2024年12月12日( 木 )

往復割引・連続乗車券・連絡乗車券廃止について(後)

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運輸評論家 堀内重人

 JRグループは2日、2026年3月で往復乗車券・連続乗車券やJR各線と連絡会社線に跨る連絡乗車券も含めて、廃止することを発表した。往復乗車券が廃止されることにともない、片道の乗車km数が601kmを超えた場合に適用される“往復割引”も、廃止されることになった。連続乗車券やJR各社との連絡乗車券も廃止が予定されており、「青春18きっぷ」の改悪時と同様に、SNS上ではまた騒動になっている。これらの乗車券が廃止される背景を分析すると同時に、JRに対する負の効果についても言及したい。

JRのデメリット

JR 切符イメージ    往復乗車券・連続乗車券・連絡乗車券などを廃止すれば、みどりの窓口を削減できる。JRは、経費削減が可能であると考えている。しかし、割安で便利な乗車券類を廃止することはJR離れを進め、旅行を取りやめるケースが増えるなど、JRにとって減収になる危険性もある。

 ビジネスマンの出張は前日の夕方になって決まることが多く、ネット割の企画乗車券では対応できないこともある。また東京~広島間の出張の場合は航空機が旅費として支給されない企業もあるだけでなく、広島空港は広島市内から自動車で1時間程度も要するため、新幹線を利用する人も多い。

 往復割引を廃止すると、東京~広島間を出張で利用するビジネスマン客を逃す危険性がある。東京~広島間は800km以上離れているため、往復割引が適用される。また東京~広島間は、新幹線を利用する場合、新大阪を境界にJR東海とJR西日本に跨ることから、ネット割の乗車券などは設定しづらい。

 連続乗車券は、ビジネスマンが利用することは少ないが、学生やリタイヤした人たちが利用する。この乗車券を廃止すれば、学生やリタイヤした人たちの利用が減少する可能性が高い。

 連絡乗車券に関しては、大都市圏内であれば、交通系ICカードが普及しているため廃止しても影響は少ないが、特急列車が乗り入れるか通過する線区であれば、廃止すると利用者が困る他に、JRが乗り入れる民鉄も困ることになる。

 例を挙げて説明すると、名古屋~新宮間や名古屋~鳥羽間は途中に伊勢鉄道を、特急「南紀」や快速「みえ」が通過する。名古屋~新宮間や、名古屋~鳥羽間の乗車券が購入できなければ、利用者だけでなく鉄道事業者も利点がなくなってしまう。連絡乗車券に関しては、特急列車などが乗り入れるか、通過する線区では、継続させる必要があるといえる。

総括

 JR線は、航空機や高速バスのような「線」の移動ではない上、グループによるネットワークが形成されているため「面」の移動も加わり、ネット割やネット購入には適さない。また運賃以外に料金券なども必要となるため、制度も複雑になる。それゆえ、みどりの窓口は不可欠である。さらに、中高年の利用者は紙製の乗車券類がないと不安になる上、スマホ決済などは抵抗がある。

 最近のJRは、利用者のことを無視して要員合理化を優先する傾向が強い。「労働者不足」を口実にするが、みどりの窓口が無ければ乗車券類を購入する機会が減ることにもつながる。嘱託職員を活用するなどしてみどりの窓口を復活させ、往復乗車券・連続乗車券・連絡乗車券の販売も継続させる必要がある。

(つづく)

(中)

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