2024年11月22日( 金 )

グローバル展開へ動き出したWebコンサルティング会社(中)

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(株)ペンシル 代表取締役社長 覚田 義明 氏

 独自の研究で蓄積してきたノウハウをもとにWebサイトを分析し、クライアントの売上や成約アップにつなげていく研究開発型Webコンサルティングを手がける(株)ペンシル。ホームページでは、大手企業の通販サイトの売上拡大をはじめ、これまでに達成した数々の成功事例が記載されている。近年は海外支店の設立など、Webコンサルを武器に世界を舞台にした事業展開に乗り出した同社の代表取締役社長を務める覚田義明氏に、創業からこれまで、そしてIT業界で、トップで居続けるための要因を聞いた。

(聞き手:弊社リサーチ事業部副部長・鹿島 譲二)

トップを維持するWebコンサルとは

 ――IT業界は日進月歩の世界ですよね。Webコンサルを20年以上手がけ、そのなかでトップに居続けるための要因とはなんでしょう。

 覚田 まず1つは、「地道で、クライアント成果主義」ということが言えるのかなと思います。私が独立したのは1995年、業界では後発の方でした。そのなかで派手なことを目指さずに、地道にコツコツ、ただただクライアントの成功のためにやってきました。それに向けてとにかく研究と実験を積み重ねる。それも、クライアントが「欲しい」と思う前からすることが重要で、たとえばホームページをつくるためにはサイトの分析が必要になる、ということで、97年には初めてのサイト分析ツールを開発していました。この姿勢は今もなお続いています。
 そして、クライアントの利益を最優先に考えてきたこと。たとえば創業からこれまでに、バブル崩壊、9・11、リーマン・ショック、東日本大震災など、社会的影響の大きい出来事が数々ありました。経済が停滞するなかで、各企業は利益確保のために経費削減に向かう。通常であればホームページ製作はその対象となりかねないところです。ところが、私たちが提供してきたサイトづくりは、その企業の売上を上げる基盤となるものを目指したものです。「常にクライアントの利益を考える」ことをしてきた、そうすることでクライアントになくてはならないサービスを提供してくることができた、それで今があるのだと思います。

 ――その風土は会社に浸透していますか。

pcl 覚田 もはや当たり前のこととなっていると思います。とくにクライアントの利益を最優先に、は至上命令ですね。
 他にも、私たちが開発、蓄積してきたノウハウを同業者にも公開してきました。今やWebコンサルはポピュラーな仕事になり、97年から今までペンシルがWebコンサルをやってきたそのノウハウを、セミナーや動画、資料などで伝えてきています。一見すると損するようですが、そうすることで業界自体のマーケットが広がる。これはふくやさんに習ったものです。明太子をつくり始められたとき、作り方をいろんな人に教えていって、今では福岡の特産品にまでなった。私はこのやり方を「明太子マーケティング」と呼んでいます。

 ――IT業界というと、1人の天才のひらめきで引っ張っていくイメージもありますが、そういう業界でも会社でもない?

 覚田 たしかにアイディアはそういうこともあるかもしれません。しかし、ホームページの構造が非常に複雑化して、1人では無理なんですよ。プロデューサーやディレクター、デザイナー、プログラマー、エンジニア、サーバー管理者、アナリスト等々、たくさんのスタッフが関与します。
 ペンシルではWebコンサルを行ううえで、成功哲学とノウハウを凝縮した「成功シート8.0」というものを使っています。14ステップ中に92ジャンル、さらにそのなかに525項目あります。

 ――Web戦略を立てるうえで、考えなくてはならないことがそれだけあると。

 覚田 そうです。たとえば、通販サイトで売上を2倍にしようと考えたらデザイン会社、システム会社、広告会社、ステップメールを手がける会社など、それぞれと話をしなくてはなりません。これらの項目すべてを見渡して、どこが一番悪いのか、何から改善していけばいいか見極める人がいない。それを手がけるコーディネーター、アドバイザー、それがペンシルです。これらすべてを手がけているのは、日本でもペンシルだけではないでしょうか。

 ――今、実店舗がネット販売に押されている状況ですが、買い物は今後ネットに置き換わりますか。

 覚田 どちらも大事だと思います。実店舗の、手にとれるという強みは変わらないでしょう。私はイスとかソファーが好きなんですが、結局のところ座ってみないとわかりません。手触り、肌触り、そういった要素が重要視されるものは、実店舗の強みがありますよね。
 一方で、ハンドタオルをネット販売している企業が様々なハンドタオルから他社製のものまで5枚を1セットにしてサンプルで送る。「10回洗った後の手触りを試してください」とすると、実店舗でできない体験もできる。店舗にかけていた家賃や人件費よりも、小さいタオルを5枚セットにして送ったほうが効率が良いかもしれない、むしろ店舗以上のことができる可能性もあると思いますし、両方必要だと思っています。

 ――経営者のなかには、ネットを難しいと敬遠する人もいます。しかし無視するわけにはいかなくなってきたなかで、経営者自身がネットのことを学ぶべきなのか、専任者を置くべきなのか。

 覚田 よくある失敗は、社内にいるインターネットに詳しい人に任せてしまう、ということです。本当にただインターネットに詳しいだけで、商品など勉強しながらホームページを製作したとします。すると最先端の技術が盛り込まれ、オシャレなんですが、売れないホームページができ上がる。
 トップ営業マンが、苦労してネットのことを勉強してホームページの作成を指示して、つくった方が売れる。というのは、どちらも新しいことを勉強しなくてはならないんですが、営業マンはお客さまへのおもてなしを知っています。何を提供すべきか、どういう声に耳を傾けなければいけないか、要望によってどういうサービス、商品を提供するかを知っている。
 私たちペンシルはインターネット技術集団だけでなく、ホームページで成果を出す会社ですので、クライアントの会社の技術者の方だけでなく、営業マンの方、社長にもヒアリングを行います。つくり方の考え方がまったく違うんです。

 ――デザインが良いから売上が上がる、とはならない。

 覚田 何が良いデザインなのか、ということです。日本では「デザイン」というとレイアウトの意味合いが強いですが、本来は、相手に対してどれだけ気持ちの良いものをつくるか、ということです。「かっこいい」だけでユーザーのことが考えられていないことが、ままあります。
 相手に合わせた、最適な見やすさ、読みやすさ、わかりやすさを追求していき、売れたり、問い合わせが増えたりというような成果が出るホームページをデザインしなくてはなりませんよね。

(つづく)
【文・構成:吉井 陸人】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:覚田 義明
所在地:福岡市中央区天神1-3-38
設 立:1995年2月
資本金:5,200万円
TEL:092-515-1000
URL:http://www.pencil.co.jp/

<プロフィール>
kakuda_pr覚田 義明(かくだ・よしあき)
1995年に研究開発型Webコンサルティング会社『ペンシル』を設立。分析を強みとしライオン、カゴメ、江崎グリコ、リンナイ、全日本空輸、日本ベリサイン、など多くの企業のWeb戦略を成功に導く。2014年、サンフランシスコオフィス、15年に台湾オフィスを設立。14年にシリコンバレーに米国独立法人Pencil Inc.(ペンシルインク)を設立。

 
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