【鮫島タイムス別館(48)】「高市支持」議連の実像は麻生帝国~自民8割をのみ込んだ国力研究会の力学

麻生主導で膨張した「高市支持」議連
自民党の国会議員417人のうち、8割超の347人が参加する巨大議連「国力研究会」が発足した。表向きは高市早苗首相を支持し、来年秋の総裁選で無投票再選を目指すことを目的に掲げている。しかしその内実は、議連の最高顧問に就任した麻生太郎副総裁を中心とする挙党体制の確立だ。
まさに「麻生帝国」の完成版である。
麻生氏は高市政権の「生みの親」である。党内基盤の弱い高市首相が昨年10月の総裁選で逆転勝利を収めたのは、麻生氏が土壇場で高市支持に転じたためだ。高市政権発足後の人事は麻生氏が牛耳った。自民党中枢は麻生副総裁、鈴木俊一幹事長(麻生氏の義弟)、有村治子総務会長の麻生派ラインで固められ、内閣の布陣も麻生氏の意向がそのまま通ったのである。
高市首相の自立路線と麻生氏の反撃
高市氏はその後、麻生支配からの自立を探った。年明け1月には麻生氏に無断で衆院解散を決断し、麻生氏が反対する消費税減税を公約にねじ込んだ。衆院選に圧勝した後は、麻生氏を衆院議長に棚上げする人事を画策し、麻生氏との関係は決定的に悪化したのである。
麻生氏は反撃に出る。自らは「高市支持」を公言しつつ、高市首相の独断専行の政権運営への不満を漏らし、官邸と自民党の間にあえて亀裂を生じさせた。それに伴い、高市首相が官邸の「たばこ部屋」に引きこもっているといった内部情報が次々にリークされ、サナエトークンやSNS誹謗中傷動画といった疑惑も相次いで浮上。内閣支持率は高く、衆院選に圧勝したにもかかわらず、政権運営は不安定な状況に陥ったのである。
高市首相は麻生氏との「和解」(あるいは「一時休戦」)を決断し、4月と5月に相次いで官邸でランチをともにした。高市氏に近い萩生田光一幹事長代行が2人を仲裁したといわれる。その流れで浮上したのは、高市首相を支持する議連「国力研究会」の旗揚げだ。麻生氏はそれを逆手に取り、萩生田氏らに「高市色を強くするな」と指示。「高市支持議連」という政治的意味合いを変質させ、自らを中心とする「挙党体制」を瞬く間につくり上げてしまったのだ。
林、岸田、武田を排除した人事のメッセージ
発起人11人の顔ぶれをみれば、麻生氏の狙いは明らかだ。昨年10月の総裁選で高市首相と戦った4人のうち、小泉進次郎防衛相、小林鷹之政調会長、茂木敏充外相の3人を取り込んだ。唯一除外したのは、林芳正総務相である。
林氏の後見人は、麻生氏とは地元・福岡で長年の宿敵関係にあった古賀誠元幹事長だ。古賀氏は政界引退後も宏池会(旧・岸田派)に強い影響力を残している。麻生氏は2021年総裁選で岸田文雄氏を支持する際、古賀氏との絶縁を迫った。岸田氏はこれを受け入れ、古賀氏を宏池会の名誉会長から外した。しかし、宏池会ナンバー2の林氏は古賀氏と緊密な関係を維持してきた。麻生氏はこれが気に食わないのだ。
麻生氏の狙いは、ポスト高市候補の4人のうち、あえて林氏だけを「排除」することで「次の総裁を決めるのは俺だ」というメッセージを党内に発信することにあるのだろう。
発起人には旧安倍派から萩生田氏と西村康稔選対委員長、旧茂木派からは茂木氏と加藤勝信元財務相が加わった。安倍政権時代の第一派閥・安倍派、第二派閥・麻生派、第三派閥・茂木派による3派体制の復活である。除外されたのは、第四派閥の旧岸田派、第五派閥の旧二階派だ。
旧岸田派は岸田氏と林氏の主導権争いが続くが、どちらも発起人から外されながら、議連には参加した。
旧二階派を受け継いだ武田良太元総務相も、地元・福岡で麻生氏と敵対関係にある。発起人を外されたうえ、旧二階派の後輩である小林氏を発起人に一本釣りされるという露骨な嫌がらせを受けた。それでも議連に加わったのは、秋の人事に向けて、発足したばかりの「武田派」がいきなり非主流派に転落することだけは避けたいという思いからであろう。
岸田、林、武田3氏は屈辱の議連参加といっていい。
巨大化した議連が抱える二重性
参院自民党からは、旧岸田派の松山政司議員会長、高市陣営の重鎮である中曽根弘文元外相、旧安倍派の山谷えり子氏、そして麻生派の有村治子総務会長が発起人に加わった。参院の新たなドンとして40人のグループを旗揚げし、アンチ高市色を強めていた石井準一参院幹事長を外したのがポイントだ。
自民党内では「この議連に加わらなければアンチ高市とみられ、秋の人事で外される」との危機感が広がり、参加者は8割を超えた。一方で、ここまで膨れ上がると「第2の議員総会」の様相を帯び、逆に政治色が薄まる。林氏や武田氏が参加した狙いもそこにあると言われている。
そのなかであえて参加を見送った70人に注目が集まっている。アンチ高市・アンチ麻生の立場を鮮明にしている石破内閣のメンバーたち(石破茂前首相、岩屋毅前外相、中谷元前防衛相、村上誠一郎前総務相)の不参加は規定路線としても、財務族の森山裕前幹事長、宮沢洋一前税調会長、小渕優子元経産相や、菅義偉前首相に近い河野太郎元外相、三原じゅん子参院議員らが参加を見送るとのリストが出回った。さらには高市首相自身や側近の古屋圭司衆院憲法審査会長も距離を置いているとの情報も流れている。「実は高市首相は麻生主導の議連を快く思っていない」(党関係者)と囁かれているのだ。
麻生帝国の完成が高市政権の安定を生み出すのか。その結論を出すのはまだ早い。
【ジャーナリスト/鮫島浩】
<プロフィール>
鮫島浩(さめじま・ひろし)
1994年に京都大学法学部を卒業し、朝日新聞に入社。99年に政治部へ。菅直人、竹中平蔵、古賀誠、町村信孝ら幅広い政治家を担当し、39歳で異例の政治部デスクに。2013年に原発事故をめぐる「手抜き除染」スクープ報道で新聞協会賞受賞。21年に独立し『SAMEJIMA TIMES』を創刊。YouTubeでも政治解説を連日発信し、登録者数は約18万人。著書に『朝日新聞政治部』(講談社、22年)、『政治はケンカだ!明石市長の12年』(泉房穂氏と共著、講談社、23年)、『あきらめない政治』(那須里山舎、24年)、『政治家の収支』(SB新書、24年)。
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