「エネルギー4.0」の道を阻む、日本が乗り越えるべき障壁とは(4)
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NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長 飯田 哲也 氏
日本の再生可能エネルギーは太陽光発電、それも「メガソーラー」一色という感があるが、世界では太陽光発電以外の再生可能エネルギーもバランス良く普及させている。その先端を行くデンマークとコラボして、地域で電力会社を持つ「分散型エネルギー」が進め、エネルギーの「地産地所有」を日本で実現させようとしている。その中心人物であるISEPの飯田哲也氏に、日本のエネルギーの現状と課題について話を聞いた。
横展開の力より縦の突進力が必要
――日本が「エネルギー1.5」の状況とは言え、原発事故以降の再エネ普及、とくに太陽光発電のスピードは目を見張るものがあります。
飯田 たとえば明治維新を考えても、黒船が来た1854年から10年の間に、幕府にしろ薩長にしろ、日本は軍艦を持ったり作り始めていました。そういう意味での変化は、日本は早いのです。
太陽光はFITが始まる前は家庭用がメインでしたが、どちらかといえば訪問販売で無理やり設置するような業者が多かった。ここにきて、ようやく完全にまっとうなビジネスになったと言えます。2~3年の間でファイナンスやデューデリジェンス、EPCやサプライチェーンなどがあっという間に習熟してきました。
日本の場合、ブレイクスルーしたときの横展開は非常に早いのですが、あとは縦の突進力、つまり「ブレイクスルーをいかに早く起こすか」が大事です。エネルギー分野において、その最大の障壁が直接的な送電です。――日本の政治家は、世界のエネルギーがどこまで進化しているか、きちんと理解できているのでしょうか。
飯田 まったく理解していないと思います。日本は先進国のなかで20~30年前の状況なのですから。本当は風力の方が太陽光より発電コストが安いので、太陽光よりも5倍、10倍は普及するのが当たり前で普通の市場メカニズムなのです。それなのに、なぜか太陽光だけが普及してきました。健全な市場が歪んでいる明らかな証拠です。
その原因は、経産省と既存の電力会社の両方にあります。電力会社にとって太陽光はオール電化で囲い込める「顧客」だが、風力は商売目的の競合発電会社なので排除したい。経産省にとって太陽光は自分たちが育てたという自負があるが、風車は欧州由来として敬遠してきたのです。日本のエネルギー政策史のなかで、この事実は目立ちませんが暗黒史となったのです。(了)
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