福岡空港、第2滑走路の供用開始は新たな議論のスタート地点だ

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 福岡空港の第2滑走路が、今月20日から供用開始される。福岡空港は、滑走路が1本の空港としては国内最多の旅客数・発着回数を誇り、成長を続ける福岡の空の玄関口として機能強化が求められてきた。

 第2滑走路は2015年に建設が始まり、既存の滑走路と並行するかたちで整備された。第1滑走路(全長2,800m)に対し、第2滑走路は2,500mで、横には新たな誘導路も設置された。総事業費は1,643億円に上る。

 この滑走路の供用開始により、年間の発着回数は現在の17.6万回から18.8万回へと増加し、将来的には21.1万回までの拡大を目指している。長年、1本の滑走路での運用が続いていたため、混雑や遅延が深刻な課題だった。第2滑走路の開設により、この問題の緩和が期待される。

国土交通省資料より
国土交通省資料より

 だがインバウンド需要が旺盛な今日では、上記のような発着回数の増加では焼け石に水との見方がもっぱらだ。むしろ狭くて都心に近い福岡空港ならではの課題が大きくなるだけとの指摘も少なくない。

 そこで供用開始前に改めて課題を整理しておこう。

供用開始後の課題

課題(1):同時離発着の制限
 第2滑走路は2,500mと短いため、離陸専用として使用される。また、既存滑走路と平行に設置されているため、同時離発着は不可能であり、滑走路の増設による発着容量の拡大効果は限定的だ。

課題(2):騒音問題
 便数が増加することで騒音の影響が懸念されるが、現状では騒音対策区域の見直しが行われていない。このため発着数の増加後に、住民からの反発や新たな環境対策の必要性が指摘される可能性がある。

課題(3):安全性の懸念
 滑走路間の距離が近いため、誤認による航空機の進入ミスなどのリスク増加が指摘されている。運用開始後は、こうしたリスクへの万全の対応が必要となる。

 より詳細な議論については、当社の過去記事をご覧いただきたい。
24時間空港「福岡空港」の門限問題 山積課題に対症療法をいつまで続ける?

供用開始は新しい議論のスタート地点

 ではこれからどのような論点で課題の解決を考えていくべきだろうか。

(1) 滑走路間の距離確保
 将来的には、滑走路間の距離を広げることで同時離発着を可能にすることが求められる。そのためには、空港全体の再整備や新たな用地取得が必要になるかもしれない。

(2)安全対策の強化
 誤進入や管制ミスを防ぐため、管制塔の配置や機器の更新、エプロン(駐機場)から滑走路への進入時の安全管理を強化することが不可欠。

(3)騒音対策の強化
 発着便数の増加にともない、より効果的な騒音対策が求められる。地域住民の理解と、環境負荷を抑えるための対策を講じる必要がある。

(4)長期的・広域的な空港戦略が必要:北部九州広域空港ビジョン
 福岡市が国際的な都市として発展を続けるには、空港機能の強化は不可欠で、現状の福岡空港の拡張だけではそれに対応することはできない。佐賀空港や北九州空港を含めた広域的な空港間連携によって、北部九州全体の機能強化の課題に戦略を格上げする、北部九州空港ビジョンが必要不可欠だ。福岡空港の第2滑走路の供用開始は、その議論のスタート地点になるべきだろう。

【寺村朋輝】

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