【特別対談】ザイム真理教から脱却して日本再生を 強欲資本主義との決別を目指す(前)

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政治経済学者 植草一秀 氏
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衆議院議員 原口一博 氏

 2024年10月27日投開票の衆議院選挙で、政権を担う自民・公明は過半数割れし少数与党に転落した。しかし、財政出動に否定的なザイム真理教や、グローバリズムの影響力は依然根強い。政治経済学者の植草一秀氏と、立憲民主党佐賀県連会長などを務める原口一博氏に、日本の現状、そして米大統領選などを受けての今後の世界の行方について、タブーなき議論をしていただいた。(対談日:2024年11月27日)

平和と共生の政治 その実現を目指す

 ──2024年10月の衆議院選挙の結果、自公両党が過半数割れになったものの、野党の状況もなかなか厳しい部分があります。他方、米大統領選挙でトランプ前大統領の再選という流れもあり、国際的に変化も出てくると思います。広い視野に立って、これからの日本についてご意見をうかがいたいと思います。

 植草一秀(以下、植草) 自公が過半数割れとなりましたが、無所属で出た裏金議員4名、与党系の無所属2名で、6名入れても221ですから233(過半数)に届かないということで、野党が結束すれば政権交代は成り立ったように思います。しかし現状は自公の少数与党となりました。25年夏に参議院選挙がありますし、衆議院で政権をつくっても、参議院では自公が圧倒的多数持っていますので、なかなか法案を通すのは難しいという事情があると思います。

 12年に第2次安倍内閣が発足してから10年以上が経ちましたけれども、とくに自民党の安倍派を中心とした政治は、いろいろな問題を引き起こしてきました。10月の総選挙では、その延長上にある裏金の問題と、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題に対する国民の批判が沸騰したという側面が強かったと思います。

 ただし、裏金問題は自民党のなかでもとくに安倍派を中心とした問題として安倍派が議席を激減させたため、石破首相は必ずしも自分に対する退陣要求が世論として高まっているわけではないと捉えています。原口さんにも何度も応援していただいていますが、私たちは15年に「オールジャパン平和と共生」という運動を立ち上げました。戦争と弱肉強食の方向に進む日本の政治を平和と共生という方向に変えていく、具体的には平和主義を守り、原発をなくし、共生の経済政策を進めていくことです。

 最近はこれに加えて食料安全保障と、薬害をなくすというテーマも掲げて、基本的な政策を共有する市民と政治勢力が連帯して政権を樹立しようと、党派の壁を超えて政策を軸にした運動を進めています。この間、コロナの影響もありまして、原口さんは大変な病気をされてそこから寛解されたということですが、私もワクチンの問題は非常に重く受け止めています。

 全体を俯瞰してみれば、アメリカを支配する巨大資本勢力が世界制覇を目論み、そして日本はまさにアメリカの属国・植民地としてその命令に従っている状況にありますが、原口さんはこの政治の打破を目指し、日本の独立自尊と、日本のすべての人々の命を守る、国を豊かにするという意味で、成長政策として消費税の廃止を掲げておられます。

 私どもも一番の根幹は、アメリカに支配されている日本から脱却すること、すなわち独立自尊です。そして共生の経済政策は消費税の撤廃、国民の命を守るために安全な食料、そして薬害の根絶ということを掲げており、原口さんとまったく同じ意見です。また、原口さんは「ゆうこく連合」という新しい動きをつくられ、政治は激動期に掛かりますが、新しい日本の政治体制として政権を樹立していただきたいというのが我々の切なる願いです。

左:衆議院議員 原口一博 氏 / 右:政治経済学者 植草一秀 氏
左:衆議院議員 原口一博 氏 / 右:政治経済学者 植草一秀 氏

日本の独立を阻むグローバリストとの闘い

 原口一博(以下、原口) 植草さんがいわれた通り、自公が過半数割れしましたが、立憲が勝ったとはいえません。今いわれた裏金問題、旧統一教会の問題の裏には何があったかというと、「政治家は脱税に近いことをしたり、裏金をつくったりしているのに、国民に対してはここまで税金を絞り取るのか」という国民の思いが背景にあったということです。植草さんには私が主催している「日本の未来をつくる勉強会」でも講師にきていただきました。この35年間続いてきたグローバル支配、さらにいえばディープステートによる支配を変えるチャンスだと思います。以前から申し上げていますが、三段跳びでいうと、「ホップ・ステップ・ジャンプ」のうち、今はホップの一番目の足が地面についたぐらいだと思います。

 前々回の総選挙では、私たちの「日本の未来をつくる勉強会」の仲間は叩き落とされました。アベノミクスを真正面から批判してきた。あるいは「お友達政治」を徹底的に追及してきた仲間は、潰されました。残っているのは、ある意味、鳩山政権を後ろから撃ったり、ディープステートやザイム真理教の仲間の人たちです。そういう人たちが野党でも残りやすい。

 10月の総選挙で僕が何をやったかというと、仲間を待っていました。仲間がかなり国会に戻ってきました。それは立憲だけではありません。憲政の常道からいうと、石破氏(首相)が残っておられるっていうのは、極めて異例のことですね。

 私たちは10月9日に内閣不信任案を出しました。不信任案を否定することができるのは衆議院解散だけです。植草さんもご存知の通り、私は若いころから石破さんと一緒に国家安全基本法をつくったりしており、石破さんの手のひら返しには、がっかりしている人間の1人です。

 私は19年前『平和』(ゴマブックス、2006年)という本を書きましたが、いかに核廃絶をするのかを問うています。今回、「日本独立」という本のなかにも書きましたが、石破氏は様変わりしています。

戦後日米で締結した密約は日本封じ込め

 原口 日本が完全には独立していないという根拠について述べましょう。1つは1952年に吉田茂首相と米極東軍司令官・クラークとの間に結ばれた指揮権密約です。いくつも密約をつくっています。私はそれに対抗すべく、2002年に植草さんから毎日のようにご指導いただき、新しい財政観も教えていただき、日米地位協定の改定案もつくりました。

 しかし、1952年の密約はいまだに生きている。それは何かというと、有事になったら米軍のもとに自衛隊が指揮下に入るという屈辱的なものです。外交文書には、「戦争になったらジャップを指揮下に入れる」とあります。戦後保守といわれ、長長期政権を握った人たちの多くは実はアメリカの傀儡だったのです。美化されていますが、我々からいうと日本の主権を売り渡した人たちといっていいでしょう。

 また、植草さんに教えていただいたように消費税こそ日本の弱体化装置です。私は松下政経塾時代に、中曽根内閣のブレーンに育てられました。中曽根内閣は、歴代内閣のなかでも対米追従内閣の最たるもので、私はそのブレーンが大嫌いで御用学者と批判して、塾を放逐されそうになりました。その日米の経済摩擦時に導入されたのが消費税です。

 10月の総選挙に話を戻すと、自公は負けたけど立憲は比例票を7万票しか増やしていません。野党第1党が振るわず第3党の維新が大阪の地域政党になったかのような衰退ぶりを見せているときに、第2党が躍進しないのは、負けです。裏金の隠れたところで、日本は国民が食えない国になり、消費税支払いの重さあるいは社会保険料負担の重さが原因で潰れている会社が続出しています。この状況を改善するために、消費税減税、インボイス廃止の法律案を国会にも出しているにもかかわらず、上の方が反対の動きを行う。これは、見切りの時かなと思っています。

 また、ワクチンについても、日本では単に医師や感染症の専門家が出てきて議論しましたが、それは片方だけの議論で、そのためにたくさんの人たちが被害に遭いました。日本人を減らして他国の人を増やす政策をやっているとしか思えません。

弱体化装置の消費税こそ日本経済低迷の原因

 植草 後半にお話いただいた、日本の政治をつくり直していく1つの軸は対米自立ですね。米国が支配する日本からどう抜け出せるのかという問題。それから、行政の経済政策ですが、国民生活、とくに格差の問題で、所得が相対的に少ない人の生活を根底から苦しめているのは消費税です。

 「103万円の壁」という話が出ていますけれど、103万円の壁を上げたときに、恩恵を受けるのは103万円以上の所得の人だけです。また、住民税非課税世帯に3万円給付とかも出ていますが、1回限りの目くらましに過ぎないと思われます。消費税は1989年に導入されましたが、私は85年から87年に大蔵省で仕事をしており、中曽根内閣が売上税導入を目指したプロジェクトチームの事務局にいました。旧大蔵省と財務省がどんなことをしてきたかというのは、末端の事務官の1人として見てきました。消費税は長らく3%だったのが、97年度に橋本龍太郎内閣がこれを5%まで引き上げました。このとき日本で一番反対したのは私だと思っています。このことが冤罪事件に巻き込まれる契機になりました。

 日本の個人消費の統計を見ると、2014年までは一応まがりなりにも増加トレンドでしたが、8%となった14年からは減少に転じています。19年に10%にしましたね。まるで消費に対する懲罰です。

(つづく)

【文・構成:近藤将勝】


<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
植草一秀「資本主義の断末魔」1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。

原口一博(はらぐち・かずひろ)
1959年、佐賀市生まれ。佐賀県立佐賀西高等学校、東京大学文学部心理学科を卒業後、松下政経塾へ第4期生として入塾し、松下幸之助の薫陶を受ける。現在、衆議院議員9期目。立憲民主党佐賀県第1区総支部代表。衆議院予算委員会委員、郵政民営化に関する特別委員会理事、民主党佐賀県連代表を経て総務大臣、衆議院総務委員長、予算委員会委員、決算行政監視委員長などを歴任。立憲民主党佐賀県連代表、ゆうこく連合代表世話人。

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