JR九州初代社長 石井幸孝氏の大きな足跡
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九州旅客鉄道(株)(以下、JR九州)の初代社長・石井幸孝氏が故郷の東京へ居を移された。長年、九州経済界のために尽力し、大きな足跡を残した同氏の業績を振り返る。
石井氏は1932年10月、広島県呉市生まれ。東京都立新宿高等学校を経て、55年に東京大学工学部を卒業し、旧国鉄に入社した。技師として蒸気機関車の補修、ディーゼル車両設計などを担当。85年、常務理事・首都圏本部長に就任し、国鉄分割・民営化に携わった。86年、九州総局長として赴任。翌87年に発足したJR九州の初代代表取締役社長に就任した。97年会長就任、2002年に退任した。『国鉄―「日本最大の企業」の栄光と崩壊』(中公新書、2022年)をはじめ著書多数。
JR九州─赤字鉄道から稼ぐ企業へ
石井氏の最大の功績は、民営化時に慢性的赤字鉄道(3島会社)の1つとして経営安定基金の拠出対象となったJR九州を、安定した経営基盤を持つ九州の最優良企業として地位を確立させたことだ。その特色ある取り組みとしては以下の3つが挙げられる。
1. 経営再建と多角化戦略の推進
石井氏は国鉄分割民営化後のJR九州について、鉄道事業だけでの黒字化が難しいと判断し多角化経営を推進した。不動産、マンション、駅ビル、飲食、農業など多岐にわたる事業を展開し、これらの関連事業がJR九州の収益の柱となった。2. デザイン戦略の導入
鉄道のイメージ刷新を図るため、デザイナーの水戸岡鋭治氏を起用し、1995年に883系電車「ソニック」を世に送り出した。これ以降の、デザインに趣向を凝らすJR九州の高速鉄道のイメージを定着させ、次々とデザイナー特急を生み出すブランド戦略の基礎になった。3. 観光列車の開発
地域活性化と観光需要の喚起を目的に、「ななつ星 in 九州」などの観光列車を導入した。九州各地の魅力を発信し、地域の観光業界とJR九州の連携を強化した。福岡城の天守復元に向けた活動に尽力
石井氏は、たいへん柔らかい東京山の手の上品な語り口で聞き手を魅了した。その言葉を近年最も多く聞く機会があったのは「福岡城天守」についての話題である。
石井氏は、24年に発足20周年を迎えたNPO法人「福岡城・鴻臚館市民の会」の理事長として尽力し、福岡城の天守復元に並々ならぬ熱意で臨んだ。
昨年には福岡商工会議所が事務局を務める「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会(ふくふく懇)」の委員をつとめた。当懇談会の発足にあたっては、福岡商工会議所の谷川浩道会頭が、「石井さんの長年の熱意にほだされた」と語った通り、石井氏は機会のあるごとに、福岡にとって福岡城天守復元がいかに重要であるかを説いて回り、福岡財界に福岡城天守に注目させる種を播き続けた功績は大きい。
ふくふく懇が昨年中に報告書と提言を取りまとめて、今年に福岡市長へ提出する道筋がついたことが1つの区切りとなった。
石井氏が残した大きな足跡は、大きな経済的指針としてこれからも福岡・九州を導き続ける。
【寺村朋輝】
故郷(東京)に凱旋帰京する石井氏にただただ感謝
「江戸っ子」で、これほど献身的に博多・福岡に貢献した人物が石井幸孝氏のほかにいただろうか。間違いなく、いないであろう。
1986年、JNR(日本国有鉄道)総局長として九州に赴任し、翌年、JR九州初代社長に就任した。ここから福岡・九州との深い縁ができ、この地区の活性化のために全力投球してきた功労者である。
昨年11月だっただろうか。石井氏は「N会」の勉強会に講師として招かれた。「西九州新幹線の将来」をテーマにした1時間(結果的に1時間半)の講演を聞いたが、1時間半の間、言葉に詰まることなく、固有名刺もスムーズにでてくるのには恐れ入った。すでに御年92歳、驚異的な記憶力である。
ただ経緯を知らない人は「石井さんの傑出した頭脳には兜を脱ぐ。ただ足の衰えはいかんともしがたいな」と漏らす。「いや、あれは老化ではないのよ。石井さんのスキーの腕前はプロ級で資格ももっている。毎冬2回、スキー同行者を北海道に連れて行った。そのときに膝の関節を骨折したのさ。その後遺症だよ」と説明した。それを聞いた人は「最近(90歳近く)までスキーツアーに行っていたの!」と驚嘆の声を上げた。
月1回は来福
活動拠点を福岡から故郷である東京に移す決断をしたのは「福岡城天守閣」問題におおかたのメドを付けられたからである。本人からは「月1回は仕事で来福するから、大いに飲もうや!」と言われたので、早速、2月13日に「肉食う会」を企画した。興味のある方は問い合わせしてほしい。
【児玉直】
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