エステ業界に激震、スリムビューティハウスに業務停止3カ月 消費者庁が指摘した数々の違反言動

 消費者庁は1月29日、特定商取引法に違反する行為があったとして、痩身エステ大手の(株)スリムビューティハウス(本社:東京都港区、代表取締役:西坂才子)に対し、3カ月間の業務停止命令および指示処分を下した。同時に、西坂代表取締役に対しても同期間の業務禁止命令を出している。停止期間は1月30日から4月29日まで。

巧妙な「抱き合わせ」と数々の違反言動

 処分対象となったのは、新規契約に関する勧誘、申込受付、契約締結の全業務。同社は少なくとも2024年10月~25年3月にかけて、体験エステに訪れた客に対し、ダイエット食品「エンザイムフローラ」などの定期購入をエステ契約の必須条件として提示。実際には法令に基づきクーリング・オフや中途解約が可能であるにもかかわらず、「通信販売なので解約できない」などと事実に反する説明を行っていた。

 消費者庁が今回の行政処分にあたって認定した、スリムビューティハウスによる具体的な違反言動は以下の通り。これらは体験エステに訪れた客に対し、断りづらい状況をつくり出し、法的な権利を否定する巧妙な話術が用いられていた。

①強引な「退路断ち」と執拗な勧誘

 消費者が「お金がない」「契約できない」と明確に拒絶しても、従業員は以下のような言葉で畳み掛け、契約を迫っていた事例が確認されている。

「収入が少なくても契約はできますよ」
「失業手当はいつ入るんですか」
「契約できるのは、あと数日だけですよ」
「買わないと、エステを契約できませんよ」
「まだ悩むことがありますか。今日逃すと機会を逃しちゃいますよ」

②解約を阻む「不実告知」

 本来、特定継続的役務提供(エステ)とセットで購入した関連商品は、法令に基づきクーリング・オフや中途解約が可能だ。しかし、同社は通信販売を装うなどして、権利を否定する説明を行っていた。

「(関連商品は)定期購入は通信販売なので、4回が終了するまでは解約できません」
「エンザイム(商品名)はクーリング・オフができませんよ」
「4回購入するまで、解約できません」

③断っても「逃がさない」抱き合わせ手法

 商品がいらないと訴える顧客に対しても、契約の必須条件として強硬に抱き合わせ販売を強いていた実態も指摘されている。

「これを買ってもらわないと、エステの契約はできないんですよ」
「プロテインなしのコースはありません」

問われるエステ業界の収益モデル

 今回の処分は、エステ業界全体が抱える「物販依存」の構造的課題を浮き彫りにした。近年、エステティックサロン各社は、施術単価の下落を補うため、サプリメントや化粧品などの「関連商品」の販売に注力している。しかし、本件のように、あたかも商品単体では特商法の保護対象外であるかのように偽り、解約を阻む手法は極めて悪質と判断された。

 また、大手企業であっても、現場での行き過ぎた勧誘や不適切な説明が常態化していれば、代表者個人を含めた厳罰が下されることを改めて示した処分でもある。消費者庁は、同社に対して法令遵守体制の整備と、再開までの役員および従業員への周知徹底を強く指示している 。

 エステ業界において、売上目標と法令遵守のバランスをいかに保つかが、今一度問われているといえる。「知らなかった」「現場の熱意が行き過ぎた」という言い訳はもはや通用しない。とくにアップセル(単価引き上げ)が行われる現場において、消費者の「契約しない」という意思を尊重すること、そしてクーリング・オフ等の法的権利を正しく説明することは、事業継続のための最低条件である。各社は、マニュアルの整備にとどまらず、従業員1人ひとりが「不実告知」や「迷惑勧誘」の違法性を自分事として理解するための教育プログラムを再構築することが必要だ。信頼回復に向けた第一歩は、小手先の営業テクニックではなく、法令を遵守する誠実な組織文化の醸成にあるといえる。

【寺村朋輝】

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