【BIS論壇No.468】衰退続く日本経済
-
NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は12月27日の記事を紹介する。2024年度のGDP(国内総生産)に関し、12月25日、政府は実質成長率を0.4%と下方修正。輸出と設備投資が伸び悩んだことが原因だとしている。11月の試算で、0.9%から0.6%に引き下げたばかりだが、さらに下方修正した。GDPの半分を占める個人消費の押し上げ幅は0.1%程度と試算。上昇を続ける消費者物価指数(生鮮食品を含む)の上昇率の見通しを2.5%と予測。物価上昇は実に39カ月連続だ。なかでも主食のコメ類は63.6%と過去最大の上昇率を記録。庶民とくに低所得層を直撃している。
かかる状況下、内閣府が12月23日に発表した国民経済計算の年次推計によると、日本の23年の1人あたり名目国民総生産は3万3,849ドルで、お隣の韓国にも抜かれ、OECD(経済協力開発機構)加盟国中22位に後退。G7(主要先進国7カ国)中で最下位となった。内閣府は円安に加え、高齢化による成長力低下や労働生産性の低さが足かせとなっていると分析している。しかし情報(Information)を提供しているだけで、情報を分析し、Intelligenceに高めた対策を何ら提示していないのは無責任ではないか。
かつて世界に冠たる通産省(現・経済産業省)は日本のシンクタンクとして、経済企画庁ともども日本の将来戦略、経済戦略、輸出戦略を樹立し、すばらしい実績を上げ、1990年代から2010年代にかけて日本はGDPで米国を追い詰め、世界2位の位置を占めた。それが23年までの10数年で、ドイツはおろか22~23年には韓国にも抜かれ、25~26年にはGDP総額でインドに抜かれるのも時間の問題だとみられている。
日本の名目GDP総額は23年、4兆2,137億ドル。世界のGDPに占める比率は4%と1990年代の16%から4分の1に低下。25.9%の米国、16.8%の中国、さらには4.3%のドイツに逆転された。内閣府の試算では1ドル140.5円においている。しかし現在150円台ゆえ、日本の為替によるGDP押し下げはさらに拡大する可能性が高い。このままでは2024年には1人あたり名目GDPで台湾にも抜かれる公算大だ。
加えて、日本の23年度の時間あたり労働生産性は56.8ドルで、韓国、台湾にも大きく後れを取り、OECD加盟国中29位と下位にある。このままでは日本の衰退は止まらない。
日本は自民党の裏金問題に明け暮れている場合ではない。30年を見据え、日本の衰退、低落をいかに防ぐか、日本の将来を見据えた政官民の真剣な、高齢化対策、生産性向上、デジタルトランスフォーメーション(DX)、AI(人工知能)活用やリスキリングなど、今ほど日本国家100年の大計が要請されているときはない。国家をあげて日本の総合戦略確立に邁進することが肝要だ。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。関連キーワード
関連記事
2025年1月3日 06:002025年1月2日 06:002024年12月20日 09:452025年1月7日 12:302024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す