカネの問題に対する有権者の反発は大きかった。集会の参加者をみると、スーツを着用した組織・団体の関係者が多い鬼木氏に対し、稲富氏の集会では、子ども連れの若い世代の参加が目立った。経済状況が年々悪化し、可処分所得が増えず、物価高など暮らしへの影響が、「自民党長期政権にもはや期待できない」という市民の声として顕在化したといえる。

 ただ、今回の選挙は、争点が自民の「政治とカネ」問題に集中したことで、政策論争があまりみられず、投票率からもわかるように今ひとつ盛り上がりを欠いた。野党にとっては、チャンスだったが、各選挙区で候補者が乱立し、小選挙区で勝つための要件である候補者一本化は福岡5区以外ではできなかった。

 立憲・国民両県連は連合福岡の仲介のもと選挙区調整を行い、連携を図ったが、両党の政策にも公務員労組と民間労組の考え方に相違があり、思ったほど協力関係が深まらなかった。それでも旧民主党に淵源を持つ両党の調整が行われたことの意義は大きい。

 北九州市がエリアである9区、10区は、昨年2月の市長選のしこりが残ったなかでの選挙戦となった。9区は、麻生太郎氏の反対もあり、自民党本部が候補者を擁立せず、保守系の前市議・三原朝利氏が立候補したが、野党系の緒方林太郎氏が圧勝した。10区は保守分裂となり、立憲の前職・城井崇氏が議席を守った。

政治家は自らを律せよ

 全国的にみると、自民党の支持分布は西高東低で、福岡を含めた西日本は自民の議席獲得が多い。しかし、今回の選挙では九州に絞ってみても、佐賀県は1区、2区とも立憲が制し、鹿児島県では、4選挙区のうち、2選挙区を立憲が押さえるなど、保守王国においても野党系が根付いてきている。

 残念だったのは、福岡県の投票率が、51.59%と、前回(21年)衆院選の52.12%から、わずかとはいえ下がったことである。報道やSNSでは、衆院選について、さまざまな情報が発信されたが、投票率をみると「政治に関心が高まった」とまではいえない。

 今回の投票は、国民の「変化を求める意思」を示すチャンスであった。投票を棄権した人が国民の半分弱もいたことは、裏を返せば、政治が長きにわたり一部の人間だけで動かされてきたということでもある。

 公明党の議席が各地で失われ、党代表の落選という事態も起きた。組織団体のなかでも、手堅い集票力を有していた宗教団体においても、世代交代が進み、かつてのような力が失われたということだろう。

 今回の結果は、変化を求める声の存在を浮き彫りにした。政治を変えるには、主権者である国民の意識が重要であり、いかにして政治への関心を高めていくかが重要である。何より、政治家は、国民の代表として自らを律し、国民の信頼を失わない行動をとる必要がある。

【近藤将勝】

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