緊張の高まりで需要増の韓国防衛産業(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

各国が軍備強化を急ぐ

 ウクライナ・ロシア戦争、イスラエル・ハマス戦争などで、国際情勢が不安定化しているなか、自走砲、戦車などの在来式武器の需要が全世界的に急増。そのような状況下で、武器を生産して、顧客の希望通りの時期に納品できる企業は10年~20年前に比べてかなり減少している。そのため安定供給ができる韓国防衛企業に注文が相次ぎ、降って湧いたような需要に忙しくなっている。

 それに、トランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)に対して、防衛費の支出を国内総生産(GDP)の5%まで増額することを要求し、防衛産業に追い風が吹いている。また、中国製の武器輸出を抑制したいという米国の政策により、韓国防衛企業が武器選定の過程で選択される確率が一層高くなった。

 さらに、中国が南シナ海の90%の領有権を主張していることから、地域の緊張が高まっている。ベトナム、台湾、マレーシア、フィリピンなどは、軍備増強を急いでおり、安くて性能のよい韓国製の武器が注目されている。

受注残高が100兆ウォンを上回る

 韓国の武器輸出額がここ数年うなぎ上りとなっている。韓国の7つの防衛企業の昨年末の受注残高は、105兆6,000億ウォンに上った。納品額よりも受注額が多い状況がずっと続いているからだ。その結果、防衛関連企業には3年分以上の仕事がたまっている。

 韓国の武器輸出は2020年に約30億ドルだったが、23年には3倍以上の95億ドルとなり、今年は約200億ドルの輸出が予想されている。まさに、「うなぎ上り」と言っても良い状況である。

 LIGネクスワン社は昨年9月、イラクと3兆7,000億ウォン規模の地対空誘導ミサイルの契約を締結しているし、KAI社はフィリピンとFA-50戦闘機の輸出を交渉中である。またHD現代重工業とハンファオーシャンも、米国の軍艦受注を目指している。

 韓国製の武器は東ヨーロッパだけでなく、東南アジア、オーストラリア、中東などにも販売地域を広げている。とくに、世界自走砲市場シェアの半分以上を占めている「K-9自走砲」は韓国を含む11カ国で使用されている。23年にはドイツの防衛企業であるラインメタルを抑え、同社がオーストラリア発注の戦車を受注した。

 武器は、輸出をすると、30年以上使うことになり、購買費用と同じくらいのメンテナンス費用が発生するため、売った後にも継続的に収益を確保できるビジネスである。それに、すそ野が広くて、武器の輸出は産業界に広く影響を与える。

(つづく)

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