船井電機 魑魅魍魎が跋扈する倒産劇の奇々怪々(後)
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「魑魅魍魎が跋扈する」。これは得体の知れない人たちが好き勝手に振る舞うことを指す。AV機器メーカー・船井電機の倒産劇は、奇々怪々な出来事の連続だ。まさに「魑魅魍魎が跋扈する」という表現がピッタリである。(文中敬称略)
上田体制下の取締役を一新
経営が大混乱するなか、9月27日付で上田智一は船井電機の社長を退任し、10月3日までに外部から入り込んでいた取締役も一新。新経営体制では、新社長に元財務省理財局次長の上野善晴、代表取締役会長には元環境相の原田義昭が就任した。
船井電機の親会社、船井電機・ホールディングス(HD)の代表取締役には古寺誠一朗が9月27日付で就任。船井電機HDは10月31日付でFUNAIGROUPに商号を変更し、本店を大阪から東京に移転している。
船井電機のホームページに上野善晴の名前はない。魑魅魍魎が巣くう船井に恐れをなして辞退したのだろう。なお、古寺は船井電機の取締役の欄に記載されている。
消えた300億円の行方
そして10月24日、創業家出身の取締役である船井秀彦が、船井電機の準自己破産を申し立てた。報道各社は、破産申立書に基づき、「船井電機から約300億円の資金が流失していた」と一斉に報じた。
秀和システムによる船井電機買収の際、〈秀和側がりそな銀行から借り入れた180億円は、船井電機の定期預金が担保とされ、今年5月、回収されていた〉(読売新聞オンライン10月30日付)。秀和側が船井電機の資金で買収し、買収以降、船井電機から約300億円の資金を引き出していたのだ。
TBSの報道番組「NEWS23」(11月30日放映)は、上田前社長の話として「消えた300億円」の内訳を報じている。それによると、●船井電機買収で銀行への返済の180億円、●創業者の息子への自己株買い44億円、●創業者の息子への返済27億円、●M&A資金と関連会社への貸し付け50億円。
会長の原田元環境相は統一教会をめぐる発言で物議
魑魅魍魎が群がる船井電機に、畑違いの人物が登場して、驚かせた。船井電機の代表取締役会長に就いた自民党元衆院議員の原田義昭である。
原田は福岡県山田市(現・嘉麻市)生まれ。東京大学法学部を卒業、新日本製鉄(八幡)に入社。通産省に転じ、渡辺美智雄通産大臣の秘書官を務めたことから政治家を志す。1990年、衆院選で初当選。2018年に安倍内閣で環境相として初入閣をはたした。選挙区は福岡5区で麻生派に所属。21年に衆院選で落選し、国政から引退。弁護士に転じた。
原田といえば、旧統一教会をめぐる発言で物議を醸した。朝日新聞デジタル(23年8月1日付)の取材で〈旧統一教会から派遣された運動員について、「お金をかけずに良質な運動ができる」と述べた〉という。
会長になると知らされず
自民党元衆議院議員の原田が、なぜ魑魅魍魎が跋扈する船井電機の会長に就いたのか。これも船井のドタバタ劇のミステリーの1つだ。産経新聞(11月19日付)のインタビューで原田はこう語っている。
〈(原田氏が経営する)弁護士事務所には船井の関係者も出入りしている。「なかなか経営がきつい」というから「今どき楽な企業はどこにもねえぞ」といっていたら、8月末に「側面から応援してください」と。困っているのを助けるのは当然だからな。顧問弁護士か会社顧問かと思い、引き受けた〉
9月27日の役員会で船井の会長に就任した。
〈びっくりした。この役員会で前社長(注:上田)が辞めるという話は聞いていたが、自分がどうなるかは知らされていなかった〉
10月24日、創業家出身の取締役である船井秀彦が、取締役会を経ずに、船井の準自己破産を申し立てた。
〈全く寝耳に水だった。ほかの役員らも(申し立て直前の)2、3時間前に知ったようだ。(中略)なにか周到に練られた計画だと感じる〉
海千山千の事件師たちが、原田を「スケープゴート」として経営責任を押し付けた格好だ。だが、原田は押し付けられようと、尻尾を巻いて退散するようなヤワな人物ではない。
「義を見てせざるは勇なきなり」。政治家の血が騒いだようだ。「従業員を守る」を大義名分として、10月30日、「民事再生が妥当」と即時抗告した。
「令和のイトマン事件」と称される船井の闇
原田は船井の再生に乗り出したが、すでに経営権は「1円」で「EFI株式ファンド」に売却されている。買収した株式ファンドとは何か。
アングラ情報に強い「アクセスジャーナル」(11月29日付配信)は、〈EFI株式ファンドの実印と通帳を預かり、裏で事を運んだのが古寺誠一朗氏だった〉と報じた。
古寺は、船井の親会社、FUNAIGROUPの代表取締役に就いた経営コンサルタントだ。その狙いは〈善意の第三者に15億円ほどで叩き売る計画があった〉という。
具体的な動きがあった。各社の報道によると、破産会社・船井はテレビ事業を中国家電大手のスカイワースと売却交渉を始めた、という。解雇された従業員の未払い給与や税金の支払いに充てる。
船井の再生を唱える会長の原田と、船井のテレビ事業を叩き売る親会社の代表取締役の古寺の対立という構図だ。それにしても不可解な出来事が多すぎる。
船井電機の倒産事件は、魑魅魍魎が跋扈しており「令和のイトマン事件」と揶揄されている。はたして、その舞台裏が解明される日がくるのだろうか。
(了)
【森村和男】
法人名
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