【BIS論壇No.471】2冊の書籍
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は2月16日の記事を紹介する。最近読了したつぎの二冊に感銘を受けた。1冊は『アジア・ファースト 新・アメリカの軍事戦略』(エルブリッジ・A・コルビー著、文春新書)で帯に「国防総省ブレーン 衝撃の提言──中国を食い止める唯一の道『反覇権連合』で封じ込めよ。日本には大軍拡が必要だ! 」と衝撃的な文字がある。
裏表紙には「拒否戦略」とはなにか? アメリカ一強時代は終わった・アジアはパワーの集積地・中国の支配を拒否する「反覇権連合」・最終目標は「中国に勝利」することではない・経済制裁よりも軍事を充実させるべき・台湾の次はフィリピン・「拒否」できるかどうかもあやしい・第一列島線から中国を出すな・ゴールは「アメリカ覇権」ではない・ネオコンの主張は妄想である・アメリカは究極的に撤退する可能性もある・中国は「張り子の虎」ではない・日本は主体的な防衛力をもて・防衛費2%は焼け石に水などとあり。
経歴はハーバード大卒。イェール大学法科大学院終了。核戦力、軍備管理、情報分野を中心に米国政府の重要ポストを歴任。2018年に米国防総省次官補代理、新アメリカ安全保障センターで上級研究員。18~19年まで防衛プログラム部長として防衛問題の調査研究で指導的立場にあったと紹介されている。
『アジア・ファースト 新・アメリカの軍事戦略』という題名に惹かれ読み始めたが、読了した途端に同氏がトランプ大統領に国防総省次官に抜擢されたと聞き、今後、日本への防衛費増額のさらなる要求が強まるだろうと直感した。あわせて「反覇権連合で中国を封じ込めよ」と力説しており、トランプ政権の中国封じ込め政策はさらに過激化し、日本への軍拡要求もさらに強まるだろうと危惧の念をもった。2月7日の石破~トランプ会談ではこの点はいかがだったのだろうか。
日本は今後平和希求で、21世紀に発展するアジアの時代の中国、インド、ASEANを中心に友好促進を強化し、欧米のアングロ・アメリカンの覇権主義ではなく、岡倉天心の「アジアは1つ」の精神でアジアの平和希求に尽力すべきだと痛感している。
その意味でもう1つの著書『歴史で読み説く!「世界情勢のきほん」』(池上彰著、ポプラ新書)はイスラエルとハマスのガザを中心とする戦争の解明に大いに役立つ著書で、かつてイラク、ベイルートに駐在した筆者にも裨益するところ大であった。
ハマスやヒズボラを支援するイラン、経済のためにイスラエルと国交を結んだアラブ首長国連邦(UAE)、イスラム教の聖地を擁する石油大国サウジアラビア、イスラエルとハマスを仲介しており、アメリカもハマスも受け入れる独自路線のカタール、イスラム化が進む中東の要衝トルコなど分かりやすい解説は有益で、各位に一読を勧めたい名著だ。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。
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