福島自然環境研究室 千葉茂樹
2026年4月26日、磐梯連峰の頂部で「自生している雪割草」を確認しましたので、お知らせします。
一言、注意をします。この記事を見て、すぐに「磐梯連峰に登ろう」と考える方がいるかもしれません。ただし、この時期の山は、まだ「冬山」です。安易な気持ち・安易な装備で登山すると「遭難の危険」があります。この記事の前編(リンク)で書いたように雪崩の危険もあります。
この文章を書いている4月30日の明け方は、裏磐梯で気温が氷点下まで下がりました。磐梯連峰の頂部では、さらに低温と思います。
これまでの雪割草の記事
磐梯山麓の雪割草(ミスミソウ・オオミスミソウ・スハマソウなどの総称)は、数回お伝えしました(リンク)。こちらは、約30年前の公園開設の際に、植えられたものです。しかし、地元でもすっかり忘れられています。私も6年前に偶然出会い、「自生のもの」と思って驚きました。しかし、「斑入りの葉っぱ」があることから、人為的に植えられ、その後放置されて野生化したものと分かりました。
磐梯山頂部に自生していた雪割草
私は、これまで4月に磐梯連峰の頂部まで登ることはありませんでした。私の目的は、地質調査で登山そのものではありません。そのため、頂部への登山は、早くて5月中旬でした。多分、5月では雪割草の花の時期が終わってしまい、私は雪割草に気が付かなかったものと思います。ところが、今年は通常より1カ月も早く「残雪の多い頂部」を歩くことができました。
4月26日の頂部は残雪が多く、緑色のところは笹や針葉樹の葉だけで、植物は新芽も出ていません。そんななかで、花が咲いているではありませんか。近づいて見ると雪割草でした(画像14・15)。多分、オオミスミソウと思います。株自体も大きく直径約30cmで、花もいっぱい咲いていました。花の色は白が基調ですが、若干ピンクがかっています。


雪割草の生育条件
私は、磐梯山麓の雪割草を6年間見てきました。生育環境が限定され、条件が整わなければ次の年には芽を出しません。半日陰を好み、日当たりが良すぎると夏の太陽に負けてしまいます。水も適度に必要で、湿地や乾燥地では枯れてしまいます。また、冬場は寒さに耐えるために、雪の下でなければなりません。総合すると「半日陰の窪地」が生育に適しているようです。まとめれば、自分に最も適した場所で生きています。
このように生育条件が限定される雪割草が、磐梯連峰の頂部に生育していたことが不思議でなりません。火山地帯は樹木が少なく、夏は太陽の強い光に晒されます。また、水の状態も、乾燥地や湿地など極端です。冬の寒さも極端にきついです。
余談ですが、山麓で雪割草を見つけてから3年後に、雪割草の周りがあまりに草藪だったので、周りの草を取り除きました。これで分かったことは、雪割草は、「個体ごとに生育条件が違う」ということです。草取りで、日当たりが良くなって元気になった個体もあれば、太陽に負けて葉っぱが日焼けした個体もありました。今年も草取りをしましたが、半日陰になるように気を付けました。雪割草は、春先は太陽を好みますが、夏は草の陰のほうが良いようです。なお、元気な個体は、葉っぱの表面がピカピカに輝きます。
盗掘はダメ
磐梯連峰頂部の「雪割草の見られる場所」をお伝えしたかったのですが、盗掘する方がいるので、場所が分からない画像にしました。
山麓の雪割草も、かなり盗掘されました。私は、盗掘に気付くと公園の管理者の猪苗代町役場に連絡しました。写真を撮った個体が「次の日にはない」ということがしばしばありました。見た目には盗掘されたことが分かりません。痕跡が残らないように盗掘されていました。ただし、私は毎日観察しているので盗掘されたことがわかりました。
このような盗掘のため、雪割草の株数が減ってしまいました。とくに、特徴のある花の個体が盗掘されたようです。
自然の植物は共生している
雪割草の手入れをして気が付いたことです。自然界の植物は、他の植物や細菌・バクテリアと共生しています。
最も有名なのはマメ科植物で、根に根粒菌(リンク)がいて塊(根粒)をつくります。この植物は、窒素肥料が不要で、根粒菌が空気なかの窒素を「植物が使える形」にします。逆に、根粒菌は植物から栄養をもらって生きています。これが共生です。鹿児島県などでは、冬の田圃にレンゲソウを植えています。これは、この原理(空中窒素固定)を使った窒素肥料の補給方法です。
私は磐梯山麓の雪割草を増やそうと、種を採集して公園内に蒔きました。しかし、一株も発芽しませんでした。良く観察すると、幼い株は親株の周辺にしかありません。親株から共生する生物を引き継いでいるのかも知れません。
自然の花は生育場所で見ましょう

私の故郷は岩手県一関市です。子どものころ(約60年前)、叔父が岩手県中部の早池峰山(リンク)からシャクナゲ(画像16)を掘ってもってきました。父は邪魔だったらしく、畑の隅に植えました。寒冷地に生育していたシャクナゲを温暖地にもってきた訳です。シャクナゲは、枝が急激に伸びました。そして、ついには花も咲かなくなり、5年くらいで枯れました。日当たりや水環境や気温そして肥料の状態が変わったためです。植物は生育環境が変わると枯れてしまいます。
ですから、自然の高山植物を盗掘して栽培しても、徐々に勢いが悪くなってついには枯れてしまいます。自然のものは、花の時期になったらその場所に行って観察するのが一番良いです。盗掘は絶対にしてはいけません。
(了)
<プロフィール>
千葉茂樹(ちば・しげき)
福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。








