2025年01月15日( 水 )

韓国建設大手の新たな活路、小型原子炉(SMR)(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

脱炭素は時代の要請

イメージ    パリ協定の発効後、世界的に脱炭素を目指す動きが強まっている。脱炭素に向けた動きが強まっていけばいくほど、化石燃料を使用する火力発電への依存度を減らし、再生可能エネルギーにシフトすることが各国には求められている。

 しかし、再生可能エネルギーは、電力供給が不安定だというデメリットがある。そのため現在、脱炭素の有力手段として検討されているのが小型モジュール原子炉(SMR)である。実際、Googleは昨年10月14日、米国次世代原子力発電のカイロス・パワーのSMRから電力を購入する計画を発表。アマゾンもワシントン州のエナジー・ノースウェスト、バージニア州のドミニオン・エナジー、およびXエナジーとSMRプロジェクトの推進に向けて契約を締結したと発表するなど、SMRの実用化と普及の加速が期待されている。

 そのような状況下、韓国の大手建設会社は新しい成長の足がかりとしてSMRの建設・施行に力を入れている。今回はSMRは普及するのか、課題はないのかを取り上げてみよう。

原子力が見直されている

 福島第一原発の事故以来、原発の危険性が露呈し、世界的に原発を排除する動きが強まった。ヨーロッパを中心に再生可能エネルギーに力を入れる国が多くなったが、再生可能エネルギーの導入によって、電気のコストが上がり、経済的な負担増加はもちろん、産業競争力の低下につながっている。

 AIの普及で電力需要が急増することが予想されるなか、コストが安く、安定的に稼働できる原子力が見直され、再び世界的に原子力の建設需要が増加している。これは韓国に限った話ではない。世界各国で今後急増する電力需要に対応するための切り札として、原発だけでなく、従来の原発の危険性が大幅に緩和されたSMRに期待がかかっている。

 国際原子力機関(IAEA)によると、世界の原子力発電の容量は2023年の406GWから50年には950GWくらいに増加することが見込まれているという。とくに米国政府は50年までに原子力容量を3倍にする目標を掲げている。

 原子力発電は、原子炉のなかでウランが核分裂するときに出る熱で水を沸かして蒸気をつくり、その蒸気の力でタービンを回して発電する。この原子炉が暴走したとき、原子炉そのものを冷やさないといけないが、今の大型の原子炉はポンプで水を汲み上げて冷やさなければならず、電気の供給が途絶えると冷却できない、という問題を抱えている。米国原子力エネルギー協会の試算では、50年に原子力の市場規模は、40兆円に達すると予測されている。とくに、アジア・オセアニア地域で原子力発電所の需要が拡大することが見込まれている。

(つづく)

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