【行政動向最前線】「栄養機能食品」初の機能表示見直しへ 消費者庁、来年度に検討開始

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 消費者庁は、ビタミン・ミネラルなどの機能を表示できる栄養機能食品制度を改正する方針を固めた。2001年の制度創設以来、初めて機能表示を見直す。これと合わせて、成分の配合量(上限値・下限値)も変更する。25年度中に検討に入る予定だ。改正されると、栄養機能食品を販売する各社では、販売戦略をはじめ、パッケージの改訂や製品設計の見直しを迫られることになる。

自由度ないものの手続き不要

 栄養機能食品は特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品とともに、国の基準に従って食品の機能を表示できる「保健機能食品」の1つ。保健機能食品以外の食品については機能を表示できない。

 栄養機能食品は、1日に必要な栄養成分が不足しがちな場合に、特定の栄養成分を補給するために利用される。サプリメント・菓子・飲料など、さまざまな形態の製品が販売されている。対象成分はビタミン13種類、ミネラル6種類、脂肪酸1種類の合計20種類。それぞれの栄養成分について、表示できる機能が決められている。たとえば、カルシウムならば「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」、ビタミンCならば「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」と表示する。企業の判断で表示内容を縮めたり、表現を変更したりすることは禁止されている。

 栄養機能食品は企業の任意によって利用できる。トクホは国の審査と許可取得が必要で、機能性表示食品は国への届出が求められるが、栄養機能食品はそうした手続きが不要だ。機能を表示するために、特段の時間や費用がかからないことが最大のメリットといえる。

 一方、栄養機能食品の場合、機能に関する表現は、あらかじめ国が定めた通りに表示しなければならない。これに加え、成分配合量についても、国が定めた上限値・下限値の範囲に収めることが求められる。トクホや機能性表示食品では企業の創意工夫を反映できるのに対し、栄養機能食品には自由度がない。

制度改正の経緯

 栄養機能食品制度は2001年に創設。これまでに2度、大きな改正が行われている。いずれも対象成分の拡大を中心としたものだ。

 制度のスタート時は、ビタミン12種類(ビタミンA・B1・B2・B6・B12・C・D・E・ナイアシン・ビオチン・パントテン酸・葉酸)とミネラル2種類(カルシウム・鉄)の合計14種類を対象としていた。04年の改正で、亜鉛・銅・マグネシウムのミネラル3種類を追加。さらに、15年の改正により、ビタミンK、カリウム、n-3系脂肪酸の3種類が加わった。これにより、現在は20種類の栄養成分が対象となっている。

 対象成分の拡大については、出尽くした感もある。15年の改正で、消費者庁は栄養成分の追加に関する考え方として、(1)食事摂取基準で基準(推奨量・目安量・目標量)が策定されている、(2)公的統計により国民の平均的な摂取量が把握されている、(3)過剰摂取の懸念がない、(4)特定の栄養機能が期待できる──の4要件を挙げた。

 これに基づくと、ミネラルのセレン・マンガン・クロムなどは、平均的な摂取量を把握しきれていない。ヨウ素やn-6系脂肪酸は、過剰摂取を招く懸念が否定できない。食物繊維については、特定の機能を期待するためにどのくらいの量を摂取すべきかの根拠が明確でない、という壁が立ちはだかった。こうした状況は、短期間で大きく変わるわけではない。このため、対象成分のさらなる拡大は当面、困難と予想される。

機能表示とエビデンスに乖離

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