【湯布院】インバウンドから好評 錦鯉およぐ古民家の宿

九州のインバウンド 24年は過去最高を更新

　国土交通省九州運輸局によれば、2024年11月の外国人入国者数（速報値）は37万2,563人で、（船舶観光上陸除く）通常入国者数としては単月で過去最高を記録。単月での過去最高は同年2月から10カ月連続となり、11月時点ですでに過去最高だった18年の数字を超えた。内訳は韓国からの入国者が46.5％と最も多く、中国が22.7％、台湾が12.8％、香港が7.6％（いずれも9月時点の確定値）と続く。

　「当社が運営するプライベートヴィラの宿泊者も、6割が韓国からのお客さまです。23年からはコロナ禍からの回復が顕著となり、高稼働で推移しています」──大分・湯布院を中心に大分・別府や宮崎・高千穂、福岡・太宰府などで民泊（プライベートヴィラ）を64室運営する（株）リョウ・コーポレーションの黒木遼太氏は話す。

　「当社では湯布院エリアで52室を運営していますが、前年に続き高稼働で推移しました。稼働率こそ横ばいとなったものの、円安効果もあり、宿泊単価は前年を上回りました」と24年を振り返る。JR由布院駅から徒歩1分の場所にインフォメーションセンターを構え、無人の宿でも「迷ってしまった」「お湯が出ない」などといった急を要するトラブルに即応できる同社は、エリア内で最大規模の宿泊業者となった。

露天風呂の隣に錦鯉 「こもれびの宿」

    リョウ・コーポレーションが運営する湯布院のプライベートヴィラは、すべて温泉を引き込んでおり、露天風呂も設置。宿泊者の8割弱が外国人旅行客だという。「昨年末に開業したばかりの古民家を改修した『こもれびの宿』は、湯布院の中心地からは離れているものの、小高い立地にあることから由布岳を一望できるほか、露天風呂に隣接した池には錦鯉を放しており、外国人宿泊者から『日本の情緒を感じられる』として大変好評いただいております」（黒木氏）。

    「こもれびの宿」は、2階建の古民家を改修した宿泊施設で、間取りは6LDK、最大15名が宿泊できる。駐車場も3台分が確保されており、大人数でのグループ旅行や家族旅行で利用されているようだ。

　同社では今年の春から初夏にかけ、湯布院エリアだけで11棟のプライベートヴィラが新規開業を予定しており、うち4棟は同社が組成したSPC・湯布院プロジェクト1（職務執行者・黒木遼太）が保有。もちろん源泉かけ流しの温泉付きで、一部はすでに投資家へ売却予定となっている。「ビジネスホテルなどが競合となる都市部と異なり、湯布院は大規模開発のハードルが高く、大手資本の参入も少ないのが特徴です。温泉付きのプライベートヴィラということで、当社が企画する新規物件にも多くのお問い合わせをいただいております」（黒木氏）。

【永上隼人】

知名度は全国区
温泉地・湯布院

    湯の坪街道や金鱗湖の近くに、旅館などの宿泊施設がコンパクトにまとまった温泉地。湯の坪街道は、金鱗湖周辺から由布院駅方面に1km弱続く湯布院観光のメインストリートで、通り沿いには飲食店や土産物店などが立ちならび、通りは食べ歩きを楽しむ観光客でごった返す。金鱗湖は温泉と清水が流れ込む湖で、年間通して水温が高く、秋～冬の早朝は湖面から湯気が立ち上り、湖全体が朝霧に包まれた神秘的な光景が見られる。湯の坪街道とのアクセスも良く、湯布院のシンボル的存在となっている。