湿気を逃がし、家を長持ちさせる「WB HOUSE」で提案する新たな住環境

みなもとの汐
みなもとの汐

 丸源産業(株)は8月21、22日の2日間、福岡県糸島市で宿泊施設「WB HOUSE みなもとの汐(しお)」の完成見学会を開催した。同施設は、壁のなかに空気を通す通気断熱「WB工法」を採用し、自然な空気の流れによって湿気や熱を外へ逃がす仕組みを備える。さらにGX志向型住宅の性能やスマートホーム設備を取り入れ、省エネ性と快適性を両立した建物となっている。

左 丸源産業(株) 代表取締役・田中勝則氏
左 丸源産業(株) 代表取締役・田中勝則氏

    見学会で同社代表取締役・田中勝則氏が繰り返し説明していたのが、「湿気」と「カビ」の問題だ。住宅の高気密・高断熱化が進む一方、室内や壁内部に湿気をためないことも、住宅の快適性や耐久性を考えるうえで重要になる。同社が「深呼吸したくなる家」として提案するWB HOUSEには、どのような考え方があるのか。

湿気をためない「呼吸する家」

みなもとの汐

 WB工法の特徴は、壁のなかに空気の通り道を設けることにある。床下から入った空気が壁のなかを上昇し、屋根付近から外へ抜けていく。夏場は壁内にたまった熱や湿気を排出し、室内への熱の影響を抑える。一方、冬場は気温の変化に反応する形状記憶合金を使った通気口が閉じ、冷たい外気の侵入や室内の熱が逃げることを抑える仕組みだ。季節に応じて住宅そのものが「衣替え」するように、空気の流れを調整する。

 さらに、室内側には湿気を通す壁材を使用する。室内で発生した余分な湿気や生活臭などを壁側へ通し、通気層から屋外へ排出する考え方だ。

 同社がこの仕組みを重視する背景には、住宅内部の結露やカビへの問題意識がある。住宅では、料理や入浴、室内干し、人の呼吸など、日常生活そのものから水蒸気が発生する。湿気が室内や壁の内部に滞留すれば、条件によっては結露やカビにつながる。同社は、断熱性能を高めるだけでなく、「湿気をどう外へ逃がすか」まで考えることが重要だとしている。

結露とカビの経験からWB HOUSEに一本化

みなもとの汐    同社は、当初からWB HOUSEだけを施工していたわけではない。以前は一般的な住宅とWB HOUSEの双方を手がけていたという。転機となったのが、住宅の結露やカビに関する顧客対応だった。

 田中氏は、過去に施工した住宅で、同じ建物でも部屋によってカビの発生状況が異なり、顧客から施工上の問題を疑われた経験を振り返る。断熱材などを確認しても施工上の問題は見つからず、生活によって発生する湿気と換気の重要性を改めて認識したという。

 こうした経験から同社は、住宅設備のグレード以上に、長く暮らすうえでの空気環境を重視するようになった。予算が限られる場合でも、キッチンやユニットバス、建具などのグレードを調整しながら、住宅の基本性能や空気環境はできるだけ維持するという考え方だ。現在はWB HOUSEを軸とした住宅づくりに一本化している。

室内干しにも表れる空気の流れ

みなもとの汐    見学会では、室内の空気が動き続けることによる生活面での違いについても説明があった。その一例が洗濯物の室内干しだ。田中氏によると、WB HOUSEの施主からは、室内干しした洗濯物の臭いの違いを指摘されることが多いという。同社では、壁内を含めて空気が動き、湿気を外へ逃がしやすいことが、洗濯物の乾燥環境にもつながっているとみている。

 田中氏自身も約9年前からWB HOUSEで暮らし、夏と冬の室温や湿度を継続的に確認してきた。取材では、梅雨時など湿度が高くなる時期でも、一般的な住宅との空気の違いを実感していると説明した。

 また、見学会では屋根裏も公開した。夏場の屋根裏は高温になりやすいが、WB HOUSEでは壁内を上昇した空気を上部から排出するため、熱がこもりにくいという。来場者が実際に屋根裏へ入り、温度を体感できるようにしたのも、目に見えない「空気の流れ」を伝えるためだ。

GXとスマート設備も1つの建物に

みなもとの汐    「みなもとの汐」は、WB工法だけでなく、省エネルギー性能を高めたGX志向型の建物として計画されている。資料ではUA値0.46以下の断熱性能を掲げ、再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量を35%以上削減。太陽光発電などの再生可能エネルギーも活用する。

 さらに、同社として初めてLIXILのホームデバイス「ライフアシスト2」を導入した。スマートフォンや音声によって、玄関の施錠、照明、室温、給湯設備、電動シャッターなどを操作できる。自然の力を利用して空気を動かすWB工法と、デジタル技術によって暮らしを便利にするスマートホーム設備を組み合わせた格好だ。

宿泊して体感する「みなもとの汐」

 今回の施設が一般的なモデルハウスと異なるのは、宿泊施設として整備された点にある。温度や湿度、臭い、洗濯物の乾き方などは、短時間の見学だけでは分かりにくい。そこで「みなもとの汐」では、実際に一定時間を過ごしてWB HOUSEの空気環境を体感できる場としての活用を想定している。

 田中氏は「家は一生に一度の大きな買い物だからこそ、見えない部分まで理解して選んでほしい」との考えを示す。自身がWB HOUSEに暮らしながら性能を確認し、見学会でも屋根裏や壁の仕組みまで公開する姿勢には、住宅の性能を数値だけでなく、実際の暮らしを通じて伝えようとする同社の考え方が表れている。

 高断熱・高気密化や省エネ性能の向上が進む住宅業界。そのなかで同社が着目するのは、断熱性能だけでは捉えにくい「湿気」と「空気の流れ」だ。住宅を長く快適に使うために、熱を遮るだけでなく、湿気をためない仕組みをどうつくるか。「みなもとの汐」は、その考え方を宿泊しながら体感できる新たな提案となっている。

【内山義之】

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