【特集連載1】うきは市・西隈上団地整備事業~最大の問題は前市長および現市長の姿勢

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 福岡市から約1時間で、のどかな風景が広がるうきは市に到着する。林業やキウイやブドウなどの果樹栽培が盛んで、旧吉井町周辺は、白壁の街として多くの観光客が訪れている。一方で、市の人口は2025年2月末時点で2万7,273人。他の自治体と同様、人口減少や地場経済の活性化が大きな課題となっている。

 記者はうきは市と山を隔てる八女市の出身である。18年12月にうきは市と八女市を結ぶ合瀬耳納トンネル(約2.6キロ)が開通した。それまでの峠越えルートでは20分を要していたが、トンネルの開通により7分に短縮された。トンネル周辺では、毎年秋になると美しい紅葉を見ることができる。

 昨年末「隣町」といってもよいうきは市で市の公共事業として行われる「市営西隈上団地等整備事業」をめぐって、おかしな動きがあるという話を耳にし、取材を始めた。すると【動画】(PFI事業「うきは市営西隈上団地等整備事業」の問題を語る)でも取り上げたように、選定過程や事業提案について、さまざまな問題点が浮き彫りになってきた。

 西隈上団地は、1966年から71年にかけて整備された公営住宅のため老朽化が進んでおり、高木典雄前市長(2012年7月から24年7月まで)時代に建て替えが計画され、民間資金やノウハウを活用するPFI事業として行われることが決まった。

 公募型プロポーザル方式で地元企業を含めた2グループが公募に応じ、昨年12月、大和ハウス工業(株)九州支社が優先交渉権者に選定された。今回、その選定過程や事業内容の問題点が指摘されている。

 『I・B』第3018号(3月20日発刊)において、6ページにわたる詳細な解説レポートを掲載しているが、最も問われるべきは、行政のトップである市長の姿勢だ。

 PFI事業は、高木氏の古巣である国土交通省が進めてきた。市長退任を前に事業を構想した背景には国交省への配慮があったのではないか。だが、自治体の長の役割は地元経済をいかに発展させていくかを考えることではないだろうか。

 公営住宅法には「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」(第1条)とその目的が明記されている。「国民生活の安定」「社会福祉の増進」とある以上、最優先するべきなのは安心安全でなければならないはずだ。

 議会でも同一事業者が建設・管理まで行う点や、耐久性や耐火性といった安全面への懸念、地場企業育成の観点があるのかなどについての指摘がされていた。

 事業を計画した高木前市長と、それを引き継いだ権藤英樹市長は、市民生活の安全・安心や地場産業の育成よりも、保身に走ったと言わざるを得ない。この問題について、引き続き厳しく追及していくことにする。

【近藤将勝】

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