那覇市松山に夜間保育園が開所、幼児教育の未来に挑む若き起業家
-
11月、沖縄県那覇市松山に新たな認可外保育園「ビリーブ・ハウス」が開所した。この施設を運営するのは(株)アヴァンギャルド。同社代表取締役・福本将虎氏は1998年生まれの福岡出身で、松山との縁はない。また、保育事業は初挑戦であるにもかかわらず、この地で事業を展開する決意をした背景にはどのような思いがあるのだろうか。
福本氏は18歳頃から起業家を志し、大学進学後もインターンシップや業務委託契約を通じて精力的に活動を続けた。しかし、学業の意義に疑問を感じた末、退学を決断。九州産業大学のオープンイノベーションセンターで学生の支援を行う一方、個人事業主としても多岐にわたる活動を展開していた。
しかし、2年前にうつ病を発症し、一時は働くことも困難な状況に追い込まれた。それでも、「必ず立ち直れる」という信念を胸に回復をはたした。この信念の背景には幼少期に受けたモンテッソーリ教育の影響があると語る。モンテッソーリ教育とは、20世紀のイタリアで生まれた、子どもの自分を育てる「自己教育力」をサポートしていく教育法。福本氏はこの教育が、独自のキャリア形成や病気からの復帰に大きく影響を与えたと考えた。
幼児教育の重要性を認識した福本氏は、保育の「質」を重視した事業の必要性を痛感した。しかし、これまで日本では待機児童対策が優先され、保育の質の向上は後回しにされてきた現状がある。この課題に挑むべく、福本氏は松山で事業譲渡を希望していた保育園に注目し、交渉を開始。2024年4月に譲渡契約を締結し、クラウドファンディングなどを通じて資金を確保。約半年の準備期間を経て、11月に「ビリーブ・ハウス」をプレオープンした。
沖縄県では子どもの相対的貧困率が15年調査時点で29.9%と全国平均の13.9%を大きく上回り、母子世帯率も20年時点で全国最高の2.22%を記録している。さらに、23年の平均賃金も全国平均を下回る265万円にとどまり、教育費を十分に確保できない家庭が多いとされる。とくに、約1,000軒の飲食店が立ち並ぶ松山地区では、夜間に働く女性が多く、そういった女性のなかにはシングルマザーや早期出産を経験した人も少なくない。こうした女性たちの子どもを預けるための保育園が必要とされている一方、利用料金を抑えざるを得ない結果、人件費や運営費に十分な資金を割くことが難しく、保育の質が低下する現状が課題となっている。こうした背景から、福本氏は夜間保育を提供しながらも、モンテッソーリ教育のエッセンスを取り入れた教育環境を実現することを目指した。
実際、同保育園を訪れた見学者からは「一日預けただけで子どもの言葉の数が増えた」という声も寄せられている。同社のビジョンは「優しい革命家を輩出する」、ミッションは「子どもたちに根拠のない自信を育む」というもの。自己肯定感を育むことで、社会に前向きな行動を起こせる子どもを育てることを目標としている。
現在、「ビリーブ・ハウス」はプレオープン中であり、今後営業日を拡大し本格的な運営を予定している。また、スポンサー企業も募集中だ。福本氏は「私たちの取り組みは保育園の運営というスモールビジネスでありながら、社会全体を見据えたソーシャルスタートアップとしての側面をもちます。松山の小さな保育園を幼児教育の新たなロールモデルとしていきたい」と思いを語った。「ビリーブ・ハウス」の活動を支援することは、日本社会の未来を明るくする一助となるだろう。この若き起業家が起こす新しい革命の風に注目してみてはいかがだろうか。
【岩本願】
<INFORMATION>
認可外保育園ビリーブ・ハウス
運営主体:(株)アヴァンギャルド
代 表 :福本将虎
園 長 :比嘉麻里萌
住 所 :沖縄県那覇市松山2-26-16
営業日 :金曜、土曜
営業時間:午後6時~翌午前8時
H P :https://believe-house.com/法人名
関連記事
2024年12月20日 09:452024年12月19日 13:002024年12月16日 13:002024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す