飯塚エリア浮揚の契機となるか 八木山バイパスが一部4車線化(前)

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3月末に一部4車線化 全区間4車線化は29年度

 4車線拡幅事業が進んでいる国道201号八木山(やきやま)バイパスでは、3月30日の午前0時をもって篠栗IC~筑穂IC間が4車線(片側2車線)で開通を迎える。

 国土交通省九州地方整備局およびNEXCO西日本(西日本高速道路(株))九州支社が共同で進めている八木山バイパスの4車線拡幅事業は、筑豊地域と福岡都市圏を結ぶ八木山バイパスの2車線区間を4車線化することにより、交通ボトルネックを解消して交通混雑を緩和するとともに、交通安全性の向上による信頼性の高いネットワークの構築等を目的としたもの。今回4車線で開通するのは、八木山バイパス全体13.3kmのうち、篠栗IC~筑穂IC間の5.7km。残る筑穂IC~穂波東IC間の7.6kmについては現在も4車線への拡幅工事が進行中で、全体の4車線開通は29年度を予定している。

 なお、今回の一部4車線化の開通にともない通行料金の徴収も開始となり、八木山バイパス(篠栗IC~穂波東IC)の管理が、国土交通省からNEXCO西日本に移管される。通行料金は、軽自動車等220円、普通車280円、中型車330円、大型車450円などで、利用区間に関わらず1回走行当たりで篠栗本線料金所において徴収。徴収期間は2050年9月末までの予定となっている。

4車線化で期待される種々の効果

 そもそも八木山バイパスとは、国道201号の難所である八木山峠の交通渋滞解消を目指して建設されたバイパス道路である。1977年度に事業許可および工事着手となり、85年2月に暫定2車線での開通となった。なお、バイパス開通後も八木山峠は、国道201号現道としての利用が続いている。

 暫定2車線での開通当初の八木山バイパスは、NEXCO西日本九州支社が管轄する一般有料道路として供用されていたが、無料化社会実験(2010年6月28日~11年6月19日)を経て、14年10月1日から無料開放。このとき、NEXCO西日本から国土交通省へと管理が移管された。だが、無料化後には交通量が倍増し、朝夕を中心に渋滞が頻発。それにともなう事故の発生件数も増えたことで、八木山バイパスの4車線化および再有料化の検討が開始された。19年3月に有料道路事業許可および4車線化整備の認可が下りたことで、4車線事業化に着手し、20年4月に4車線化整備が着工。そして今年3月末に一部区間で4車線化となる。

 今回の一部4車線化によって期待される効果としては、「交通混雑の緩和により、筑豊地域と福岡都市圏の交流を促進」「対面通行区間の解消にともなう、道路利用者の交通安全の向上」「定時性・速達性の高い物流ルートの形成による、地域産業の支援」の3つが挙げられている。

 まず交通混雑の緩和については、現状の八木山バイパスでは平日の通勤時間帯(朝夕)に渋滞が頻発し、通常時に比べ約1.7倍の所要時間を要するなど、国道201号の福岡東バイパスや飯塚庄内田川バイパスなどの接続する4車線区間に比べて時間信頼性が低く、地域間交流に支障があるという問題がある。それが今回、篠栗IC~筑穂IC間が4車線で開通することにより、混雑時において約7分の所要時間短縮が見込まれるとともに、速度のばらつきが減少して時間信頼性が向上するなど、筑豊地域と福岡都市圏の交流を促進する効果が見込まれるというものだ。

 次に交通安全性の向上については、現在の八木山バイパスは対面通行の自動車専用道路であるため、正面衝突事故の発生割合が県平均の約2.4倍と高く、重大な正面衝突事故が発生した場合には、全面通行止めとなるなど、支障を来している状況にある。それが今回の一部4車線化に合わせて中央分離帯が設置されるため、道路利用者の交通安全性が向上し、事故等による全面通行止め時間が減少するなど、信頼性の高い道路ネットワークの構築が期待されるというもの。

 最後に定時性・速達性の高い物流ルートの形成については、八木山バイパスを含む国道201号は、沿線に自動車関連企業が立地し、北部九州における自動車産業のサプライチェーン(部品調達、製造、販売など)等を支える重要な物流道路であり、近年は北九州空港の滑走路延伸等をはじめとした空港・港湾機能の拡充や物流施設の整備が進んでいることで、さらに重要性が増しているという背景がある。そのため、今回の一部4車線化によって、2車線区間の交通ボトルネックが一部解消し、定時性・速達性が向上。また、飯塚市では新たな工業団地の造成にも着手しており、福岡方面へのアクセス性が向上することで、地域産業の支援につながるという期待もされている。

 なお、これらの効果は今回の一部4車線化に際してのものであり、29年度予定の全区間での4車線化完了の際には、さらなる定時性・速達性および安全性の向上が見込まれると思われる。

炭都として発展した筑豊エリアの中心都市

 こうした八木山バイパス4車線化による恩恵がもたらされるのは、バイパスの延長上にある筑豊エリアであり、その中心的な立ち位置の飯塚市だろう。

遠賀川
遠賀川

    飯塚市は福岡県内4位の人口(12万4,012人/25年1月末現在)を擁し、筑豊エリアおよび嘉麻市・嘉穂郡・飯塚市で構成される「嘉飯地区」の中心的な役割を担っている。5市8町(直方市、田川市、筑紫野市、宮若市、嘉麻市、桂川町、小竹町、篠栗町、須恵町、宇美町、筑前町、糸田町、福智町)と多くの自治体と境界を接する214.1㎞2の市域のほぼ中央部を遠賀川が流れ、遠賀川沿いを中心として市街地が形成。市内にはJR九州の3線(筑豊本線、篠栗線、後藤寺線)が通り、計11駅(飯塚、浦田、上穂波、上三緒、九郎原、新飯塚、筑前内野、筑前庄内、筑前大分、天道、鯰田)を擁するほか、国道200号・201号・211号などの幹線道路も充実しているが、高速道路は通っていない。

(つづく)

【坂田憲治】

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