変わるリフォーム・リノベ市場 「2025年問題」でさらなる変革も
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新築着工の低迷が顕著に
国土交通省は1月31日、2024年の建築着工統計調査報告を発表した。それによると、新設住宅着工戸数は前年比3.4%減の79万2,098戸となり、2年連続の減少となったことがわかった。過去10年では最少。また、過去20年で80万戸台を下回ったのはリーマン・ショックの影響を受けた09年以来で、同年に次ぐ低い水準となった。内訳は、持家(注文住宅)が同2.8%減の21万8,132戸で3年連続の減少だった。貸家(賃貸住宅)は同0.5%減の34万2,044戸で2年連続の減少。分譲住宅は同8.5%減の22万5,309戸で、こちらも2年連続の減少となった。分譲住宅のうち、マンションは同5.1%減の10万2,427戸で、一戸建は同11.7%減の12万1,191戸。いずれも2年連続の減少となった。
24年は全カテゴリーで前年を下回ったことになるが、これは物価高や資材価格の高騰などによる住宅価格上昇、住宅ローン金利の上昇傾向などが住宅需給マインドを低下させたことによるもので、新築住宅市場の縮小はこの先も継続するものと考えられる。(株)野村総合研究所(野村総研)が24年6月に発表したレポートでは、新設住宅着工戸数が23年度の80万戸から30年度には77万戸、40年度には58万戸と減少していくという予測を示しており、それは住宅産業に関わる関係者なら程度の違いはあれど、新築市場縮小に関する共通認識だろう。【図①】
変わる消費者の価値観
さて、新築住宅市場の縮小は、少子化や晩婚化などが背景にあるのはもちろんのこと、新築住宅の取得が高嶺の花になってしまったなかで、住宅取得検討者、とくに若年一次取得者層の住まいに関する価値観が大きく変化しつつあることも影響している。具体的には、検討の対象がこれまでの新築住宅から、既存住宅へとシフトしつつあるのだ。国土交通省が実施した住生活総合調査によると、持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・既存住宅別)について、現在の所有関係(持ち家・借家)別の経年変化を見ると、「現在持ち家の世帯」の住み替え先の意向では、「新築住宅」と「とくにこだわらない」が23年(令和5年)では13年(平成25年)と比べ減少し、逆に「既存住宅」が増加していた。「現在借家の世帯」の住み替え先の意向についても、同様の傾向にあった。【図②】
また、(株)日本総合研究所(日本総研)が24年11月にまとめたレポートでは、「我が国では中古住宅取得が増加傾向。住宅金融支援機構『フラット35利用者調査』を用いた試算によると、住宅取得に占める中古住宅の割合は足元で3割超に。とりわけ近年は、地方部で顕著に増加」と指摘している。そのうえで、「中古住宅の取得増加は、不動産価格の上昇が一因。資材価格や人件費の上昇などにより、足元の不動産価格は過去10年間で1.4倍に上昇。住宅取得費用を抑制するため、新築住宅よりも安い中古住宅へ需要がシフト」と分析している。こうした状況から、前述の野村総研のレポートでは、「リフォーム(リノベーション)市場は今後もわずかながら成長を続ける」としている。【図③】【図④】
【図③】 買取再販事業も
こうした新築住宅から既存住宅への住宅取得検討者の住まいに関する認識の変化は、単に既存住宅の売買を行うだけでなく、既存住宅を取得してリフォーム・リノベーション工事を行い販売する「既存住宅買取再販事業」も徐々に広がりつつある。累計販売戸数が7万戸超におよび、この事業で業界トップの(株)カチタスは、そうした状況を受け着実に業績を高めている。【表】は同社の直近5年間と2025年3月期第2四半期の連結業績をまとめたものだが、増収を続けている。買取再販事業、とくに戸建のそれは耐震性能に関する物件ごとの状況把握が難しいなどの理由から、参入を回避している事業者も多いが、同社のような存在が勢いを増しているのは、新築住宅から既存住宅へと消費者の意識が変化していることの顕著な表れといえそうだ。
ところで、総務省が24年4月に発表した「令和5(23)年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家総数は約900万戸となり過去最多になった。前回調査(18年)の空き家総数849万戸よりも51万戸増加したかたちになり、国内の全住宅数に対する空き家率は18年の13.6%から13.8%に上昇した。空き家の増加は景観を損なうほか、防災や防犯への悪影響など、地域の活力低下につながるものとして問題視されている。新築住宅から既存住宅への動きは、空き家問題の改善というテーマとも深く絡む動きでもある。【図⑤】
ここまで、住まいにおける状況の変化に関する大きな流れを見てきたが、4月1日からは現行省エネ基準適合義務化と、それにともなう「4号特例の見直し」からなる「2025年問題」の影響が、住宅市場をさらに変えていく可能性がある。
【田中直輝】
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