2024年12月24日( 火 )

韓国経済に金融危機の懸念(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

巨額の負債が金融危機の引き金になる可能性

 韓国経済の二大課題は、輸出の減少と莫大な負債額である。収入が減少している状況で負債が多く、高金利で苦しんでいる家計のようなものだ。韓国銀行の統計によると、11月末の韓国の家計・企業・政府の負債合計額は、何とGDPの2倍を上回る5,800兆ウォンであることが明らかになった。そのなかで政府債務は1,190兆4,000億ウォンである。文大統領時代に政府債務が急激に増え、朴大統領時代の政府負債の2倍ほどに増加した。

 一方、企業負債は昨年末時点で2,734兆ウォンとGDP対比で122.3%となっている。19年に企業負債はGDP対比で101.3%であったが、コロナ禍を経て、急激に増加した。

 最後に韓国経済危機の導火線になり得ると言われている家計負債についてである。第3四半期末の家計負債額は、1,913兆8,000億ウォンである。韓国の家計負債の8割以上は、住宅ローンで占められている。家計負債がすぐ金融危機につながるような状況ではないが、金利が高くなったことによって、消費できる金額が減少していることは間違いないので、消費が冷え込むのは必至である。それが統計にも如実に現れている。小売販売額の前年同期比増減率は、22年4~6月期から24年7~9月期まで10四半期連続でマイナスを記録中だ。家計負債は今でも増え続けており、これがまた消費に悪影響を与えている。

次の成長産業が見えないのが問題

韓国 ウォン イメージ    韓国は世界で一番大きな市場である中国に隣接しており、中国が成長する過程で韓国も恩恵を受けていた。しかし、今となっては、ほとんどの分野においてライバル国が韓国をしのぐようになってきている。

 中国というと安い労働力が魅力で、「安かろう悪かろう」を連想する人が多いと思うが、中国は核融合、陽子コンピューター、造船、電気自動車など、最先端分野において世界トップレベルに到達している。サムスン電子は中国にスマホと半導体を売っていたが、もはやサムスンのスマホは中国では売れていない。市場の規模が大きく、製造数の桁がいくつも違うので、中国と価格競争をすると、歯が立たない。以前は中国市場が輸出の4分の1を占めており、13年には628億ドルの貿易黒字を上げる貿易相手であったが、31年ぶりに貿易赤字を記録している。

 関税をかけあうなど、貿易環境が悪化してくると、貿易立国の韓国にとっては、試練となる。それが数字としても現れ、昨年のGDP成長率が1.4%という低成長時代となっている。

 次世代産業である車載電池に韓国の財閥企業はかなり力をいれ、莫大な投資をしていたが、EV市場が失速し、韓国の車載電池企業は苦境に立たされている。それに中国の電池企業の快走には、目を見張るものがあり、車載電池分野においても世界を制覇するのが難しいほど、中国の壁が高くなっている。ウォン安になるということは、韓国経済に対する魅力が減少し、ウォンの価値が下がっていることを意味する。

 韓国経済は経済の構造改革を含め、経済を立て直さないといけない時期に差しかかっている。そのような大事な時期に政治が混乱しているため、どのような結果になるのか、世界が注目している。

 韓国人はいくつかの試練を乗り越えてきたたくましい民族である。まだ次世代の成長産業が見えないのは残念だが、これを機に韓国経済の立て直しに取り組む時期でもある。

(了)

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