中国経済は持ち直したのか

中国経済新聞 2026年10月号掲載記事にデータ・マックスで編集を行ったものです。

1~9月期の実質GDP成長率4.6%の内側

中国 イメージ    中国国家統計局が10月19日に発表した2026年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比4.5%増となり、4~6月期の4.3%から伸び率が小幅に上昇した。季節調整済みの前期比でも1.2%増と、前四半期を上回った。景気対策が経済を下支えし、生産活動にも勢いが戻りつつあることを示している。

 ただ、投資や消費に目を向けると、全面的な回復と言い切るにはまだ早い。今回の統計を読み解くカギは、成長を支える分野と、停滞が続く分野の隔たりにある。輸出やAI関連産業が経済を押し上げる一方、不動産不況は深まり、民間企業の投資意欲も弱い。中国経済は底堅さを保っているが、成長の恩恵が企業や家計に広く行き渡るまでには、なお課題が残る。

GDPは4.6%成長 名目成長率にも改善の兆し

 1~9月のGDPは約107兆1,000億元、実質成長率は4.6%だった。政府が掲げる年間4.5~5%の目標の範囲内にあるものの、上半期の4.7%からは低下した。7~9月期の成長率は前四半期を上回ったが、年初からの減速を取り戻すほどの反発には至っていない。また、前年同期の経済活動の水準が低かったことも、伸び率を押し上げる要因となった。回復の兆しを評価しつつ、その勢いがどこまで続くかを見極める必要がある。

 注目されるのは、名目成長率の上昇である。中国の経済メディア「財新」の試算によれば、7~9月期の名目GDPは前年同期比6%増となった。物価変動の影響を除いた実質成長率を上回り、経済全体の価格動向を示すGDPデフレーターもプラスが続いた。価格下落によって企業収益が圧迫されてきた中国にとって、変化の兆しといえる。

 ただし、その主な要因が原油やAI関連産業の価格上昇である点には注意が必要だ。原材料価格が上昇しても、製品価格に転嫁できなければ、企業の利益はむしろ圧迫される。エネルギーや先端分野が活況を呈していても、日用品メーカーや小売店の売上高が同じように伸びるわけではない。今回の物価上昇は、幅広い需要の拡大にともなう値上がりとは性格が異なる。名目GDPの改善が、そのまま家計や中小企業の景況感の改善につながるとは限らない。

製造業投資は2.1%減 先端分野と既存産業で明暗

 製造業では、投資先による違いが鮮明になっている。1~9月の製造業投資は2.1%減だったが、コンピューター・通信・その他電子機器製造業では9.6%増加した。研究開発などの知的財産生産物への投資も9.3%増と堅調だった。先端技術や産業の高度化に成長の機会を見いだす動きが続く一方、食品製造業などでは投資が大きく減少している。新しい産業の成長だけで、既存産業の落ち込みをすぐに補える状況ではない。

 依然として大きな重荷となっているのは、不動産である。1~9月の不動産開発投資は20.6%減と、減少率がさらに拡大した。不動産を除いた固定資産投資も4.2%減だったことから、投資の低迷は住宅市場だけの問題ではない。とはいえ、不動産不況が建材、家具、家電、地方財政などにおよぼす影響は大きく、経済全体の回復を妨げる主要因であり続けている。

 住宅市場の低迷は、家計の行動にも影響する。住宅価格の先行きが不透明であれば、購入を急ぐ理由は乏しい。すでに住宅を所有する世帯も、資産価値への不安が強まれば、大きな買い物に慎重になる。企業も需要の回復を確信できず、設備の増設や新規出店を見送る。住宅販売の不振が消費と投資を冷やし、それが再び景気を下押しする。この悪循環をどう和らげるかが問われている。

民間投資は10.4%減 消費も力強さを欠く

 民間投資の動向は、その難しさを物語っている。1~9月の民間投資は10.4%減、不動産を除いても6.7%減となった。政府が経営権を握る企業に比べて落ち込みが大きく、民間企業が事業拡大に慎重な姿勢を崩していないことがうかがえる。融資条件が改善しても、将来の受注や利益が見通せなければ、企業は借り入れを増やさない。資金を供給すると同時に、企業が将来の収益に対する確信を取り戻せる環境を整える必要がある。

 消費も持ち直してはいるが、力強さには欠ける。9月の小売売上高は前年同月比1.1%増と、8月から伸び率が上昇した。この指標は主に商品の販売や飲食業の売上を集計したもので、家計消費全体を示すわけではない。それでも、伸び率の低さは消費の勢いの弱さをうかがわせる。

 都市部の調査に基づく失業率は9月に5.2%と、比較的安定していた。しかし、消費意欲を左右するのは雇用の有無だけではない。賃金が増えるか、安定して働き続けられるかという見通しも、家計の支出に大きく影響する。

輸出が内需の弱さを補う政策支援の効果はこれから

 輸出の堅調さは、こうした内需の弱さを補っている。製造業の競争力と海外需要が生産を支え、景気の失速を防ぐ役割をはたした。ただし、外需は海外景気や通商政策の影響を受けやすい。原油価格の上昇も、名目成長率を押し上げる一方で、輸入コストの増加を通じて企業や家計の負担となる。外部環境が不安定なほど、国内需要を育てる重要性は高まる。

 政府は政策金融の活用や、地方政府の債務上限までの未使用枠を使った資金調達などを通じて、投資と消費の下支えを強めている。しかし、資金が配分されても、事業の選定や工事の着手を経て、実際の需要が生まれるまでには時間がかかる。

 第4四半期は、発表された支援策の規模に加え、それが企業への発注や雇用、所得の増加にどこまでつながるかが重要になる。採算性の乏しい事業を増やせば、将来の債務負担を重くするため、政策を実行する速さと事業の質の両方が問われる。

統計上の持ち直しを実感できる景気回復へ

 7~9月期の中国経済には、減速に歯止めがかかる兆しが見られた。ただ、回復を持続させるには、先端産業や輸出の成長を、より幅広い企業の収益改善と家計所得の増加につなげる必要がある。

 今後注目すべきなのは、GDP成長率に加え、民間投資が戻るか、住宅市場の悪化が和らぐか、消費が自律的に伸びるかである。こうした変化が重なって初めて、統計上の持ち直しは、人々が実感できる景気回復へと近づいていく。


中国経済新聞を読もう

<連絡先>
(株)アジア通信社
所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9-1-7
TEL:03-5413-7010
FAX:03-5413-0308
E-mail:edit@chinanews.jp
URL:https://chinanews.jp

関連キーワード

関連記事