【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(9) 企業価値向上に向けたDX認定制度の活用

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はじめに

 前回のまとめのなかで、“DX経営”という言葉を使いましたが、経済産業省の『デジタルガバナンス・コード3.0』では、「デジタルガバナンス・コードに沿った経営」と定義されています。デジタルガバナンス・コードに関しては、この後に触れますが、私は、このDX経営を「デジタル技術を経営戦略の中心に据えて組織全体の変革を推進する経営手法」と捉えています。

DX認定制度について

 前述の『デジタルガバナンス・コード』は、経済産業省が企業のDX推進を後押しする施策として位置付けるDX認定制度における認定基準を示すものです。本制度は、『デジタルガバナンス・コード』を基準に、企業がDXを戦略的に推進するか、その計画や体制の整備状況を評価し、一定の基準を満たした企業を認定する制度です。たとえば、認定企業は、自社がデジタル技術を活用した持続可能な経営を実践していることを広く利害関係者にアピールできます。

 なぜここでDX認定制度の話をするかというと、DX認定は単なる形式的な認証ではなく、その申請から取得に至るプロセスを経ることが企業価値向上への取り組みの第一歩となるからです。前回(第8回)の≪DX化による企業価値向上プロセス≫の表は、まさにDX認定を取得するため、企業が事前に取り組むべきプロセスを示すものです。

DX化による企業価値向上プロセス

DX認定の取得が企業価値向上につながる理由

1.取得による企業の信頼性の向上

 認定を取得することで、取引先や金融機関からの信用が向上し、新規取引や資金調達の面で有利になることが期待できます。

2.認定取得のプロセスが企業の成長を促進

 DX認定取得の準備過程で社内の業務プロセスや人材育成の見直しが進み、企業全体の競争力が向上します。

3.価値創出の投資としてのDX化の推進

 デジタル人材の育成やIT投資は、単なるコストではなく長期的に企業価値向上をもたらす投資と捉えるべきです。

 以上のように、DX化の推進は、企業の経営そのものにかかわる取り組みです。デジタルガバナンス・コードでも、①経営ビジョンとDX戦略の連動、②現状とあるべき姿のギャップの把握、③企業文化への定着という3つの視点を重要視しています。

 なお、DX認定制度の対象となるのは、DX-Ready(ディーエックス・レディ)という段階にある企業です。これはすでにDX化を完全に実行している企業ではなく、「デジタル技術を活用した経営改革の準備ができている企業」を評価する制度です。たとえば、クラウドシステムの導入計画があり、従業員のデジタル教育を進めている企業は、DX-Readyの状態にあるとみなされます。要は、認定を取得する時点で、まだDX化が進んでいなくても、取り組みを始めるための準備が整っている段階を評価する制度なのです。

DX-Ready

まとめ

 今回は、DX認定制度の説明に紙面の大半を費やしてしまいましたが、次回は、DX認定を取得するための具体的な準備・手順について成功事例を交えながら解説します。とくに、中小企業がどのような手順でDX化を進め、どのような効果が得られるのかに焦点を当て、DX化に取り組むことで得られる具体的なメリットをお伝えすることで、企業価値向上につなげるプロセスについて明確なイメージをもっていただけるよう説明をいたします。なお、補足ですが、2月14日に公表された「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第19次公募)」において、DX認定が新たに審査の加点項目に加わりました。


<INFORMATION>
(株)コンシャスマネジメント

所在地:福岡市中央区天神1-4-1
    西日本新聞会館16階
    (天神スカイホール内)
TEL:092-736-7528


<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立

(8)DXと企業価値向上の関係

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