韓国経済に金融危機の懸念(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏急激なウォン安が止まらない
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は12月3日夜、緊急談話を発表し「戒厳令」を宣言した。国会の解除要求によって戒厳令は6時間後に解除されたものの、突然の戒厳令宣言に韓国国民は驚き、政局も混迷している。その結果、ユン大統領の支持率は急落し、10%台にとどまっている。
韓国国民は、このような事態が長期化すればするほど、韓国経済に甚大な影響を与えると考えている。そのため大統領の業務を停止させるべく、国会議員3分の2以上の賛成でユン大統領の弾劾案を可決させた。しかし、ユン大統領は戒厳令の正当性を主張しており、弾劾まで政局は混乱が続きそうだ。
そのような状況下、韓国経済を懸念する声が高まっており、とくに、韓国の政治が不安定化することにより金融市場に動揺が広がっている。韓国は1997年のアジア通貨危機と、2008年の世界金融危機を経験しており、金融危機に対するトラウマがある。韓国で対ドルの為替レートが1,500ウォン台を記録したのはアジア通貨危機の時と、世界金融危機の最中であった09年3月だった。ところが最近、韓国為替市場でウォンの対ドル為替レートは1,450ウォンとなり、金融危機が再燃するのではないかという懸念が高まっている。
韓国政府はウォンの急落を阻止するため、為替介入をすると思われるが、為替介入をすると、外貨保有高が目減りするので、思い切った為替介入もできない状況である。韓国銀行によると、韓国の外貨保有額は、4,153億9,000万ドル(10月基準)で、今年だけで47億6,000万ドルが減少している。今年上半期のウォン安を阻止するために76億1,000万ドルが使われ、その一部は外貨保有高であった。
しかし、問題は今後もウォンの価値が上がるような要因はほとんどなく、ウォン安が定着しそうだということだ。米トランプ大統領が公約通り関税をかけると、韓国の輸出は減少し、ドルの需要が増えることになるので、ウォン安要因となる。為替介入以外にウォン安を止める方法がないことが当局者の大きな悩みである。産業界では「1ドル=1,500ウォン台」入りを警戒する声が強い。
それでは、なぜウォン安が急激に進んでいるのか。今月18日、連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を0.25%引き下げることを発表した。しかし、パウエル議長は今後、金利引き下げの速度を緩め、来年の金利引き下げは2回にとどめるという発言をし、その結果、ドル高という結果となった。米金利だけでなく、韓国の政局不安、輸出の減少予想などが相まってウォン安は進んでいる。
(つづく)
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