韓国建設大手の新たな活路、小型原子炉(SMR)(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏従来の原子炉と何が違うのか
SMRとは、電気の出力が300MW(㎿)以下の小型原子炉を指す。原子炉には必須である蒸気発生器、冷却材ポンプ、加圧器などの主要部品が1つの圧力容器のなかに入るように設計されている。
このようにSMRは、配管が要らなくなるため、主な原子力事故の1つである配管が破裂するような事故を未然に防げる。また、電気の供給が中断されても、炉心がメルトダウンする事故が起こらないように改善されたことも大きな特徴である。
SMRは発電に必要なシステムや部品などを工場で組み立て、ユニット一式(モジュール)として設置場所に輸送できるため、従来の原発と比べて建設期間やコスト低減が期待されている。また、小型ゆえに、立地の選定が比較的柔軟にできるほか、冷却もしやすいため安全性が高いといわれている。第4世代原子炉は第3世代の原子炉と違って、水ではなく、冷却材としてガス、塩、液体金属などが使われていて、核燃料の安全性が大幅に増加したと評価される。
原発が見直されている理由の1つは、このように既存の原発の弱点を補完したからである。そのため小型原子炉は「次世代の原発」とも呼ばれている。
現在、世界で建設中の軽水炉のうち60%は、ロシアや中国製である。高速炉やSMRにおいても、中国やロシアの存在感は断トツである。SMRの開発は日本のみならず、アメリカ、カナダ、イギリス、ロシア、中国、韓国などで進んでおり、韓国の建設大手はSMRの開発よりも施行において建設会社としての経験を生かそうと市場を求めている。
電力以外にも多様な用途が
原子力の用途は発電だけではない。水素を生産する際、高温で水蒸気を電気分解する。電気分解には500度以上の熱が必要となるが、それを提供できる最適の手段が原子力である。
水素の生産だけでなく、高温の熱が必要な化学団地、繊維団地、製鉄所などでも、原子力を有効に活用できる。その他、海水の淡水化プロジェクト、大型船舶のエネルギー源としても原子力は注目されている。
建設大手の新たな活路
このような状況下、韓国の現代建設などの大手建設会社は米国の小型原子炉開発会社とタッグを組んで、小型原子炉の建設・施行に力を入れている。米国政府の支援を受けながら、テラパワーやニュースケール・パワーなどのSMR開発企業は次世代の原子炉開発でしのぎを削っている。一方、韓国の現代建設はUAE原発建設の経験を生かし、この分野に積極的に進出しようとしている。
しかし、SMRは技術が改善されたとはいうものの、原発の安全性に関する問題を完全にクリアしたわけではない。普及に必要なもう1つのハードルが経済性の問題で、SMRはそのハードルをいかにクリアするかが課題である。SMRは工場で生産し、現場で組み立てるのでコストが安くなるとは言っても、経済性を実現するため、現場に複数設置することになり、その際に爆発を引き起こす問題も指摘されている。
SMRが本当に普及するのかどうかは、今後の推移を見守っていく必要がある。なぜかというと、実際に稼働しているSMRは米国や日本などにはないからだ。だが、エネルギー問題が今後ますます大事になってくるなか、SMRがそれを解決できる切り札として注目されているのは事実である。
(了)
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