異論を唱える側近を切ろうとする高市首相の独裁的体質が露わになる記事が『選択』4月号に掲載された。タイトルは「高市が『退陣』を口にした夜」で、3月24日に高市首相が政府関係者の前で激昂、「あいつに羽交い絞めにされた。許せない。切るつもりでいる」と息巻いた発言を紹介したのだ。
「あいつ」とは、第二次安倍政権時代の首相秘書官(政務担当)だった今井尚哉・内閣官房参与筆頭のことで、原因は日米首脳会談だったという。先の記事はこう続けていた。
「高市は、実は米国大統領ドナルド・トランプの要請に応じ、ホルムズ海峡へ自衛隊を派遣する腹積もりでいた。これに今井は『国難だ』と怒り、首相執務室へ乗り込むと、高市と激論になった」
結局、自衛隊派遣は政府・与党からも反論が出て、高市首相は断念することになったが、今井氏への怒りは収まらなかったようなのだ。
異論を唱える側近を切ろうとする独裁的体質は、周囲がイエスマンばかりになって首相の暴走を止める幹部がいなくなる弊害をもたらす。レアアース問題でもそうだった。
高市首相は総選挙中の2月4日、倉敷市で以下のように訴えた。
「レアアース、2月になってうれしいニュースありましたよね。南鳥島の深い深い海の底6千メートル、そこからレアアース泥の引き揚げにようやく成功しました。10年以上前に発見されてから取り組みは進めてきた。私も担当大臣として、準備はしてきた」「だから日本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」
この発言を朝日新聞はファクトチェック。2月6日の記事で、根拠薄弱のミスリード発言と判定した。
「今回の引き揚げ、レアアースの自国供給へ第一歩を踏み出したことはたしかだが、安定してどれだけ採れるか、民間が担えるほど採算性があるか、環境対策をしたうえで精錬できるかなどの見極めは、まだこれからで、誇張した表現。現時点で『困らない』というには根拠が薄く、誤解を招く」
しかし小野田経済安保担当大臣は3月13日の会見で、高市首相のレアアース困らない発言の非を認めようとしなかった。以下の私の質問に対してノーコメントを繰り返したのだ。
――南鳥島沖のレアアース引き上げについて、高市総理は総選挙中に「日本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」と発言をして、これに対して朝日新聞が「根拠が薄く、誤解を招く。ミスリード」と指摘している。所管大臣の受け止めをおうかがいしたい。要は、高市政権の対中国強硬政策の弊害、莫大な経済的損失のリスクに目を逸らすための問題発言ではないかとも見えるが、大臣の考えを聞かせください。
小野田大臣 前にも申し上げたかもしれないが、総理の発言に対して、とくに担当大臣としてコメントすることはない。
――レアアース問題は所管内だと思うが、高市総理と話をしてないのか。高市総理から「誤解を招く根拠薄弱な発言だった。今後は控える」というような発言はあったのか。あるいは、(小野田)大臣の方から「こういう問題発言は控えてください」というようなことは言わなかったのか。
小野田大臣 何もコメントすることはない。
――総理の言いなり大臣か。
小野田大臣 何もコメントすることはない。
いうまでもなく、レアアース問題は経済安保大臣の所管である。2月3日の小野田大臣会見で、他の記者がレアアース泥の引き揚げに関する質問をした際、こう答えている。
「来年度には、南鳥島周辺海域においてレアアース泥を採取し、南鳥島陸上に運んで脱水・分離を行った後、本土において精製するまでの一連のレアアース生産プロセスを実証し、総合的に南鳥島沖レアアース生産の経済性評価を行う予定です。その結果を踏まえて、実用化の可能性についても検討してまいりたいと思いますし、今後、国としてどうするのかというところもしっかりと検討してまいりたいと思います」。
要は、南鳥島沖レアアースの実用化は成功するかもしれないが、成功しない可能性もあるということだ。
「日本はレアアースに困らない」という総選挙中の高市首相の訴えは、国民(有権者)に誤解を与える問題発言であったのは明白なのに、小野田大臣はそれを認めなかったのだ。
「間違っていますよ」と高市首相に指摘することすら許さない独裁的雰囲気に染まっているようなのだ。
言いなり大臣で脇を固めているように見える高市政権(首相)だが、専門家からは疑問の声が出ていた。レアアース研究に長年取り組んできた岡部徹・東京大学生産技術研究所教授は、3月18日の共同通信のインタビュー記事で、次のような怒りを露わにしていたのだ。
「(高市首相発言は)いいかげんにしろと思います。コストや実用化の可能性をこれから検証する段階なのに『海底から掘れば資源セキュリティー上、大丈夫だ』というような話を首相がするのは確実におかしい。海外、とくに中国から『日本の資源政策はとんちんかんだ』と思われてしまいます。
太平洋戦争中、政府は『我が国は不沈艦・戦艦大和があるから、アメリカの艦隊には絶対負けない』と国民の期待をあおった。当時はもう航空機が主流だったのにもかかわらずです。それと似て、政府が誤解を招く情報を出すと、間違って安心してしまう人が出てくるでしょう」
かつての大本営発表のようなミスリード発言を平然として、閣僚からただされることもない高市首相の発言には、常にファクトチェックをかけていくことが不可欠のようだ。独裁的な政権が暴走しがちなことは歴史が物語ることであるためだ。
【ジャーナリスト/横田一】








