2025年01月17日( 金 )

アメリカ政府の新たな対キューバ政策 キューバの声明とグローバルサウスの台頭

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏からさまざまな情報提供を受けて記事を掲載している。
 このたびアメリカ政府が新しいキューバ政策の決定を発表し、それに対するキューバ外務省の声明が注目に値するとの情報提供があった。これについて当社で分析した内容を下記のように案内する。

 14日、アメリカ政府は新たな対キューバ政策の決定を発表した。それに対してキューバ外務省は声明を発表した。声明では、アメリカがキューバに対して講じた一連の制裁緩和措置を歓迎する一方で、依然として続く経済封鎖への強い批判を含んでいる。この政策変更とその背景について、以下で分析する。

アメリカの新たな措置の内容

 今回のアメリカ政府の決定は以下の3点に集約される。

(1)キューバのテロ支援国家リストからの除外
(2)ヘルムズ・バートン法第3条に基づく訴訟手続きを大統領特権で阻止
(3)金融取引禁止対象リストからキューバ機関の削除

 キューバ外務省の声明はこれらの措置は、キューバ政府および国民、さらにラテンアメリカ諸国やアメリカ内外の多くの団体からの長年の要求に対応したものだと評価している。

アメリカの政策転換の背景~グローバルサウスの台頭

 今回、アメリカはなぜこのような政策転換に至ったのか。背景には、国際社会からの圧力や、アメリカ内における対キューバ政策の見直しの機運が影響していると考えられる。とくに、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の多くがアメリカの対キューバ制裁に批判的であり、外交的孤立を避けるための措置と解釈できる。

 また、アメリカ内でもキューバとの経済的・人的交流の拡大を求める声が高まっており、ビジネス界や一部の政治家が経済封鎖の緩和を支持している。これにより、現政権は対話と関与を重視する外交方針への転換を図ったとみられる。

継続する経済封鎖とキューバ外務省の批判

 しかし、キューバ外務省は声明のなかで、経済封鎖の大部分が依然として継続している点を強調している。具体的には、燃料輸入への妨害、国際医療協力への圧力、金融取引や貿易の制限が依然として存在すること。これらの制裁は、キューバ経済に深刻な打撃を与え、国民生活にも重大な影響をおよぼしている。

 また、声明はアメリカ政府がこれらの措置を将来的に覆す可能性があることも指摘し、過去にも同様の政策転換が行われたことを例として挙げている。これにより、キューバ側はアメリカの政策に対する不信感を隠さず、持続的な改善を求めている。

今後の展望~大きくなるグローバルサウスの存在感

 今回の措置は限定的ではあるが米キューバ関係改善への第一歩といえる。だが、両国間の根本的な対立が解消されるには、さらなる信頼醸成と制裁解除が不可欠だ。しかし、その背景にますますアメリカにとって存在感を無視できなくなったグローバルサウスの台頭がうかがえることはたしかだ。

 キューバは今後も、対話と内政不干渉を前提とした関係構築を志向する姿勢を示しており、アメリカ側がどのように応じるかが注目される。とくに、経済封鎖の全面的解除と経済協力の拡大が両国の関係改善における焦点となる。今後の米キューバ関係の動向が注目される。

【寺村朋輝】

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