
建設業の次世代を育む第一歩
北九州市は、市と市内の建設業団体とがこれまで以上に連携しながら、業界の未来に向けた取り組みをともに考え、実践につなげる新たな共創の場として、新たに「北九州市の建設業の未来を創るプラットフォーム『K-MIRAI-BASE』」を設立した。8月末には、始動に際してのキックオフイベントを開催。市内建設業団体15団体の代表者、次世代を担う若手技術者23名、そして北九州市の武内和久市長が一堂に会した。
武内市長は、「建設業従事者の高齢化や技術継承が課題となるなか、中長期的な人材確保に向けて、官民連携で取り組んでいく必要がある」と強調。「バラバラでなく一体となって対策に取り組み、人材の減少を少しでも食い止めたい」との考えを示し、「建設業の次世代を育む第一歩として、今日からスタートしたい」と述べた。
K-MIRAI-BASEの「K」は「Kitakyushu City(北九州市)×Kensetsu(建設)」を、「MIRAI」は次世代へつなぐ明るい未来、「BASE」は官民が連携する創造の拠点をそれぞれ意味する。構成員は、市内の建設業団体15団体(発足時点)で、北九州市技術監理局が事務局を務める。建築や土木、設備、電気、塗装、解体、測量、建設コンサルタント、地質調査まで、業種の枠を越えた幅広い顔ぶれがそろった点が特徴で、互いに連携しながら未来の建設業の担い手確保に努めていく方針だ。
キックオフイベントで発表されたK-MIRAI-BASEのロゴマークは、北九州市の象徴である若戸大橋をモチーフに、橋梁をイメージしたワイヤーを配したデザイン。橋は「つなぐ」ものであることから、建設業と行政、業界と業界、そして建設業で働く人とこれからを目指す人をつなぎたいという意味のほか、建設業が北九州市の未来を引っ張っていく力強さのイメージが込められている。

<K-MIRAI-BASE参加・北九州市内建設業団体15団体(発足時点)>
環境・下水道維持管理協同組合/北九州管更生工事協同組合/北九州建築設計監理協会/北九州港湾建設協会/(一社)北九州市安全施設業協会/(一社)北九州GIS測量協会/(一社)北九州市建設業協会/(一社)北九州市建設コンサルタント協会/北九州市地質調査業協会/北九州設備設計監理協会/(一社)北九州電設協会/北九州塗装協同組合/建築業北九州プラスワンの会/(一社)福岡県解体工事業協会北九州支部/門司建設業組合
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業界の将来への強い危機感
今回設立したK-MIRAI- BASEは、人材確保をはじめとする北九州市の建設業を取り巻く諸課題の解決に向けて、関係団体間のネットワークを強化し、官民連携して取り組みを推進することによって、将来にわたり、地域の安全・安心を支える持続可能な建設業の発展に資することを目的としたものだ。
そもそも建設業は、市民生活や産業活動を支える社会インフラの整備・メンテナンスなどを担うほか、災害時には地域の守り手として重要な役割を果たしている。だが、北九州市内の建設業従事者数は減少傾向にあるうえ、高齢化も進行。建設業が将来にわたってその役割を担い続け、さらに魅力ある産業として発展していくためには、人材確保や生産性向上などの各課題を解決していく必要がある。
そうしたなか、今年に入って中東情勢が悪化し、資材価格の高騰や資材不足への不安が広がったことを受けて、春ごろに武内市長が市内の建設業界団体トップへのヒアリングを集中的に実施。各団体から、将来的な担い手不足の懸念という喫緊の課題が共有された。その流れのなかで、5月には北九州市と(一社)北九州市建設業協会との間で、「建設業の次世代を担う人材確保」や「建設業を取り巻く諸課題に対する相互協力」などを柱とする包括的な連携協定を締結した。さらに、この連携協定の締結を足がかりとして、北九州市技術監理局が各団体を個別に訪ねて今回のプラットフォーム設立の構想を説明。賛同を得られた15団体で、K-MIRAI-BASEの船出となった。
「やはりどの団体も、技術者の高齢化が進む一方で、若手が入ってこないという現状に強い危機感を抱いていますが、その一方で、行き詰まり感も感じています。今回、K-MIRAI-BASEへの参加を通じて、その行き詰まり感を打破していただければ。なお、市内には20以上の建設業団体があり、今回は15団体でのスタートとなりましたが、今後さらに加盟団体が増えていく可能性は十分あります」(北九州市技術監理局)。
中核は若手プロジェクトチーム
K-MIRAI-BASEにおいて中核を担うのが、若手技術者によるプロジェクトチームだ。参画15団体から1名ないし2名ずつが参加し、現在は20~30名規模。各団体からの推薦に加え、市が若手技術者を表彰する「北九州市建設アワード」の受賞者も参加している。「団体によっては若手が少なく、他業種の若手と交流する機会も限られます。参加者には、このチームの会合を異業種交流の場としても使ってもらいながら、より活発な意見交換ができれば」(北九州市技術監理局)と期待を寄せる。
若手プロジェクトチームが担う大きな役割が、高校生や小中学生に向けた建設業界の魅力発信だ。職業をまだ具体的に考えていない小中学生の世代に、早い段階から建設業の魅力を伝え、建設業のことを知ってもらい、大人になったときに進路の選択肢の1つとして思い出してもらうことを狙っていくという。魅力発信の具体的な方法についてはまだ検討段階だが、小中学校の改修工事に合わせた現場見学会の開催や、パンフレットの配布、保護者や一般市民に向けたPR動画の制作、SNSでの情報発信、体験型イベントの開催などを考えているという。また、毎年12月に西日本総合展示場で開かれる中高生向けの職業体験イベント「北九州ゆめみらいワーク」でも、今後はK-MIRAI-BASEとしてのブース出展を考えているという。
なお、10月14日に行われた若手プロジェクトチームの会合では、とくに「小中学生への魅力発信」というテーマでの意見交換を実施。BIMを使った3D体験や現場体験、身近なグッズの提供など、さまざまな意見が飛び交ったという。今後はそうした意見も踏まえながら、具体的な方向性や活動へと落とし込んでいく方針だ。
今回、市内の建設業関連の15団体が一堂に会したこと自体が、大きな一歩だと思っています。これまでの建設業は、業種を越えて連携しにくい面がありましたが、その枠を越えて建設業の未来のために一緒に取り組むプラットフォームができた意味は、とても大きなものです。建設業の魅力発信と一口にいっても難しいですが、私の所属する北九州市建設業協会でもこれまで、協会主催で現場見学会などを行ってきました。ただし、いくら魅力を伝えていっても、すぐに採用につながるわけではありませんし、効果を測るのは難しい。それでも、知ってもらわなければ、将来の選択肢にも入りません。
私自身、北九州で育ち、このまちが好きですし、笑顔が増えるまちづくりに貢献していきたい。1社では大きな輪になりませんが、15団体と行政が連携した今回の枠組みなら、業界が1つになって動ける。プロジェクトチームの活動を通じて、1つでも成果をかたちにしていければと思っています。
(一社)北九州市建設業協会 所属
(有)ゼムケンサービス 取締役 籠田粋 氏
ゼネコンの仕事はよく「地図に残る仕事」と言われますが、我々のような建設コンサルタントも同じで、まちづくりの最前線に関われることに、やりがいを感じています。近年は現場でICTを使い、測量ならドローンを飛ばし、設計では三次元の図面を描くなど、建設業での働き方も少しずつスマートになってきました。まだまだ3Kのイメージが根強い業界ですが、働き方改革も進んでいますし、そうしたスマートな面も知ってもらえれば、若い人にも魅力的に映るはずです。
私自身、以前に業界団体の九州支部の取り組みで、若者向けの魅力発信に携わった経験がありますので、そのときの経験も生かしながら、SNS発信や現場見学会といった提案もしていきたいと思います。将来、北九州市で育った子どもたちが進路を選ぶ際に、建設業が選択肢の1つとして思い浮かぶ、そうした状況をつくっていけたら嬉しいです。
(一社)北九州市建設コンサルタント協会 所属
(株)福山コンサルタント
インフラマネジメント事業部
建設・保全 北九州第2グループ
課長補佐 小野提紀 氏
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北九州市では今年7月、次世代まちづくり・投資に向けた戦略「北九州2043」のたたき台を公表した。小倉と黒崎を中心として都市構造を変革しながら、北九州市が市制施行80周年を迎える2043年までに、民間を中心とした約1兆円の投資を目指していく構想だ。だが、そうした都市構造の変革にともなうインフラ整備や新たな建物の建設も、実際に担っていくのは建設業だ。
建設業における担い手不足は、もはや1つの企業や1つの業界団体だけで解決できる問題ではない。だからこそ、北九州市では業界の垣根を越え、業界団体と若手と行政が同じテーブルにつき、膝を突き合わせながら課題解決に向けて真剣に取り組もうとしている。K-MIRAI-BASEの取り組みはまだ始まったばかりだが、小中学生に魅力を届け、若手同士がつながり、官民が知恵を出し合うこの場が、北九州市の建設業、ひいては地域の未来を支える土台になっていくことに期待したい。
【坂田憲治】

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