NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、5月1日付の記事を紹介する。
4月22日、高市首相は「安保3文書改定に関する有識者会議」の初会合を開催しました。この会議では、同首相が進めようとしている「戦後最大の防衛力の抜本的強化」の仕組みを明示することが最大の任務として期待されています。
今後月1回の頻度で会議が開かれ、秋には提言がまとまるとのこと。2022年に策定されてからわずか3年での異例の前倒し改定となるわけで、高市政権の強い思いが感じられます。
国際情勢が緊迫し、ウクライナ、イラン、台湾有事という「3正面」の危機に対応するには、どのような視点と政策的なバックアップが必要なのか、そのシナリオ作りが求められているわけです。
また、政府部門や研究機関の専門家に加え、民間企業の経営者を巻き込むことで、日本企業が「新たなビジネスチャンス」を見いだすプロセスを支援するという仕掛けが講じられています。
内外から注目されていますが、中でも最も熱い視線が注がれているのは、従来の「防衛産業」の枠を超えた先端テクノロジーの軍民両用(デュアルユース)分野に他なりません。
特に以下に紹介する3つの分野で期待が高まっています。
第1に無人機(ドローン)・ロボティクスの分野です。ウクライナ戦争などの教訓から、「安価で大量の無人機」が防衛の要になると位置づけられており、自律飛行ドローン、水中無人機(UUV)、AIによる戦況分析・自動認識技術に期待が寄せられています。具体的には、 三菱重工業(水中無人機)、ACSL(国産ドローン)、さらにセンサー技術を持つソニーグループなどが注目されています。
この分野ではビジネスチャンスは多岐に渡っており、偵察用だけでなく、自爆型ドローンや、人手不足を補う自動自律型の警備・輸送システムの需要が急増していることが背景にあるようです。
第2がサイバーセキュリティ・国産クラウドの分野です。
「能動的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)」の導入が改定の柱となるため、政府・防衛インフラの「国産化」が加速します。能動的サイバー防御に不可欠な脆弱性診断ツール、暗号技術、偽情報検知技術が期待されているわけです。
具体的には、 さくらインターネットやソフトバンク(国産生成AI・クラウドインフラ)、トレンドマイクロなどのセキュリティ企業への期待が高まっています。「海外製クラウドへの依存を減らす」という政府の方針により、機密情報を扱う「ガバメントクラウド」関連の受注が拡大する見込みです。
第3が宇宙・衛星コンステレーションの分野です。
間近に迫る「台湾有事」などを想定し、通信や監視を止めないための小型衛星網の構築が急務となっています。小型衛星コンステレーション用コンポーネント、レーザー通信、高精度GPS代替技術が求められているところです。
具体的には、三菱電機(衛星製造)、IHI(ロケット・推進系)、さらにスカパーJSATなどへの期待が高まっています。
実際、自衛隊独自の通信網整備に加え、民間の衛星データを防衛に活用する「情報買い取り型」のビジネスモデルも検討されているほどです。
加えて、新素材・バイオの分野でも、期待は高まっています。例えば、極超音速兵器に耐えうる新素材、戦傷医療に役立つバイオ技術、軽量高密度バッテリーなどが注目を集めている状況です。
更に注目すべきは、これらの企業活動を後押しするために、高市政権は「防衛投資減税」や、先端技術を開発する民間企業への「巨額のR&D(研究開発)補助金」をセットで検討していることです。
これこそが高市政権が安保3文書改定と連動して検討している「防衛スタートアップ専用ファンド(仮称:防衛イノベーション創出基金)」です。これまでの重厚長大中心の防衛産業を、機動力のあるベンチャー企業の技術で底上げすることを目的としています。現時点で検討されている規模は総額1,000億円〜2,000億円で、単年度の予算ではなく、複数年にわたって継続的に支援できる「基金」形式での設立が検討されています。
このファンドの特筆すべき「仕組み」としては、これまでの補助金と異なり、より「ビジネス」に近い形での支援が想定されていることです。例えば、「政府による買い取り保証」が用意され、開発に成功した場合、自衛隊が最初の顧客として製品を買い取ることを事前に約束し、ベンチャー企業の経営リスクを下げます。しかも、セキュリティ・クリアランスの取得支援も用意されており、資金だけでなく、スタートアップが防衛機密を扱うために必要な施設整備や身辺調査の費用をこの基金でバックアップされる体制となっています。
こうした新たな仕組みを実現することで、高市政権は前代未聞の経済安全保障イノベーションが生まれる土壌を日本に作ることを狙っているわけです。
果たして、どこまで期待に応える成果が生まれるのか、世界が注視しています。
著者:浜田和幸
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