中国AI「ディープシーク」の衝撃──その実力と課題(後)

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 NetIB-NEWSでも「BIS論壇」を掲載している日本ビジネスインテリジェンス協会(中川十郎理事長)より、元国連日本政府代表部大使や元国連事務次長を歴任した赤坂清隆氏による「ディープシーク」についての論考を共有していただいたので掲載する。

中国政府の影響と今後の展望──リスクを考えつつ活用する道

人工知能 イメージ    第4の中国政府の代弁のおそれですが、これは大いに注意を要する点です。ためしに、ディープシークに、「中国は台湾を武力統一しますか?」と聞いてみましたら、中国政府の公式見解とまったく同じ返事が返ってきました。毛沢東、天安門事件、習近平についての質問には、返答がありませんでした。ディープシークを開発した梁文峰氏は、中国国内で一気に英雄扱いされているようで、李強首相との座談会の模様もテレビ放映されました。東京財団政策研究所の柯隆東(かりゅう)研究員は、先日、TBSの報道番組で、このような国家の関与が今後強まるようであれば、アリババのジャック・マーの例にあるように、国家によってつぶされてしまう危険があるとの懸念を語っていました。

 最後に、英語への翻訳能力ですが、「わび、さび」の翻訳や、日本文の英訳を少し試した限りでは、他のチャットGPTやGemini、Copilotと比べてもそん色ない気がしました。翻訳については、チャットGPTやCopilotがまっとうな回答をするように、ディープシークも可もなく不可もない回答をする印象です。他方、Geminiは、説明のポイント、例文、補足などがあって、他と比べてより親切な対応をしてくれる感じがします。ただし、Geminiは、選挙や政治に関係する文章の翻訳は拒否することがありますね。そのときは、チャットGPTに頼むと、回答が得られました。

 以上を考慮の結果、ディープシークについて結論をいえば、中国共産党が気にするような質問をしない限り、かなり便利なAIと言っていいのではないでしょうか?

 ただし、プライバシーや秘密情報秘匿に神経質な向きには、おすすめできない気がします。また、政府機関のパソコンなどでは使わないほうが無難でしょう。目下中国では、さまざまなAIが開発されつつあるといいますので、今後も衝撃的なものがどんどん出てくるかもしれません。このようなAIの便利さとリスクをはかりにかけて、用心深く使っていくのが良いのでしょうね。

 これで、チャットGPT、Gemini、Copilot、ディープシークと、便利なAIがたくさん出そろったわけですが、さて、どれを活用していったらよいでしょうか、悩みますね!ほかにも用途に応じて、たくさんのアプリが誕生しています。これらのAIにいろいろな質問や企画案を試してみて、そのうえで比較優位のあるものを決めますか?「そんなヒマはないと言ったでしょ!」という私の友人の声が聞こえてきそうです。

(了)

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