トリビュートの不動産再生(3)権利調整による開発用地の供給
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再開発に欠かせない
土地の「権利調整」都市には一定の新陳代謝が必要で、そのためには再開発が欠かせない。言わずもがな不動産において最も重要なのは、「立地」である。都心部において不動産開発を行う場合、埋立地などを除けばすでに土地を利用している所有者がおり、住宅やオフィスなどの建物があるケースがほとんどだろう。そのため、再開発を進めるためには、「権利調整」が必要となる。不動産再生を手がける(株)トリビュート(福岡市中央区)は、自社で不動産開発を行うケースは稀だが、デベロッパーへ開発用地を供給することを得意としている。
「不動産市場でも福岡は注目されており、続々と大手をはじめ県外資本のデベロッパーが参入しています。再開発も活発に行われており、それにより福岡のまちが拡大しているのを肌で感じているところです。JR南福岡駅や西鉄・雑餉隈駅の周辺におけるホテル開発は、これまでは見られなかった現象です。ここ数年の福岡のまちの拡張により、不動産市場で注目されているのが、博多・天神の周縁です」──トリビュートの田中稔眞社長は話す。
博多・天神の周縁 地価上昇が顕著に
本誌vol.77(2024年10月末発刊)でも特集した通り、24年の地価調査では博多の周縁「綱場町9-28」(18.0%増)、「神屋町10-19」(16.0%増)、「中呉服町4-26」(14.2%増)、「冷泉町5-32」(11.0%増)、天神の周縁「渡辺通1-12-9」(10.7%増)、「高砂2-6-23」(19.0%増)が基準地として選定されており、いずれも10%超の上昇となった。これらのエリアでは近年、活発に不動産取引が行われており、同社も力を入れている。
「神屋町や呉服町などといった博多旧市街エリアは、一部で開発規制があるものの、低利用の土地が多く残っています。単体では敷地が30坪以下の物件も多いのですが、たとえば隣地も取得することができれば、100坪以上のまとまった土地とすることも可能です。そうすれば、土地のポテンシャルを最大限に活用できるようになります」(田中社長)。
潜在ニーズを掘り起こす
このエリアは、博多駅から近いことに加えて地下鉄駅も複数あり、オフィスビル用地として見直しが進んできた。かつては小規模商店や戸建住宅がひしめき合っており、間口の狭い狭小地はいまだに多く残っている。
トリビュートのグループ会社・(株)TRホールディングスの専務取締役・永田誠氏は、「土地に求めるニーズは時代によって変わっていきます。とくに都市の中心部ではそれが顕著で、既存の建物を生かしてコンバージョンすることができる物件もありますが、間口や面積がネックとなり、隣地と合わせた一体開発が最適な物件も少なくありません」と話す。博多旧市街エリアだけでなく、「高砂や清川、春吉といった天神近接エリアにも力を入れています」(永田氏)といい、このエリアではホテルやマンション用地としてのニーズが高いようだ。
永田氏はさらに、「店主や住民の高齢化や相続発生のタイミングで、土地を手放す所有者も多く、売主さまからお問い合わせいただく機会も増えてきました。ただ、売却ニーズは顕在化しているものばかりではありません。所有者だけでなく、地場の不動産業者らとのコミュニケーションを密に行うことで、潜在ニーズを掘り起こすことが、当社グループの得意とするところです」と加えた。
地場ならではの地道な取得交渉
たとえば、20坪の土地を取得したとしても、活用法は限られる。隣地の買い増しによる敷地拡大が叶えば、オフィスビルやマンション開発といった土地の高度利用が可能となるが、所有者が法人でない限り、その意向を確認することは簡単ではない。取得した土地の前所有者やエリア内を得意とする地場の不動産会社らへのヒアリングを地道に行い、隣地所有者と接触することができた場合には、固有の事情を踏まえた売却のメリット・デメリット、かかってくる税金に関する情報などを伝えながら、取得に向けた交渉を行うのだという。
「デベロッパーのニーズを捉え、それが叶う土地を供給する。先ほど述べたような博多・天神周縁は、ニーズはあるもののまとまった土地が少なく、いくつかの土地を合わせることでしか開発用地は生まれません。当社グループは、地場で長く不動産再生に取り組んでまいりました。権利調整には、法令や地域に関する知識に加え、所有者とのコミュニケーションが必要で、これは地場企業が得意とすることです。非常に地道で時間もかかる事業ではありますが、福岡の発展にも貢献できる事業だとも考えております」(田中社長)。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中稔眞
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-1
サンセルコビル6F
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
TEL:092-292-2313
FAX:092-292-2314月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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