2024年12月27日( 金 )

福岡再開発2025 次々完成迎える天神ビッグバン(前)

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 2015年2月に始動した再開発プロジェクト「天神ビッグバン」が、開始から間もなく10年を迎えようとしており、いよいよ佳境といった状況となっている。

 これまでに本誌でも再三取り上げてきたが、天神ビッグバンは高さ制限と容積率という2つの規制緩和や天神ビッグバンボーナス(以下、天神BBB)を含めた優遇制度により、更新期を迎えたビルを耐震性の高い先進的なビルへと建て替えることを誘導していくことを目的としたプロジェクトだ。当初は、24年度(25年3月末)までに30棟の民間ビルの建替えを誘導して延床面積を1.7倍に拡大するとともに、雇用を2.4倍に拡大して、約2,900億円の建設投資効果と、建替え完了後からは新たに毎年約8,500億円の経済波及効果を見込むとしていた。

 だが、コロナ禍を受けて、福岡市は20年8月にビルの「換気」「非接触」「身体的距離の確保」「通信環境の充実」などの感染症対策などを盛り込んだ取り組みを誘導する方向性を新たに策定。福岡市を世界に先駆けた「感染症対応シティ」へと変貌させていくべく、感染症対策などの取り組みを実施するビル計画には、市独自の容積率緩和制度を拡充することで容積率が最大50%上乗せされるとした。

 また、コロナ禍による経済活動の停滞を受けて、当初24年度(25年3月末)までだった天神BBBの竣工期限を、26年12月末まで延長。こうして天神ビッグバンのプロジェクト期間は、当初の10年間から約2年間延長されて、12年間となった。

 これまでに天神ビッグバンにおける大規模プロジェクトとしては、「天神ビジネスセンター」(21年9月竣工)、「福岡大名ガーデンシティ」(22年12月竣工)の2棟のビルが完成・開業を迎えている。そのほか、天神ビッグバンエリア内における建築確認申請数は73棟(15年2月~24年3月末)、竣工棟数は58棟(24年3月末時点)となっている。

 スタートからまもなく10年が経とうしている天神ビッグバンだが、当初の竣工期限である25年3月末を目前に現在、新たな大規模再開発ビルが次々と誕生しようとしている。

ONE FUKUOKA BLDG.

 天神交差点の一角においては、西日本鉄道(株)が開発を進める「ONE FUKUOKA BLDG.」(略称:ワンビル)が竣工し、間もなく開業を迎えようとしている。

 同プロジェクトは「福岡ビル」「天神ビブレ」「天神コア」の3棟のビルを建替え、街区全体を1棟の大型複合ビルとして一体開発する「福ビル街区建替プロジェクト」としてスタートしたもの。開発コンセプトとして「創造交差点~meets different ideas~」を掲げ、福岡市が推進する天神ビッグバンに寄与するとともに、商業・ビジネス・ホテル・カンファレンスなど多様な機能を網羅する、九州屈指の規模を誇る大型複合ビルだ。敷地面積約8,600m2に、地上19階・地下4階・塔屋1階建、延床面積約14.7万m2の建物ができる計画で、地下および低層階が商業フロア、中層階がオフィスフロア、高層階がホテルフロアとなる。

ONE-FUKUOKA-BLDG.
ONE-FUKUOKA-BLDG.

    天神地下街や地下鉄コンコースに直結する地下2階には、オーガニック食材を取りそろえたスーパーマーケットや、ワーカーが日常使いできるテイクアウト店舗、カフェ、ドラッグストアなどが出店。地下1階には天神エリア最大級の客席数を誇るフードホールや、ワーカーが仕事帰りにふらっと立ち寄れる天神のれん街が入る。地上1~4階にはファッションや服飾雑貨、生活雑貨、スポーツ、アート、カルチャー、書籍などのテナントが入り、地上5階には食堂としては天神最大級の209席を有する「天神福食堂」が入る。また、ホテルについては21年12月、西鉄が(株)Plan・Do・Seeとホテルマネジメント契約を締結したと発表され、24年4月には新ホテル名称が「ONE FUKUOKA HOTEL 」と発表された。さらにオフィスフロアでは、1フロアの面積が西日本最大級の1,400坪かつ天井高3mの大規模無柱空間を計画している。

 21年11月には福岡市の「天神ビッグバンボーナス認定」を取得して容積緩和制度の適用を受け、21年12月に着工。現在、24年12月末の建物竣工および25年4月24日の開業に向けて、着々と開発が進んでいる。

ONE FUKUOKA BLDG.
事業主 :西日本鉄道(株)
敷地面積:約8,600m2
延床面積:約14万7,000m2
規 模 :地上19階・地下4階・塔屋1階建
用 途 :商業、オフィス、ホテル、カンファレンスほか
建物高さ:約97m
竣 工 :2024年12月末(予定)

天神ブリッククロス

 日本生命保険(相)(以下、日本生命)と積水ハウス(株)が共同で開発を進める「天神ブリッククロス」も、間もなく竣工を迎えようとしている。

天神ブリッククロス
天神ブリッククロス

    天神ブリッククロスは、昭和通り沿いにあった「福岡三栄ビル」(所有:積水ハウス)と、その南側に隣接する明治通り沿いの「日本生命福岡ビル」(所有:日本生命)の2棟のビルを解体して一体開発を行っているもので、北棟(地上18階・地下2階・塔屋1階建)と南棟(地上13階・地下2階・塔屋2階建)の2棟で構成される。

 北棟の地上2~18階(2階がオフィスロビー)と、南棟の地上3~13階(3階がオフィスロビー)はオフィスフロアとなるほか、各棟の地下1階~地上2階にかけて商業店舗なども入る予定。建物としては近隣にある赤煉瓦文化館や天神地下街のような、重厚で風格のある佇まいを次世代に継承する外観デザインを採用しており、地下鉄コンコースに接続する明治通り側の地上地下立体広場や、昭和通り側の地上広場には、ランドマークとなる壁面緑化や赤煉瓦文化館をモチーフとしたクラシカルな化粧壁、高さ8m以上のシンボルツリーなどを配置し、憩いや風格のある広場空間を創出していくとしている。

 さらに、明治通りから昭和通りをつなぐ新たな都市計画道路天神通線と⼀体となった幅員8mのゆとりあるプロムナード(歩行者空間)を形成するほか、地上から地下までつながる壁面緑化を配置。緑と相性の良いレンガ積の列柱やプロムナードに面したカフェ、ベンチの配置などにより、来街者やオフィスワーカーが憩い、楽しめる空間を創出する。

 同ビルも21年12月に天神BBBの適用を受け、22年12月に着工しており、25年4月の竣工を予定している。

天神ブリッククロス
事業主 :日本生命保険(相)/積水ハウス(株)
敷地面積:2,707m2
延床面積:3万7,048m2
規 模 :【北棟】地上18階・地下2階・塔屋1階建
     【南棟】地上13階・地下2階・塔屋2階建
用 途 :オフィス、商業等
建物高さ:約86m
竣 工 :2025年4月(予定)

(つづく)

【坂田憲治】

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