【経済事件簿】ドバイにて金密輸で逮捕

序文

 友人・日向(仮名)が1月13日から18日にかけて、ドバイにて金(ゴールド)密輸の疑いで身柄を拘束され、「5年間の実刑を食らう」という危機に直面した。日向は一時、「もう俺の人生は終わった」と観念したという。

現在の相場価格高騰

 1月29日、国内のゴールド取引価格が初めて1gあたり3万円を突破した。昨年9月は2万円であったから、わずか4カ月で50%高騰したのである。トランプ大統領の政治戦略に不信を抱き、不安感が高じてゴールド価格が高騰しているという見方が広がっている。

実際には倍の量のゴールドがある

 ゴールドをめぐり、さまざまなデータが飛び交っている。地球上で採掘された金の総量は約20万t。採掘可能な残量はおよそ5万2,000t。年間採掘量は約3,000tに上る。海水中には50億tものゴールドが含まれているといわれるが、現時点では採算に合う採取技術は存在しない。

 日向はゴールド取引の経験から「実数は倍ある」と断言する。国家間取引やデータ集約から漏れる“非公式な取引”が莫大に存在するとの彼自身の体験(獄中体験を含む)に基づく結論である。

ゴールドラッシュに浮かれるアフリカ

 日向のゴールドビジネスの基本的な骨格は以下の通りである。

①まずコンゴ産出の粒金・延べ棒(専門的にはバーと呼ぶ)を仕入れる。ケニアのナイロビへ移動し、500㎏単位で取引を行う。

②ナイロビからドバイへ航空便にて500㎏の粒金を運ぶ。

③ドバイでは買い手に渡す前に精錬所へ持ち込み、24金の金塊として仕上げ、買い手=オーナーに引き渡す。ドバイ政府へ支払う取引税はわずか1,000米ドル足らずという。ドバイは王国であり、商取引にはあまり干渉しない。しかし一方で、法に触れる行為に対する罰則は非常に厳しい(後述)。

④「世界に存在するゴールドの実際の量は倍」と述べたが、公的データに上らない私的取引は無限に存在する。これが日向の体験的結論だ。アフリカには無数の弱小国家があり、あちこちで国境紛争や内戦が絶えない。その資金調達手段は“金の売却”しかない。日向に言わせれば、「これらはすべて私的取引である」というのだ。

事件発生までの経緯

 日向は昨年夏頃から、この仕事に関心を抱いていた。
「ナイロビで金塊を調達し、ドバイへ移送して売買するビジネスが注目されている。知り合いの数人も手を染めているようだ。ただし、騙されて破綻した話も耳にした」

 そう語る日向は、人脈づくりに磨きをかけてきた。昨年11月には“出し方(ゴールド供給側)”としてアフリカ側の信頼できる財閥とのパイプを築き、同時に“買い手(ドバイ側)”との強力な関係も構築した。

 年明け早々、日向はアフリカへ飛んだ。ナイロビからコンゴへ移動して商談をまとめ、2日間滞在して契約にこぎつけた。その後、ナイロビに戻り、物流(航空便)の段取りを整え、ロジスティクス業者とも打ち合わせを済ませた。

 9日にはドバイへ入った。頼りのゴールド荷は翌日届いた。「まずやるべきことは粒金を精錬所へ送り込むことだ」と自分に言い聞かせ、作業に着手した。

身柄拘束

 13日の朝、滞在先のホテルに警察当局者が踏み込んだ。「詐欺行為で取り調べる」と告げられ、そのまま身柄を拘束、留置場へ送られた。「お前は我が国に偽装ゴールドを持ち込むのに暗躍した。これは最低でも懲役10年の罪に相当する」と告げられる。日向はまったく事態を把握できなかった。「詐欺罪とは一体どういうことなのか!」と混乱し、不安は頂点に達した。

 取り調べは13日午後1時から始まり、翌14日深夜2時まで続いた。強圧的な追及を経て、ゴールド精錬の結果を知らされた。500㎏のうち470㎏は本物だが、偽物が30㎏あったという。日向は拘束された理由が、「30㎏の偽金を持ち込んだ犯罪」であったことをようやく理解した。

「再入国しない」取り決めで放免

 日向は獄中で思案を重ねた。「ロジスティクスの連中が30kg抜いたのだ」と結論づけたという。

 獄中生活は5日間。監視員からは「詐欺罪で5年の刑を受けるぞ」と脅され、2日間は徹夜で取り調べを受けた。留置場は20人部屋、世界各地の極悪人たちと4夜を過ごすこととなった。激しい追及のなかで日向は必死に抗弁した。

「なぜ、これが詐欺になる?売買契約も成立していない。金もまだ動いていないではないか!」

 やがて査察官も疲れたのか、妥協案を提示した。
「二度とドバイに入国しないことを約束しろ」

 日向にとっては“願ったり叶ったり”であった。「誰が二度と来るものか」というのが本音だ。彼は「入国しない」という誓約書を嬉々として差し出した。

 ところで、持ち込まれたゴールドの行方である。2カ月後、470kg分の取引が正式に認定され、金が動いたという。日向はこれでゴールド取引から足を洗う決意をした。

 アフリカ―ドバイ間のゴールド取引に関心のある方は、お問い合わせを。ただし「真剣にビジネスを検討している方」のみに限る。

【青木義彦】

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