高島福岡市政の16年(8)福祉の現場から(前)数字が語る前進 対象の明確化と確かな実績
福岡市の高島宗一郎市長が11月の市長選に立候補しない意向を表明した。2010年の初当選から4期16年。都心の再開発で語られることの多い市政だが、福祉の分野では何が進み、何が残ったのか。3回に分けて振り返る。
親と暮らせない子どもへの支援~施設から家庭へ
最大の進歩といってよいのが、親と暮らせない子どもの養育が進んだことだろう。里親やファミリーホームで暮らす子どもの割合を示す里親等委託率は、09年度末の20.9%から、15年度末に33.3%、21年度末には59.3%まで上がった。こども家庭庁の資料は、この数字を全国トップと記している。乳幼児に限れば87.5%にのぼる。
施設で暮らす子どもは、15年度末の288人から21年度末には120人に減った。乳児院は38人から5人になっている。市は、乳児院から児童養護施設へ移す措置変更を特別な場合を除いて行わない方針をとり、13年度からの3年間に20人あったこの変更は、続く3年間でゼロになった。
児童相談所には家庭への移行を担う係を置き、発足時の4人から8人体制に広げた。常勤の弁護士が加わり、養子縁組を妨げる事情を一件ずつ整理している。短い期間だけ子どもを預かるショートステイ里親の登録も100人を超えた。施設から家庭へという方針を、人の配置で裏づけた取り組みである。

路上生活者支援~巡回相談と自立の促進
路上で暮らす人も大きく減った。市の調査では、ホームレスの数はリーマン・ショック後の969人をピークに、22年度は144人になった。巡回相談員に会ったことがあると答えた人は96.1%にのぼり、路上生活者に声が届く体制が十分に機能している。
19年度からの4年間に自立支援施設を出た1,299人のうち200人が就労で、320人が福祉の利用で自立した。その後を追えた203人のなかで、再び路上に戻ったのは1人だった。施設を経ずに直接アパートなどへ入る人も、18年度の124人から22年度には288人に増え、その8割余りが住まいでの生活を続けている。
障がい福祉・高齢者支援~サービス拡充と認知症対策
障がい福祉は、サービスの量が伸びた。実際に利用した人は18年度の1万2,062人から22年度には1万4,134人に増え、事業費は約527億円から約686億円になった。なかでも障がいのある子どもに関する施策は約80億円から約125億円へと膨らんでいる。グループホームの利用は、1年で月1,547人から1,915人に増え、25年4月には南部療育センターがオープンした。
高齢者の分野では、認知症への取り組みが目を引く。23年9月、中央区に認知症フレンドリーセンターが開設された。認知症の人にもやさしいデザインの導入は19年度から進められ、約50の施設に広がっている。ケアの技法であるユマニチュードの認証取得を支援する事業もある。
介護の基盤では、特別養護老人ホームが計画の6,453人に対して23年度の見込みで6,391人と99%になり、介護職員の離職率は18年度の20.9%から21年度には15.6%に下がった。高齢者の相談窓口となる地域包括支援センターは、おおむね中学校区ごとに57か所ある。
子育て・制度整備~独自給付の拡大と共生社会への一歩
子どもの分野では、市独自の給付など大きな動きがあった。22年4月には公立の夜間中学が開校。23年4月に第2子以降の保育料を無償にし、24年1月には医療費の助成を高校生世代まで広げ、25年8月分からは市立の小中学校と特別支援学校の給食費を無償にした。
医療的ケアが必要な子どもを育てる家族が訪問看護を使える時間は、年48時間だった。市は25年8月から、24時間人工呼吸器を使う子どもについて試行的に年338時間まで広げ、26年4月からは全体の上限を年104時間にしている。
制度の面でも動きがあった。障がいを理由とする差別をなくすための条例が、19年1月に施行された。18年度にはパートナーシップ宣誓制度が始まり、宣誓したカップルは26年8月末までに275組を数える。強度行動障がいのある人を拠点で受け入れる集中支援は、15年4月に始まった。保育所の待機児童は、25年4月時点で、約4万人の申し込みに対して4人である。
こうして並べると、成果がはっきりしている分野には共通点がある。施設にいる子ども、路上にいる人というように、対象が見えやすいということだ。誰を何人、どこへつなぐのかという目標を立てやすいため、そこに人を配置して数字が動いている。
次回は、高島市政で貫かれたことを見ていく。
(つづく)
【石橋雅子】









